今回の旅は、関東界隈のローカル線を巡る旅。
関東は広いので、端の方にはそれなりにローカル線が点在している。そいつらを片っ端から片付けていく。
手始めに、千葉方面から。
松戸・馬橋駅
まず、先鋒は、千葉の北の方をひっそりと走る流鉄から。「流鉄」って略称っぽいが、どうやら正式な鉄道事業者名らしい。(2008年までは、総武流山電鉄だったのだが、社名変更したそうな)
かなりマイナーな存在で、地元民以外の知名度は皆無。なんたって、路線の総延長は6キロ弱で、沿線にこれといった観光施設はなく、大企業の傘下でもなければ、副業として著名な事業があるわけでもないんだから、そりゃ、乗る人以外、その名はほとんどその名を知る由もない。しかも、第3セクター事業者でもなく、れっきとした民間鉄道会社っていうだから、なかなかレアな存在である。
この全くもって謎の路線は、常磐線の馬橋という、これまた地味な駅から北に線路が伸びていて、流山という駅が終点となっている。この流山駅、地図で見る限り流山市(これまた、聞いたことのない自治体ですな)の市役所がある以外は、特に何もなさそうに見える。
早朝、馬橋駅にたどり着いて、乗り換え案内に添って跨線橋を渡って階段を降りると、そこはもう流鉄のホーム。NewDaysよりも遥かに小さな駅舎、というか切符売り場もホームの上に建っている。
当然のごとく、ICカードは使えないので、切符を購入してホームへ。
待っていたのは、意外と新し目のオレンジ色の2両編成の電車。”流星”というヘッドマークが付いている。これは、ランニングマンの振り付けをしながら乗り込まないと行けないのかもしれないが、ホームに誰も居ないことをいいことに、こっそり普通に歩いて車両に乗り込む。
まあ、中身は、ロングシートの至って普通の都市型通勤車両。西武鉄道のお下がりらしいので、当然といえば、当然。
で、出発すると、わずか10分ほどで、終点・流山駅に着いてしまう。
流山・流山駅
ここで、緊急事態発生。
この日、春一番が吹き、大荒れの天気となったのだが、流山に付く前あたりから大雨となった。天気予報では、風は強いものの雨は降らないはずだったのだが、見事にだまし討ちに会ってしまう。で、強風の影響で、これから向かう房総方面の電車が、あちこちで止まり始めたらしい。
今日乗る予定の小湊鐵道は2時間周期のダイヤなので、万が一乗り遅れたら、今日の予定は全て崩壊してしまう。ということで、本当は、流山駅の周りを少し探索でもしようと思っていたのだが、駅舎も撮影せず、さっさと折り返すことにする。
往復わずが、30分ほどしか旅だったのだが、車窓を見ていて思ったことがある。この鉄道のユニークなところは、無名なローカル鉄道なのにどうしようもない過疎地域を走っているわけでもなく、そこそこの住宅地を走っているということ。
「そこそこ」というのがポイントで、「そこそこ」故に、廃線となることもなく、大手鉄道会社に成長することもなく、今なお地味に走り続けいていると思われる。
というか、流鉄さん、雑な紹介でスマヌ。
船橋・西船橋駅
内房線で、次の小湊鐡道の始発駅五井に向かおうとしているのだが、西船橋駅あたりで、いよいよ低気圧が台風並みに発達してきたらしく、台風並みの豪雨になってきた。
果たしてたどり着けるんじゃろうか...。
西船橋の暴風雨、そして犬吠埼の荒波
(小湊鐵道 小湊鐵道線 39.1km) (左) 房総横断鉄道トコトコきっぷ と スタンプ・ラリーの台紙
(右) 運転席と前方の車窓 (上) 上総中野駅で並ぶ両鉄道の車両
(左下) 小湊鐡道の終点 (右下) いすみ鉄道の終点 いすみ鉄道の旧国鉄車両
大糸線を走行していたときの料金表がそのまま残されている
市原・五井駅
なんとか無事、ほぼ予定通りに小湊鐵道への乗換駅・五井駅に到着。
五井駅ではJRの改札内で小湊鐵道につながっていて、跨線橋の上に簡易Suica改札があり、その奥に過激派のアジトのような小屋が建てられている。どうも、その小屋が小湊鐵道の窓口のようである。
切符を買おうとしたら、小湊鐵道とそこから接続するいすみ鉄道を通して乗ることのできる”房総横断鉄道トコトコきっぷ”という期間限定の企画切符が販売されており、このあといすみ鉄道に乗る予定だったので、「渡りに船」とさっそく購入する。小湊鐵道といすみ鉄道を通して乗ると、通常の運賃は2,130円。ところが、このトコトコきっぷなら1,700円。しかも、途中下車ができ、さらに沿線のいくつかの商店で使える680円分のクーポン券までついている。かなりのお得感!
ホームに降りると、雨は止んできたものの、依然として強風が吹き荒れている。風でトコトコきっぷが飛ばされかけたが、なんとか踏みとどまって列車にたどり着いた。
待っていたのは、なかなか味のある、というかぶっちゃけ、ボロい2両編成のディーゼル車。これぞ「ローカル線」である。しかも、ワンマン運転ではなく、車掌が乗り込んで改札を行うという、古式ゆかしい伝統が未だ維持されている。
なんだか出発が待ち遠しくなってきた。
が、出発して驚いた。むちゃくちゃ揺れるのだ。船酔いしかねないほど揺れる。
車両のせいなのか、路盤のせいなのか、はたまた吹きすさぶ暴風のせいなのかは定かではないが、鉄道がこんなに揺れるのは記憶にない。世界の車窓からで時々見ることのできるインドだか東南アジアの鉄道だかは、こんな感じで揺れていたが、まさか日本でこんなに揺れる鉄道があるとは驚きである。
なんならもうちょっと揺らせば、ファストパスが発券できるぐらいの立派なアトラクションになるのではないかと思ったが、毎日これで通勤する人にはたまったもんじゃない。まあ、これもローカル線の味ですわね。
そう言えば、トコトコきっぷと一緒に小湊鐡道といすみ鉄道でスタンプを押してもらうと商品が当たるというスタンプ・ラリーの台紙をもらったのだが、結局、いすみ鉄道でスタンプをもらい忘れて応募できず...。痛恨の極み。
市原・上総牛久駅
途中の上総牛久駅に停車すると、運転手は駅員から”スタフ”を受け取る。
スタフとはなんじゃい、という話だが、通常、我々がよく乗る電車では、線路の脇に信号が建てられていて、運転手は信号を見ながら電車を走行させ、追突や正面衝突を防いでいる。
では、信号機のような電子制御ができなかった昔はどうしていたかというと、スタフという”札”の受け渡しをすることで、信号代わりにしていた。これは、線路をいくつかの区間に区切って、それぞれの区間に札を配布する。その札を持っている列車だけが、該当する線路に入ることができるというルールを作れば、その区間のなかに列車は1編成しかいないので、絶対に衝突はしないというプリミティブな仕組みである。
で、その仕組み、過去の遺物かと思えば、そうではなく、ここ小湊鐵道のようないくつかのローカル線では、未だにスタフを受け渡しながら、列車を走らせている。
小湊鐵道の上総牛久よりの先の区間、運行本数は1~2時間に1本。単線とはいえ、線路を走っている列車は常に1本しかないので、この方式で十分ということなのである。
大多喜・上総中野駅
終点・上総中野駅に到着。
内房から延びる小湊鐵道と外房から延びるいすみ鉄道がぶつかる上総中野駅でどちらの鉄道も終点となる。線路はすぐ隣に並行して並んでいるのだが、直通列車はない。
数少ない乗客は、それぞれ相手の列車に乗り換えることになる。
どこからが駅の構内で、どこからが外かわからないような駅なので、駅というよりは車庫にでもいるような感じである。
線路の上を通って、いすみ鉄道のホームに移動し、待ち受けていたいすみ鉄道の車両に乗り換える。
車両は、いすみ鉄道が導入した国鉄時代の気動車。いすみ鉄道に来る前は大糸線を走っていたそうで、車内には大糸線の運賃表がそのまま残されている。昭和の雰囲気を演出するということで、吊り広告も昭和のものがつるされていて、SONYのトリニトロン(!)の広告がぶら下がっていた。
2両編成で、先頭の車両はイベント時はレストラン車両になるそうだ。(食堂車って言ってくれよ!)
大多喜・大多喜駅
小湊鐵道の喧騒が嘘のように、いすみ鉄道はほとんど揺れない。というか、普通。
いすみ鉄道はもともとは国鉄の路線なので、きっと国家予算をふんだんに使った贅沢な路盤になっているのだろう。
おいらが乗った列車は、途中の大多喜止まりで、そこから終点大原までは別の列車に乗り換える必要がある。
まあ、ちょうど昼飯時なので、ここで昼食をとって、次の列車で終点を目指すことにする。
”房総横断鉄道トコトコきっぷ”には、680円分のクーポンがついているのだが、大多喜駅周辺でもいくつかの使えるお店がある。
その中から駅前にある番所さんを訪れた。
ここの名物は、”十六丼”。十六種類の具が乗っているのかと思いきや、それは早合点。正体は猪肉の丼で、シシ16(4×4=16)から名付けたそうだ。(座布団1枚!)
猪というのは、当然野生で、その辺りで生け捕りした猪を調理している(!)とのこと。
野生の肉というと臭みがあるイメージがあるのだが(と、よく言うが、実際のところ野生の肉を食べるほどワイルドな暮らしはしていないので、よくわからない)、ここの猪は銃殺せずに生け捕りし、しっかり血抜きをしているから臭くないのだそうな。
生け捕りってどうやって捕まえるのかと聞いてみたら、罠を仕掛けて、ひっかるのを待つのだと教えてくれた。なかなか興味深い。
ここまで来て、後に引き下がるわけにはいかないので、意を決して十六丼を注文。
出てきたのは、ナムルに温泉卵、キムチ、味噌汁がついた、豪華な豚丼御膳。はじめはそのまま、次に温玉を混ぜてすき焼き風、最後はキムチとナムルを混ぜてビビンバ風と、ひつまぶし形式で食べるのがここの流儀らしいので、流儀に従って食べてみる。
さっそく猪肉をつまんでみるが、確かに臭くはない。というか、旨い。言われなければ、おいしい豚肉だと思ってしまう。
んん?? あれ、そんなら、普通に豚肉を食べればよいのではないかという、よからぬ浅知恵が浮かんできてしまうので、その思いを断ち切るように一心不乱に猪肉を食する。
そもそも、ブタというのは、イノシシを家畜化した生き物で生物学的には、ブタとイノシシは同じ生き物。その証拠というわけではないが、中国語ではブタのことを猪と書く(イノシシは野猪)。であれば、別にあえて猪を食べなくても豚でよく....。イカン、イカン! しっかりしろ、おいら!
いや、おいしかったです。ご馳走様でした。
大多喜・大多喜駅
そして、猪肉を堪能したところで、大多喜駅に戻るとまたしても雨。気温は春というか、初夏の暖かさなのだが、なかなか厳しい天候。
で、次は、国鉄製ではない純粋ないすみ鉄道の黄色い車両に乗る。前の車両とは打って変わって、近代的なきれいなワンマン列車。いすみ鉄道はムーミンを押しているらしく、運転席から小さなムーミンのぬいぐるみが顔を覗かせている。
乗客はおいらだけで、貸切状態で大多喜駅を出発! と思った瞬間、まさかの急ブレーキで、列車が停車する。
猪でも現れたのかと思ったが、線路に走りこんできたのはおばちゃん。線路の前に立ちはだかり、列車を止めたかと思うと、何事もなかったかのように車内に乗り込んできた。
ハリウッド映画のような大スタントを繰り広げつつ、列車は大原駅へと出発する。
新しい列車ということもあり、車内は実に静か。まあ、味気ないといえば、味気ない。
思ったのだが、なんで、いすみ鉄道と小湊鐵道は相互乗り入れを実施しないかというと、いすみ鉄道側が、あんなにぼろい線路を走らせて、車両を痛めたくない、あるいは、あんなボロい車両をうちの線路に入れたくないと思ってるのではないだろうか?
おいらとしては、正直な所、古い国鉄車両よりは、オンボロの小湊鐵道の方がテンションが上がったので、もし、いすみ鉄道さんがそう考えているのであれば、考え直していただきたいものである。
いすみ・大原駅
30分ほどで、終点の大原駅に到着。
接続するJRの外房線のダイヤが依然大幅に乱れているので、とりあえず、来た電車に乗って先を急ぐ。
銚子・銚子駅
外房線、東金線、総武本線と3本の電車に乗り継いで、銚子に到着。銚子から犬吠埼の先端に向かって伸びる銚子鉄道に乗車する。
銚子鉄道のホームは、JRのホームの先端を切り欠いた部分にひっそりとある。Suicaの簡易改札機の向こう側に、待合室があり、その向こうは銚子鉄道のホーム。切符売り場すらない。
切符は、車内で車掌さんから買うことになる。
勝手がわからないので、電車に乗り込んで挙動不審者を装っていたら、女性の車掌さんが声をかけてくれた。親切な車掌さんから終点・外川駅までの往復きっぷを購入する。
小さな2両編成の電車に、乗客は数十人。小湊、いすみ両線と比べたら、かなり活気がある。
しかし小湊鐡道と同じところもあって、それは、閉塞方式。途中からスタフ閉塞になるので、運転手が駅員からスタフを受け取る様子を、ここでも見ることができる。
銚子・外川駅
終点の外川までは20分。殆どの乗客は、その1駅前の犬吠埼の最寄り駅、犬吠で下車するので、最後まで乗っていた乗客は、数名となった。
犬吠埼はつい最近国道51号線 水戸-千葉124kmで尋ねたばかりなので、どこか他の場所はないかと地図を眺めていたら、犬吠埼の南側にもう一つ突きでた長崎鼻という岬があった。
行ってみたらなにかあるかもしれないと思い、10分ほど歩いて行ってみた。
うん。何もない。ただ、陸が突き出ているだけ。
それにしても、嵐の後だけあって、海が荒れている。気温は春なのに、海は真冬という、不思議なコントラストである。
ところで、このあたり、やたらと猫が多かった。新鮮な魚でも貰えるのか、たくさんうろちょろしている。中には、まっ昼間だってのに、道の真中でXXXする猫まで...。(邪魔してスマヌ!)
八千代・東葉勝田台駅
さて、千葉の私鉄というくくりで、ローカルではないのだがもう一つおまけの鉄道に乗っておく。
東京メトロ東西線が乗り入れている東葉高速鉄道である。まあ、東西線が乗り入れているというよりは、東西線の延長戦みたいなものだから地下鉄そのもの。特に目新しいものはなにもないし、これといった感想もない。
東葉高速鉄道だが、路線の存在はマイナーではあるものの、たまに新聞等でその名前を見かけることがある。全国の第3セクター(鉄道以外も含めたすべての第3セクター企業)の中で、ダントツの一位の負債額を抱えているため、その手のランキングで必ず名前が載るのである。
そこそこの住宅地を走る鉄道なので儲かってないわけではないが、建設費がかかりすぎて開業以来、殆ど借入金を返せていない。
乗ってみて思ったのだが、東西線の10両の長大編成ってのは、千葉の末端部分ではかなりの過剰設備。結果として、昼間は1時間に4本という流鉄並の本数しか走らない電車になってしまっている。
利用客にとっては東西線に直通しているってのは大きなメリットなんだろうけど、乗り入れを諦めてもう少し小型の鉄道にしておけば、運行本数が増えて利便性もあがり、借金も減らせていたのえではないだろうか?
船橋・西船橋駅
勝田台から20分で西船橋に到着。電車はそのまま東西線に乗り入れていくが、東葉高速鉄道はここで終点。
昼間にここを訪れた時とは違い、嵐のない西船橋は実に平和。
千葉は私鉄・公営鉄道王国で、今回乗った5社以外にも、京成、新京成、北総鉄道の京成三兄弟や、関東非鉄輪鉄道十二番勝負で乗った山万、ディズニーリゾートライン、千葉都市モノレール、国道51号線 水戸-千葉124kmで乗った日本一短い鉄道鉄道・芝山鉄道(と、東京メトロの端っこ)がある。
今回の旅で、当ブログで紹介していないのは、京成三兄弟だけとなったわけだ。これにもまたいつか乗ってみたいね。
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