2020-10-07

特別編 1939年 欧亜大陸鉄道の旅(エストニア編 Day 11, 12, 13/モスクワ - レニングラード - タリン)

 第二次世界大戦前夜の世界の時刻表を使って、当時の東京からロンドンまでの国際連絡運輸の旅を辿る仮想旅行。
 番外編として東京からロンドンまでのルートの内、途中で列車を乗り換えることでたどり着くことができる枝葉旅行を紹介している。
 今回はモスクワからバルト三国・エストニアの首都、タリンへ向かう。

 バルト海に東海岸に面したバルト三国は北から順にエストニア、ラトビア、リトアニアと並んでいる。
エストニアは3カ国の中では面積も人口も最小で、大体北海道の半分ぐらいの大きさの小国。首都・タリンはフィンランド湾に面していて、対岸はフィンランドの首都・ヘルシンキである。
 1940年にソ連に占領されソ連邦内の1国家となるのだが、1939年時点では独立を保っており、鉄道路線もエストニア国鉄が運営していた。
 とは言えソ連の影響は強く、線路の大半はソ連へと繋がっており、軌間もソ連と同じ1520ミリを採用し直通列車も多数運行されていた。  

エストニア国鉄路線図 乗車ルートを赤色で着色
赤い細線はバスのルート

ソ連第2の都市・レニングラード

#7 モスクワ レニングラーツキー - レニングラード モスコーフスキー
dep: arr: 急行 26列車 レニングラード モスコーフスキー 行き

モスクワからレニングラードの時刻表(1938年 日本語版は1939年)

 シベリア鉄道の終点、モスクワ・ヤロスラフスキーで列車を降り立ったところ(#9 Day 9, 10, 11/ノヴォシビルスク - モスクワ ヤロスラフスキー)から旅を始めよう。タリンへ向かうには、ヤロスラフスキー駅の隣にあるレニングラーツキー駅へ移動する必要がある。そこから、まずはソ連第2の都市・レニングラードへ向かい、そこでエストニアに直通する列車に乗り換える。
 時刻表は東京-ロンドン間の旅でも確認した1938年のソ連の時刻表と、後年なぜか満州調査部が作成した1939年時点の時刻表を並べている。(時刻は1939年時点の時刻を採用)
 レニングラードはもともとはサンクトペテルブルクと呼ばれていた街で、ソ連時代はレーニンをたたえる意味でレニングラードと呼ばれていた。現在はサンクトペテルブルクに戻されているのだが、モスクワからサンクトペテルブルクに向かうターミナルは現在でもレニングラーツキー駅のままである。
 レニングラーツキー駅は1851年開業の歴史ある駅舎で、1939年当時でも築90年近くの歴史があり、既にかなりの風格を携えていたのではないだろうか。
 モスクワ-レニングラード間の路線は今も昔もソ連の大幹線で、当時から多数の優等列車が行き来していた。

 1939年8月13日午後1時半、1週間に及んだシベリア鉄道の旅を終え、ようやくモスクワに到着した。レニングラード行きの列車の出発時刻は19時15分。午後はモスクワで時間を潰して、夕方発の急行夜行の26列車でレニングラードへ向かう。
 レニングラード到着は翌朝の早朝。レニングラードで乗り換える次の列車は、そのまま国境を越えエストニアの首都・タリンまで直通するのだが、列車の出発時刻はやはり夕方。半日ほどソ連の古都・レニングラードに滞在することになる。

 急行 26列車の通過時刻表は、欧亜大陸鉄道の時刻表のページでも確認可能です。

#8 レニングラード バルチースキー - タリン バルト
dep: arr: 87/14列車 タリン バルト 行き

レニングラードからキンギセップの時刻表(1938年 日本語版は1939年)

 モスクワから到着した列車はモスコーフスキー駅に到着するが、タリンに向かう列車が発着する駅はそこから5キロほど南西にあるバルチースキー駅。どちらも1850年代に開業した古い駅である。
 レニングラードに地下鉄が開業するのは1955年、この時代はまだ路面電車で駅間を移動していたはずである。
 バルチースキー駅からタリン行きの列車が出発するのは、夕方17時42分。この列車もまた翌朝早朝まで走り続ける寝台列車である。

 タリン行きの87列車は、サンクトペテルブルクを出発してしばらく南に進んだ後、郊外に出てからはタリンに向けてひたすら西に走り続ける。
 出発から3時間、21時ちょうどにソ連最後の駅・キンギセップに到着する。ここで20分ほど停車し出国手続きを行ってからエストニアに入国する。
 エストニアとソ連は時差が1時間あり、エストニア最初の駅ナルバに到着するのもまた21時ちょうどである。ここで30分ほど停車し今度は入国手続きを行なう。
 21時半、列車番号は変わって14列車となり、いよいよエストニア国鉄の線路を走り始める。

 急行 87列車の通過時刻表は、欧亜大陸鉄道の時刻表のページでも確認可能です。

バルト三国 エストニアへ

1940年エストニアの時刻表
AMETLIK REISIJUHT SUVEL 1940
この年、エストニアはソ連の占領下に入る

ナルバからタリンの時刻表
下から上へ進む

 エストニアに入ったので、エストニアの時刻表を見てみよう。
 エストニアの時刻表はコミックサイズでページ数は100ページ余り。比較的字が大きな時刻表なので載っている列車の本数はあまり多くはない。しかもよく見たら後半はバスの時刻である。
 巻頭に織り込みの路線図を見ていると、北にあるタリンから放射状に延びる路線の大半は国内で完結せず、ソ連、それから南の隣国ラトビアへと伸びている。見方を変えればソ連の鉄道網の末端のようにも見える。
 21時半に国境の駅のナルバから出発した列車は相変わらず西へ西へと走り続ける。
 夜通し入り続けて最終目的地・タリン バルト駅に到着するのは朝6時半である。

 バルト海に臨むエストニアの首都・タリンに到着した。タリン・バルト駅という名がついているので、他にもターミナルがあるのかといえばそうではなく、バルト駅がタリンの唯一無二のターミナルのようだ。
 港に向かって線路の終端がある頭端型のホームのある典型的なターミナルで、ここからエストニア各地、あるいは国境を越える国際列車が発着している。
 この駅は1870年の開業で、ホームの先に立派な駅舎が建てられていた。この駅舎は現存していない。現在の駅舎は、ソ連占領下の1967年に新しい駅舎に建て替えられもので、社会主義時代の建物らしく無機質でシンプルな外観になっている。
 どうやらこのソ連流の駅舎、現地の人にとっては相当不本意なのか、タリン駅の公式ホームページの駅の歴史には、少しネガティブな表現で紹介されている。
"As a result of the reconstruction work, nothing in the exterior of the new building reminded of the previous structure – it now had bigger windows, a flat roof and no decorative elements." (建て替え工事の結果、新しい建物の外観には、以前の構造を思い出させるものは何もありませんでした 大きな窓、平らな屋根、装飾的な要素はありませんでした。)
 この文章からエストニア人のソ連に対する複雑な思いが読み取れるような気もする。

1939年 欧亜大陸鉄道の旅 エストニア編 まとめ
#乗車下車列車記事
18/3 15:00(GMT+9) 東京8/4 9:25(GMT+9)下関特別急行ふじ 下関行き#2
28/4 10:30(GMT+9)下関8/4 18:00(GMT+9)釜山関釜連絡船#3
38/4 19:00(GMT+9)釜山8/5 21:45(GMT+9)新京急行 ひかり 新京 行き#4 #5
48/5 22:35(GMT+9)新京8/6 6:20(GMT+9)ハルビン603列車 三果樹 行き#6
58/6 10:30(GMT+9)ハルビン8/7 10:55(GMT+9)満州里701列車 満州里 行き#6
68/7 14:34 (GMT+9)満州里8/13 13:30(GMT+3)モスクワ ヤロスラフスキー1列車 ストルブツィ 行き#7 #8 #9
78/13 19:15(GMT+3)モスクワ レニングラーツキー8/14 6:55(GMT+3)レニングラード モスコーフスキー急行 26列車 レニングラード モスコーフスキー 行き
88/14 17:42(GMT+3)レニングラード バルチースキー8/15 6:30(GMT+2)タリン バルト87/14列車 タリン バルト 行き
総乗車距離:11,753km
総乗車本数:8本
所要時間:11日22時間30分
参考文献
  • РАСПИСАНИЕ ПАССАЖИРСКИХ ПОЕЗДОВ ЖЕЛЕЗНОДОРОЖНОЙ СЕТИ СССР НА ЛЕТНИИ И 3ИМНИИ ПЕРИОДЫ 1938/39 г. (1938年) ТРАНСЖЕЛДОРИЗДАТ
  • ソ連研究資料第57号 ソ連邦鉄道旅客列車時間表 (1941年) 南満州鉄道 調査部
  • AMETLIK REISIJUHT SUVEL 1940 Kehtiv 15. maist 1940. (2040年) RAUDTEEDE TALITUSE VÄLJAANNE
  • COOKS CONTINENTAL TIMETABLE AUGUST 1939 (1939年) Thomas Cook / 復刻版 (1987年) J H Price
  • エストニア国鉄サイト
  • タリン駅サイト

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