2021-10-22

信楽高原鐡道・伊賀鉄道 自転車連絡大作戦

信楽高原鐡道・伊賀鉄道 自転車連絡大作戦 2021/10/3

 「信楽たぬき」で有名な信楽高原を走る信楽高原鐡道。とっても景色の良い風光明媚な鉄道だが盲腸線であるのが難点。盲腸線だと行ったら行き止まりで、そのまま戻ってくるしかないので乗り潰し的にはちょっくら効率が悪いのだ。
 ところが地図をよーく眺めていると、信楽線の終点・信楽駅から山を一つ越えると関西本線の伊賀上野駅がある。そこからは伊賀鉄道の線路が伸びている。信楽駅から伊賀上野駅までの距離は20キロほど。それならば久々の自転車連絡大作戦を敢行すべく、燐光袋に自転車を詰め込んで信楽高原へと向かった。

信楽高原鐡道

信楽高原鐵道 信楽線 貴生川駅を出発すると山へ向かって突き進み、あとは延々と登っていく
甲賀・貴生川駅

 滋賀県甲賀市の貴生川駅から信楽駅を結ぶ信楽高原鐵道。国鉄改革時に廃止された特定地方交通線を引き継いだ第三セクター鉄道である。起点の貴生川駅はJR西日本と近江鉄道が乗り入れるそれなりに賑やかな駅だが、15キロほど先の終点・信楽駅は線路の果てであり、どこにも繋がっていない。いわゆる盲腸線だ。盲腸線「あるある」なのだが、戦前には信楽駅から先も京都方面に線路を延ばす計画があり、最終的には加茂駅と繋がる計画だったらしい。戦前の鉄道熱はすごいわ。
 JR西日本の草津線の貴生川駅の片隅に信楽高原鐡道のホームがある。JR西日本との乗り換え用にICOCAの簡易改札が置かれているが、それ以外は駅舎も無ければ駅員もいない。ただ1両編成の気動車があるだけである。
 そのポツンと鎮座した列車だが、以外にも比較的真新しい車両である。乗り換え時間が短く、ホームにたどり着いた時にはワンマン運転の運転手が今にも発車せんとスタンバイしていた。置いて行かれては困るので、さっさと車両に乗り込むことにする。

 信楽線の全長は15キロ弱だが、その3分の2ほどの区間を貴生川と次の駅・紫香楽宮跡駅の1駅間で占めている。その間に駅が無い理由は明らかで、人の通らない山の中に線路が敷かれているからである。
 電化されていないため、線路の上には2本のレールと枕木しかなく実に殺風景。ともすれば廃線跡の様な線路を列車は進んでいく。よくまあ、こんなところに線路を敷いたものだという険しい山道を登ること15分でようやく紫香楽宮跡駅に到着する。
 ここからはちょと進んでは駅に止まり、あっという間に4駅先の終点・信楽駅に到着した。

信楽駅

信楽駅に到着 駅前にはハロウィン仕様に化けた巨大信楽たぬき 信楽駅前の蕎麦屋・山久さん
甲賀・信楽駅

 信楽駅で出迎えてくれたのは、ご存じ「信楽たぬき」。巨大なタヌキ像が出迎えてくれたのだが、よくみたらハロウィン仕様。さすがはタヌキ、化けますな。
 ここからは峠をいくつか超えた先の伊賀上野駅まで自転車で移動する。が、まずは腹ごしらえということで、駅前の蕎麦屋・そば処山久さんにおじゃまする。
 そばにお稲荷さんを追加するのがこの店の流儀らしく、そばを頼むと「稲荷はいるか?」とワイルドに聞かれる。「いる」と答えると、お稲荷さんがすぐに出てきた。ちょっと細長い独特の形をしているが味は普通で、おいしい。なぜかキュウリが添えてある。
 そばはそば感があるのに、しっかりコシがあるタイプ。もしかしたら「ざる」より「かけ」の方がおいしいかもしれない。

 腹ごしらえが済んだところで、いよいよ輪行してきたロードバイクを組み立て出発する。
 考えてみれば、ここ信楽駅は甲賀忍者の町・甲賀にあり、目指す伊賀上野駅は文字通り伊賀忍者の町。ここは隠密に活動せねば、自転車の天敵まきびしをまかれるやもも知れぬので、行先は誰にも告げないことにしておこう。

自転車連絡大作成

輪行袋から自転車を取り出し、ホイールを取り付け、いざ出発 国道422号線の峠を超えると三重県に突入
甲賀・信楽市街

 駅から国道までのしばらくの道は、まあまあ生活感のある住宅街の中を進んでいく。おいしそうなお昼御飯が食べられそうな店もいくつかあったので、昼ご飯のチョイスを早まってしまったかと少し後悔する。(いや、お蕎麦もおいしかったんだけどね)
 出発してから15分余り、集落を抜け国道422号線に入る。ここから先は、集落どころか沿道にも店が無くなり、いよいよ山の中へと分け入っていくことになる。

 国道422号線を6キロ程走り一つ峠を越えたところで、国道を離れ「伊賀コリロールロード」なる細い道の方へ右折する。
 道を曲がって見えてきたのは上り坂。下れば上るのが世の常とは言え、であれば谷のない場所に道を通してくれよと言いたくなる。
 10月になり秋も深まってきたはずなのだが、ここ数日は猛暑日に迫る勢いの真夏日が続き、坂道がなかなかしんどい。
 坂をなんとか上り切ると、あとはしばらく下り坂が続く。まあ、下り坂は下り坂で、ブレーキが効ききらず恐ろしいのだけど...。
 

人も車も通らない旧道に入ってきてしまった
クマもいないといいな...
伊賀・諏訪

 コリロールロードを下りきると信楽以来久々の集落が表れる。諏訪というこの集落で再び国道422号と合流する。
 この先は国道422号をひたすら進めば伊賀上野駅方面に抜けるのだが、途中に長めのトンネルが一つあるのが厄介。歩道のないトンネルを自転車で走行するのはちょっと恐ろしいので、トンネルができる以前の旧道と思われる細い道を通ることにする。
 しかしながら、その細い道に入った途端、車の姿が全くなくなってしまった。まあショートカットできるトンネルがあるのにわざわざ脇道を通る車なんかおらんわな...。
 そんなわけで、「熊でもおったらどうしよう」と不安になりながら山道を自転車で下ることになった。結局、途中ですれ違った車は1台のみ。よりによって車が1台ギリギリ通れるような道幅ですれ違ったので、熊よりはマシながら車も車で、なかなか厄介ではあった。
 そんな細い山道をなんとか下って、集落にたどり着いた。伊賀市の市街地である。
 集落に入ったらすぐにJRの線路が見える。踏切を渡って、右に進むとすぐに伊賀上野駅があった。

伊賀上野駅

伊賀上野駅
伊賀・伊賀上野駅

 なんとか1時間半ほどで伊賀上野駅に到着した。
 伊賀上野駅は関西本線の駅であるが、そのわきにひっそりと伊賀鉄道が乗り入れている。このあたりは貴生川駅の信楽高原鐡道とよく似ている。
 さて、自転車を畳んで今度は伊賀鉄道に乗り込もうと思ったが、電車の出発まで20分弱。予想はしていたが、自転車を輪行袋に収納するのに手間取り、タッチの差で電車を逃すことになる。
 次の電車まではちょうど1時間。自転車を畳んでしまったので動き回ることもできず、誰もいない駅舎で自販機のアイスクリームを食べながら時間を潰すことになった。

伊賀鉄道

伊賀鉄道伊賀線 忍者がいたり、木彫りの駅名が飾ってあったりする忍者電車
(右下)係員のいない駅を紹介しているらしいが、むしろ「常時いる」駅は一駅だけ 上野市駅で強制乗り換え 伊賀神戸駅
伊賀市・上野市駅

 電車を待つこと1時間弱。ぼんやりと老後資金の工面などに思いを馳せた後、ようやく折り返しの列車が到着した。JRの改札をでてすぐ左手のどん詰まりの線路に伊賀鉄道の車両が止まっていた。こちらもまた、わりと新しめの1両編成の車両である。
 1時間に1本しかない伊賀上野発の電車だが、そのうち2本に1本は3駅先の上野市駅で乗り換えが必要となる。そして、おいらの乗った列車は乗り換えが必要な上野市行きの列車。あと、5分早く伊賀上野駅に着いていたら、直通列車に乗れたのだが...。「己の脚力を恨むがいい」というキャスバル兄さんの声が聞こえる。

 伊賀鉄道は、旧近鉄・伊賀線を引き継いだ第三セクターの鉄道。関西線の伊賀上野駅と近鉄大阪線の伊賀神戸駅を結ぶ15キロほどの鉄道である。
 伊賀と言えば忍者ということで、車両は全力で忍者をモチーフにしている。網棚に忍者のぬいぐるみが置いてあるなんて言うのは序の口で、つり革の握りて部分が手裏剣型にデザインされているなど、なかなかの本気っぷりを見せてくれる。ニンニン。
 ほどなく伊賀上野を出発した電車は上野市の住宅街を民家の間を縫うように走っていく。田舎ということもあり、大きな日本家屋がまあまあ残っていて、外国人観光客あたりの目からは忍者屋敷がたくさんあるように見えるのでかもしれない?
 
 なんて言っているうちに10分かからず、終点の上野市駅到着。ホームの反対側に止まっている列車へ自転車を担いで移動開始。
 うーむ、乗り換えた列車もやはり1両編成の車両。何故車両を交換する必要があるのか解せないのだが、忍びの掟なのだろうから深くは追求すまい。
 伊賀市の市街地を抜けると田園地帯に入り、そして最後は山の中で近鉄大阪線の伊賀神戸駅に到着する。

伊賀市・伊賀神戸駅

 上野市駅から30分、終点・伊賀神戸駅に到着。伊賀上野駅とは打って変わって、周囲に何もなさそうな駅に見える。歴史的に近鉄の幹線・大阪線から伊賀方面への線路を分離させるためだけに作られた駅なのかもしれない。
 元は同じ近鉄だけに、同じ敷地内に近鉄大阪線のホームと伊賀鉄道のホームが並んでいる。しかしながら、伊賀鉄道のホームは近鉄の改札外で、近鉄に乗り換えるためには自動改札を通らなくてはならない。近鉄から分離のしたとき、伊賀鉄道の民はベルリンの壁が構築された東ベルリンの民と同じような思いをいだいだたことだろう。
 ICカードを持つおいらは、そんなベルリンの壁ならぬ伊賀神戸の壁を越え、おなじみ近鉄大阪線のホームへ降り立つ。
 考えてみれば、この辺りはいつもアーバンライナーで通過してしまうので、普通電車に乗るのはなかなか新鮮である。伊勢中川行きの普通列車がやってきたので、自転車を担いで乗り込んでいく。伊勢中川で急行に乗り換えたら、あとは名古屋に帰るだけである。

 振り返ると、我ながら実に体力が足りない。峠を二つ、三つ超えたのだがその標高差は高々100メートル程度。しかしながら、坂を上りながら吐きそうになった。で、結局、上り坂は自転車を押して上がる羽目になった。
 そもそも論として、盲腸線というのは、たいてい山にぶつかって線路が終わる。よって、自転車で連絡しようとすると基本は峠を越える必要がある。またどこかで自転車連絡やりたいけど、きっと峠が待ち構えているんだろうなぁ...。

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