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2019/08/28

国際航路でウラジオストクへ (#1 イースタンドリーム号)

国際航路で ウラジオストクへ 2019/8/10-14

 当たり前の話だが、日本海の向こうにはロシアがある。
 地図でよく見ると、ロシア極東最大の都市・ウラジオストクは思いのほか近く、東京からだとソウルと変わらない距離にあり、飛行機だと2時間程で到着するらしい。
 実はそのウラジオストクへ船による定期航路が就航している。鳥取県境港市から韓国の東海(トンヘ)を経由して、二日がかりでウラジオストクに到着する航路である。
 かつてロシアへの旅行はビザの取得が必要でなかなか面倒だったのだが、最近は地域間の移動ができないなどいくつかの制約はあるものの、オンラインで申請できる電子ビザが導入され、気軽に行ける場所になってきた。
 前々からロシア航路は乗船したかったのだが、今が商機と乗ってみることにした。

境港から出港

(左上)境線の妖怪列車
(右)目玉おやじがお出迎え
(左下)フェリーターミナルへの無料シャトルバス
(左上)窓口は長蛇の列
(右上)出国ゲートを抜けたら何もない
(下)境港国際旅客ターミナルの全容 いよいよイースタンドリーム号に乗船
境港・境港駅

 ウラジオストク航路の出発の地は、鳥取県境港市。水木しげるゆかりの地として有名な港町である。
 正直なかなか辺鄙な場所にあり、行くのは結構大変。名古屋からだと電車で5時間ぐらいはかかる。
 今回の旅はそれ以外にもいろいろ準備が大変で、一番面倒だったのがビザの申請。ほとんどの国にノービザで観光に行ける日本人でも、ロシアへの旅行は未だにビザが必須。電子ビザ制度が導入され、手続きはかなり簡素化されたのだが、なかなか一筋縄ではいかない。顔写真をアップロードしなくてはならないのだが、背景色やら顔の大きさに厳密な規定があり、なかなか受け付けてもらえない。もうひとつすごく迷ったのがビザを申請する際の地域の選択。選択肢に"Vladivostok"も"Владивосток"(キリル文字表記)も存在せず、どれを選べばいいわからない。困った挙句、会社の同僚のロシア人に聞いてみたところ、ウラジオストクが属する行政区域である"沿海地方"、すなわち"Primorsky Krai"、あるいはキリル文字で"Примо́рский край"を選択すると教えてくれた。言われてみれば当然だが、難しいね...。

境港・境港国際旅客ターミナル

 そんな困難を乗り越えてやってきた境港駅。
 境線の終点であるこの駅は頭端式ホームになっていて、改札を抜けると目の前に隠岐諸島へ向かうフェリーターミナルがある。しかし、国際航路のフェリーターミナルは別の場所にあり、駅前から伸びる水木しげるロードの入口近くにあるバス停から無料のシャトルバスに乗る必要がある。
 定刻1分前にやってきたのは温泉旅館のお迎えスタイルのマイクロバス。「これは違うよな?」と一瞬思ったが、ちゃんとバスの側面に"Shuttle Bus"と書いてある。
 5分ほどで到着し、バスを降りたおいらの目の前に現れたのは、驚くほど小さな四角い建物。港の片隅の小さな倉庫のような建物だが、入り口の上にはちゃんと「境港国際フェリーターミナル」の文字が掲げられている。
 中はちょっとした大き目の外科医院程度の待合室と、二つしか窓口のない発券カウンターがあるのみ。カウンターには長蛇の列ができている。30分近く並んでやっと順番がやってきた。そこで列の進みが悪い理由がわかるのだが、どうやらロシアの電子ビザを一人一人オンラインでチェックを行う必要があるらしい。受付のお姉さんが私物じゃないかと思われるスマホでビザに印刷されたQRコードを一人一人読み込んでは、何かを書き写している。
 なんとか手続きを終え、ボーディングチケットを発券してもらい、いよいよ出国手続きへ。といっても、出国ゲートも当然一つしかなく、そこを抜けたらもう出口。免税店はおろか、自販機の一つも置かれていない。
 出口を出たらすぐ岸壁で、目の前に乗船するイースタンドリーム号が停泊していた。

イースタンドリーム号

夕日を背に境港を出港 (左)ビュッフェ形式の食堂
(右上)歌って踊れる船員によるナイトショー
(右下)壁に何故かストームトルーパーが...
境港港・イースタンドリーム号

 イースタンドリーム号は、韓国の海運企業・DBSクルーズフェリーが運行する貨客船。国際フェリーとは言え、そんなに大きな船ではなく、国内のカーフェーリーぐらいの大きさである。それもそのはずで、この船、もともとは鹿児島-沖縄で運行されたフェリーのお古。言われてわれてみれば、トイレが和式だったり、どこか日本っぽい。
 部屋は何クラスかに分かれており、一番安いエコノミーは雑魚寝部屋。完全に国内フェリー仕様で、なんだか敷居が低く親しみやすい気もする。
 韓国の船ということで、境港から直接ウラジオストクに向かうわけではなく、一度、韓国の東海に寄港してからウラジオストクに向かう。つまり、日本とロシアを結ぶ船というよりは、韓国と日本及びロシアを結ぶ船という色合いが強く、乗客も韓国人が大半で、日本人とロシア人(?)がそれぞれ何割かづつを占めているといった感じ。
 船に乗り込んで荷物の整理などをしていると、特に何のアナウンスもなく、いつの間にか船が動き出していた。
 境港の岸壁を見送りがてら、デッキに向かいつつ、船を見学してまわる。
 船は3階層あり、それぞれに客室がある。客室以外には、食堂、売店、バー、ナイトクラブ(!)の他、風呂とシャワールームがある。各階層の上部にデッキがあり、この時期気候もよいので、のんびりベンチに座って、海を眺めることもできる。

鳥取沖・イースタンドリーム号

 出発してすぐに、「レストランがオープンした」とのアナウンスが流れる。朝、昼、晩と三食のタイミングでビュッフェ形式のレストランがオープンする。料金は、千円あるいは、一万ウォンで現金でもカードでも支払い可能。この1円=10ウォンというざっくりとした通貨レートはこの船の共通ルールになっていて、売店のお支払いにもこのルールは適用される。つまり、この日のレートで言えば、ウォン払いした方が若干お得になる。
 食券を買い、船のデッキをぐるっと回って、レストランに向かう。トレイを持ってお皿におかずを盛り付けていくというごく普通のビュッフェだが、料理は基本韓国風。キムチもあるし、スープはなんだか赤くて辛い。全体的においしかったのだが、もつ煮込み的な煮物が特に美味しかった。日本の居酒屋風のもつ煮込みだったのか、あるいは韓国にも似た料理があるのだろうか?
 この日、神戸から韓国に遠征に行くという女子高生のハンドボール部の集団が船に乗り込んでいて、食堂でも鉢合わせたのだが、まあ、さすが女子高生。むちゃくちゃ元気ですわ。

鳥取沖・イースタンドリーム号

 食堂の後、「はて、寝るまで何をしようか」と思っていたところ、船内放送で「ただいまからナイトクラブでショーを始める」というアナウンスが流れる。ショーとはなんぞや?? と、行ってみると、なんと船員さんがダンスを始め、さらに続いてバンド演奏を始めたのである。船の乗船業務だけでなく、ショーに出演とはなかなか多芸だ。もちろん上手いとは言い難いのだが、楽しそうに歌って踊っているので、それなりに見ていられる。

 そんなこんなで、ぼちぼち夜遅くなってきたので、寝ることにする。寝る前に風呂に入ろうかとも思ったのだが、大浴場を除いてみると船の揺れで湯船のお湯がバッチャンバッチャンと暴れている。波自体は穏やかで船も大きいので、座っている分にはさほど揺れを感じないのだが、この湯船につかっていたら船酔いしかねないと判断し、湯船は諦めシャワーを使うことにした。

韓国東岸の東海へ寄港

(上)東海港へ着岸
(下)東海のフェリーターミナル (左上)東海港から駅方面を望む
(右上)東海駅の駅舎
(左下)東海駅駅前 なんか日本でもこんな駅前あるよね
(右下)バス停に大量の巨大な唐辛子が干されていた
東海港・イースタンドリーム号

 翌朝、ボーっとしているうちに、船は東海に近づいてきた。
 極度に船に弱く、船酔いが怖いおいらは船が揺れることを心配していたのだが、結局唯一揺れたのが、東海寄港直前の外海のみ。結果と多少揺れた程度で酔うほどではなかった。念のため100均ショップで消臭凝固剤入りの高性能なゲロ袋を用意していたのだが、お守り代わりに握っていたのみで、使用せずに済んだ。
 岸が近づき東海のコンテナふ頭が見え始めたころにはさすがに揺れは収まり、下船の準備を始めることができた。
 東海に到着する時刻は9時半で。出航は14時。4時間ほど時間あり、トランジットとして韓国に入国することができる。ただし、出入国に時間がかかるので実際に上陸できる時間はせいぜい2時間ほど。とはいえ、船にいてもヒマなので、韓国に上陸してみることにする。

東海・東海港

 東海のフェリーターミナルも境港より、多少大きいかなというサイズでとてもコンパクト。入国審査が終わればあっという間に建物の外にでることができる。で、ちょっと歩いて敷地の外に出てみたのだが、見事に何もない。左斜め前方にコンビニらしき店があるが、それ以外は民家しか見えない。
 地図を見てみると、徒歩10分ほどの場所に東海駅がありそうなので、駅前まで歩いて行ってみることにした。
 しばらく歩いていくと、立派な駅舎が見えてきたのだが、人が誰も歩いていない。人がいなければ、当然、街も静かなもので、駅前にあるのは数件のカフェと食堂、さらにコンビニが一軒と、飲み屋がチラホラ。まあ日本で言うならば1時間に4本の普通列車しか止まらないような駅にありがちな風景ではある。
 うーん。特にあてもなく歩いてきたのだが、これ以上歩いていても何もなさそうだし、クソ暑いので営業していたカフェに入り、コーヒーでも飲むことにした。注文していたらとても美味しそうなハニートーストが目に入ったので、それも注文。
 コーヒーもハニートーストもかなり美味しかったです。
 しばらく涼んだ後、東海港に戻るとする。

東海・東海港

 再び戻ってきた東海港。ここでも境港と同じように、少ない窓口に長蛇の列が伸びている。
 たっぷり30分以上待たされてボーディングチケットを受け取り、出国審査口に向かう。小さな出国審査場といい、外に出たらすぐに岸壁という構造といい、やはり境港とよく似ている。

ウラジオストクに向けて再出港

(上)再び日本海へ
(下)夜は周囲の漁船の光がよく見える
朝鮮半島沖・イースタンドリーム号

 さて、再びイースタンドリーム号の船内へ。
 晩御飯までかなりの時間があるので、バーでコーヒーを飲んで時間をつぶすことにした。バーのテレビは韓国のバラエティーが放映されているのだが、なんとなく日本のテレビ番組とよく似ている。芸人数人と女性タレントとがなんらかのゲームをやっていたり、女性タレント二人が田舎で自給自足の生活を体験してみたり、言葉は全くわからないのだが、なぜか見慣れたテレビ番組に見える。

 バーにしばらくいた後は、やることがなくなり、デッキに上がってのんびり海を見ることにした。
 それにしても、二日目となるとさすがに何もやることがない。あっち、こっち、移動してはベンチに座り、ひたすら時間が過ぎるのを待つのみである。
 夕飯の時間がやってきたのだが食欲もわかず食堂に行く気を無くしていたのだが、売店で売っていた日本のカップ焼きそばがとてもおいしそうだったので、これを夕飯とすることにした。
 よく見ると、かなり大多数の日本人が売店近くに備え付けられているウォーターサーバからカップラーメンやら焼きそばにお湯を注いでいた。どうやら考えることはみんな同じらしい。
 その後、ナイトクラブに行きデジャヴのようなバンド演奏を堪能し、シャワーを浴びてから、再びベンチに座り夜の海を眺めることにした。
 夜の海を見ていると、いたるところで数多くの漁船が操業していることに気が付く。フェリーは日本海をウラジオストクに向かって航行しているのだが、終始、朝鮮側にも日本側にも絶え間なく漁船の光が見えていた。取られた魚はきっと日本の食卓にも並ぶのだろう。漁師の皆様ご苦労様です。


2日目の朝 恐ろしく波の穏やかな日本海を航行中

いよいよロシアの地に

(上)ウラジオストク港着岸目前
(左下)湾内に入ってから小型船が誘導(監視?)していた
(右下)フェリーターミナルの向こうはウラジオストク駅 ウラジオストクのフェリーターミナル
ロシア沖・イースタンドリーム号

 翌朝、目が覚めたものの船がウラジオストクに着く14時までは、まだまだ半日以上ある。退屈ここに極まり、ほぼ無の境地でベンチに座り続けて時間が過ぎるのを待ち続けた。
 幸いにも東海を出てから全くと言っていいほど船は揺れず、ゲロ袋を手にすることもなかった。この旅行の前後に二つの台風が日本に向かって来たのだが、見事台風の間隙を突く大勝利であった。

ウラジオストク沖・ルースキー大橋

 昼を過ぎ、いよいよロシアの大地が遠くに見え始めた。
 ウラジオストクにの沖には、ルースキー島という島がある。ウラジオストクを極東の観光地とすることを目論んでいるロシアは、ルースキー島に大きな水族館を作り、将来的にはカジノを誘致しようとしているらしい。そんなルースキー島と大陸との間に世界最大の斜張橋が架橋されたのだが、その橋の下をくぐり、ウラジオストク港のある金角湾に進んでいく。
 金角湾に入ると、ウラジオストクの街並みが見えてくる。遠くからでも、アジアとは違う、石造りのヨーロッパの街並みとわかる。
 金角湾は、内部で直角に曲がるのだが、その曲がる直前にフェリーターミナルがあり、船は直前で方向を180度変え、バックで入港する。
 ウラジオストクの街が見えてから入港までかなりの時間がかかったのだが、さらに下船まで1時間近く待たされ、なんとかウラジオストクの地に上陸することができた。


ルースキー大橋の下を航行

ウラジオストクに上陸

ウラジオストクで最も歴史のあるグム百貨店
店内の大半はZARAに占拠されている
ウラジオストク・ウラジオストク港

 フェリーターミナルはそれなりに大きな建物なのだが、入国ゲートは二つしかなく、予想はしていたがやたら入国に時間がかかる。
 なんとか入国手続きを終え、出口に向かって行くと、途中からどっちに行けばよいのかわからなくなり、気が付いたら裏口のような場所から外に出てしまった。
 この裏口が正しい出口だったのか、間違っていたのかは不明だが、別の入り口に入り、階段を上がっていたら、フェリーターミナルの入り口らしき場所に到着した。お土産物屋が並び、それなりに賑やかな場所である。
 ATMからロシアルーブルを入手し、まずは荷物を置くためにホテルに向かうことにする。

ウラジオストク・ウラジオストク港

 フェリーターミナルからホテルまでは2キロ弱。歩いていけない距離ではないので、町並みを眺めながらのんびりホテルに向かうことにした。
 港の北側に中央広場と呼ばれる広場があり、その北側がウラジオストク一の繁華街である。
 石畳の歴史ありそうな建物が並んでおり、ヨーロッパの町並みの雰囲気がする。
 中央広場の北東、ひときわ目立つ大きな建物が、ソ連時代から続く歴史ある百貨店グム百貨店である。
 百貨店とは名ばかりで、実態としては建物の大半がZARAに占拠されている。他にはカフェと小さなお土産物屋さんがちらほらある程度。とはいえ19世紀の建物であり、一見の価値がある。
 グム百貨店内のカフェで休憩をしてから、ホテルに向かうことにした。

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