2022-01-12

日本の南の端と西の端

日本の南の端と西の端 2022/1/3,5

 日本の最南端と言えば沖ノ鳥島だが、無人島であり小さな岩礁であるので、人も住んでいないし行くことも難しい。
 ではそれを除けばどこが最南端かと言えば八重山列島の波照間島となる。西表島の南に位置する小さな島である。
 一方、最西端はというと同じく八重山列島の与那国島。あと10キロあまりで台湾という文句なしの国境の島だ。
 この2つの島は石垣島を拠点に巡ることができる。2022年の元日から石垣島に滞在していたので、南と西の端まで足を伸ばしてみた。

西表島

石垣島から離島に向かうフェリーターミナル
石垣・ユーグレナ石垣港離島ターミナル

 まずは最南端の波照間島へ向かい所だが、石垣島から西表島を経由して波照間島に向かうツアーに参加したので、まずは西表島に向かった。
 石垣島を中心とした八重山列島の各島へは石垣島のフェリーターミナルから出航する船で移動する。西表島、竹富島、小浜島とオフシーズンの冬でも数十分おきにどんどん船が出ていく。
 西表島には港が二つあり、今回向かうのは南側の大原港。ターミナルでは単に「大原行き」とアナウンスされることが多いので注意が必要。
 石垣島と西表島の間には小浜島や武富島などいくつかの島があるがサンゴに囲まれた浅い海のため、基本的に波は穏やか。船酔いの怖いおいらでも安心して乗船できる。
 この日も大きな揺れは無く30分余りで西表島の大原港に着いた。

仲間川に群生するマングローブの森
西表島・仲間川

 西表島ではマングローブの森を眺めるクルーズの後、水牛車で油布島へ渡るスケジュールが組まれている。
 なんだかタイトなスケジュールらしく、急いで観光バスに乗せられるとすぐに出発となった。まず目に入ってくるのが大原港近くの信号機。島に二つしかない信号機の一つで、日本最南端の信号機らしい。
 信号機を眺め、サトウキビ畑を抜けると仲間川という大きな川が見えてくる。この川の汽水域にマングローブの森があり、それを船から眺めるという趣向である。
 クルーズ船から3種のマングローブと野鳥を眺めながら川を遡っていく。潮の流れの影響かそれなりに流れは急のようだが、水面は穏やかで船酔いの心配はなさそう。これなら安心してマングローブを観察できる。
 マングローブと言うとがっしり生えた根が思い浮かぶが、あれは気根と呼ばれ枝のように生えてきた後、地面に向かって成長して根となるらしい。いろんな植物がいるもんやねぇ、進化ってすごいね。
 船は30分ほどゆっくりと上流に向かった後、Uターンして元の場所に戻ってくる。

由布島に渡る水牛車 (左上)由布島
(右上)水牛が休憩する池 水牛は水が無いと生きていけないそうです
(下)由布島の浜から石垣島を望む いよいよ波照間島へ移動
由布島・亜熱帯植物楽園

 マングローブの次は、由布島の水牛車乗車体験である。再びバスに乗り込んで水牛車の乗り場に向かう。
 バスを降りると浜の上で水牛車が何台か待ち構えており、干潟を挟んですぐ向こうに目的地の由布島の姿が見える。長くつがあれば歩いて行けそうな距離である。
 干潟の上を水牛が牛車を引く姿はCMなどでおなじみではあるが、間近で見ると水牛も水牛車もかなり大きい。水牛の大きさにもよるが一度に20人近くを運ぶことができるらしい。
 乗り場で乗車する水牛車が割り当てられ、乗り込んだのち前後の重量バランスを確認して発進する。一度手綱らしきもので指示を受けると、水牛は黙ってノシノシと対岸の島を目指す。
 乗り場から対岸の島まではずっと干潟になっており、目視する限り水深は数十センチ程度。400メートルほどの距離を15分かけて歩いてく。といっても、水牛によって進む速度はまちまちで、おいらが乗った水牛は若さ溢れる余り、他の水牛車をごぼう抜きにしてゴールへとたどり着いた。
 途中船頭さんというか水牛使いの方が三線の弾き語りをしてくれるのだが、気のせいか巻き気味に演奏を終えた。

 さて水牛で渡ってきた由布島は、周囲2キロばかりの小さな島。島の全域が亜熱帯植物楽園という施設になっている。
 さっそく島を周遊と思ったのだが、スケジュール上島の滞在時間はわずかに30分弱。10分早歩きで島内を歩いて、すぐに引き返す。また割り当てられた水牛車に飛び乗り、西表島へ戻ってきた。
 帰りは行きと違ってのんびり屋さんの水牛で、途中でなんどか休憩しながら対岸までたどり着いた。それにしても水牛さん働き者ですわ。

 由布島から大原港に戻ってくると、今度は波照間島行きの船に乗りかえる。いよいよ日本最南端の島へ移動である。
 港に着くと同時に、波照間島へ向かう船がやってきた。石垣島から西表島を経由して波照間島に行く船らしく、すでに多くの乗客が乗り込んでいる。ほとんどのお客は西表島では降りずに波照間島に向かうようである。
 波照間島は石垣島や西表島からは少し南に離れた位置にあり、外海の影響を受けやすく船が揺れることもあるらしい。船も双胴船だった西表島行きの船よりは一回り小さい。
 うむ、船酔いが心配である...。

波照間島

コート盛りと呼ばれる見張り台 実は波照間に空港があるのだが、定期航路はおろか就航実績もほとんどない
波照間島・フェリーターミナル

 船酔いを心配したのだが、予想に反して船はさほど揺れず、快適に波照間島にたどり着くことができた。
 波照間島でもマイクロバスによる周遊ツアーに参加することになっている。
 港を出発して最初に見えてきたのが、日本最南端の交番、次は日本最南端の歯医者。そう、最果ての島であるこの島では全ての建物が基本、日本最南端の何かなのである。日本最南端の信号機は西表島に譲ってしまったのだが、最南端の横断歩道なら波照間島の小学校の目の前にちゃんとある。ただし、道幅が10メートル無さそうなので、とても短い。

波照間島・コート盛

 島に着いたらまず昼食なのだが、昼ご飯の八重山そばを早々に片づけて、近くの「コート盛」と呼ばれる火番所に向かった。
 琉球石灰岩を渦巻き状に積み上げた見張り場で、琉球王朝時代に作られたと伝えられている。頂上まで上ると、波照間島をぐるりと見渡すことができる。
 波照間島は全体になだからな丘上の島で、島の中央部から見渡すと360度全て海が見える。北側の海の向こうには西表島が見えるが、南側には何も見えない。そう、いよいよ最果ての島にたどり着いたのである。

 ちなみに波照間島の東の端には波照間空港があり、5年ほど前にターミナルが新設されたのだが未だ定期便の就航はなく、真新しいターミナルビルだけがぽつんと放置されている。
 屋根の上のシーサーも誰を守っているのだかわからず悩んでいることだろう。

手作り感満載の最南端の碑 日本最南端の海
波照間島・高那崎

 昼食を後、いよいよ島の南の端・高那崎に移動した。
 ここには日本最南端を示す「日本最南端の碑」が建っているのだが、ウソみたいにショボい。周りになんだか立派な他の碑も建っているので、完全に埋もれている。
 なんでもこの碑は、島でアルバイトをしていた学生がカンパを集めて建立したものなのだとか。
 そう思ってみると小さな碑も立派に見えてくる。
 日本最南端のこの浜の南はフィリピンまでずーっと陸地がない。なので冬の晴れた空の下でも島影一つ何も見えない文字通り一直線の水平線が広がっている。
 当然、夜は暗く、星空観測に最適らしい。星を見たいのはやまやまなのだが、ご多分に漏れずスケジュールが詰まっており、追い立てられるかのようにバスに戻ってきた。

波照間ブルーが広がるニシ浜の海 石垣島へ帰還
波照間島・ニシ浜

 次にバスで向かうのが、波照間島のもう一つの名物・島の北側にある「ニシ浜」である。
 ニシ浜が名物である理由はただ一つ、その海の美しさである。
 浜に着いて、海を目撃してまず驚くのはその青さ。「エメラルドグリーンとはこれのことか!」と思わずにはいられない青い水面がどこまでも続いている。砂浜も広く美しく、言うまでもなく海の透明度は抜群。
 何度見ても写真で加工したかのような景色に見えるが、間違いなく目の前に広がっている景色である。
 この日は曇り空で青空とのコントラストは望めなかったのだが、それでも十分その美しさを堪能することができた。夏にここで泳いだら気持ちいいだろうねぇ。

日本にこんな場所があったんだと驚くほど美しい波照間島のニシ浜

与那国島

与那国行き飛行機は条件付き運行 与那国空港で食べた与那国そば
石垣・新石垣空港

 波照間島を巡った日の翌々日、最南端に行ったのならば最西端にも行かねばなるまいと、今度は飛行機に乗って日本最西端の与那国島に向かった。
 石垣島から与那国島までは飛行機でたった30分なのだが、与那国空港の天候が悪く、引き返す可能性のある条件付き運行となってしまった。機材はボンバルディアのプロペラ機。条件付きなのは仕方がないにしても揺れるのは勘弁願いたいところだが...。

与那国島・与那国空港

 結局、危なげなく与那国空港にたどり着いたのだが、やはり悪天候には違いなかった。大雨が降っていて確かに視界がかなり悪い。
 まずは腹ごしらえということで、空港内のレストラン(というか食堂)旅果報で昼飯を食べた。ここで「与那国そば」なる八重山そばを食べたのだが、この旅の間、石垣島や波照間島で何度か食べた八重山そばの中で一番おいしかった。
 決め手はスープ。ほのかな甘みがあるスープが麺とよくマッチ。予想外と言ってはなんだが、期待していなかった分、アタリを引き当てた感動はひとしおである。旨いぞ。

与那国島の東の端っこ東崎(あがりざき) どっちかと言えば潜水艦に見える軍艦岩とどう見てもアレにしか見えない神立岩
与那国島・東崎(あがりざき)

 昼飯を食べても天気は相変わらずの雨模様。どうやらこの時期の八重山の空模様はいつもこんな感じなのだそうな。
 この旅の目的地は島の西の端なのだが、時間もあるので、まずは東の端に向かった。
 島の東の端は、東崎(あがりざき)と呼ばれている。
 ぱっとみ、芝生の向こうに灯台があるとても絵になる景色なのだが、近づくと芝生は膨大な馬の糞で覆われている。どうやらこの場所は牧場なのだそうだ。
 悪天候の成果馬はおらず、ただただ、糞が散在している。糞の間を縫うように、慎重に足を運びながらようやく灯台の下にたどり着いた。まあ、そうは言っても視界は悪く見えるのは荒れた海のみ。で、振り向けばそこにあるのは馬糞の海。
 帰りも風雲たけし城のごとく馬糞を避けるアトラクションをクリアし、なんとか駐車場にたどり着いた。
 次はいよいよ日本最西端である、島の西の端へと向かう。
 東の端は東崎(あがりざき)だったが、西側の端は西崎(いりざき)と呼ぶらしい。日が「上がる」場所と「入る」場所という意味なのだろう。(知らんけど)

 西崎に向かう途中、島の南側にある軍艦岩と立神岩という奇岩を見物する。
 軍艦岩は文字通り軍艦の形をした岩。何に見えるかと問われれば、おいらは「潜水艦」に見えたのだが、ともかく何らかの形をした岩がそこにあった。
 そして軍艦岩のすぐ近くに、海から直立した岩・立神岩がある。
 島のシンボルということだが、横から見ると直立したアレの形であり、まあ、アレの形をした巨大なものは何故か信仰の対象となるので、ここでも島のシンボルとなっているようである。
 立神岩を見ることのできる展望台は二つあり、西側の展望台は岩の真上から、東側の展望台は真横からその雄姿を眺めることができる。岩の存在感を見たいなら上から、アレであることを確認したいときは横からみるとよいと思われる。
 まあ、天気が悪るく、海が荒れていたこともあり、岩は確かに神々しく見えた気がした。

(左)西崎に建つ最西端の碑
(右)日本最西端の信号機 西崎から台湾方面を望む
与那国島・西崎(いりざき)

 レンタカーを走らせること20分。島の最西端である西崎に到着した。
 が、天気はあいかわらず雨。晴れた日には10キロ先の台湾が見るというのだが、見えるのは荒れた海とどんよりとした空ばかり。西も東もあったものではない。
 とは言え、せっかくここまで来たのだからと1時間ほど雨が止むこと待って、粘ってみたのだが、一向に天気が回復する兆しはなく、一瞬たりとも晴れ間を拝むことはできなかった。残念だが、天気ばかりは仕方がない。
 ここ西崎にも当然「日本最西端の碑」は建立されているのだが、こちらは大そう立派な碑が建っている。ただ、立派だったら良いのかと言えばそうではなく、「貧相」というインパクトのある波照間島の最南端の碑の方が印象には残るよね...。

 さて、西崎の近くには島で唯一の信号機があり、こちらが日本最西端の信号機となる。
 というか、波照間島と同じく、この島にある全ての物が何かしらの「日本最西端のXX」である。

与那国島・与那国空港

 島を一周して空港に戻ってきたのだが、帰りもまた条件付き運行とのアナウンス。
 しかしながら、出発は少々遅れたものの飛行機は無事飛び立ち、石垣島に戻ってくることができた。
飛び立つ頃にはようやく雨も上がり、少しばかり晴れ間が見え始めていた。雲の上で飛行機の窓から振り返ると、日本一遅い夕焼けが微かに見えていた。

おまけ 石垣島の美しい海・川平湾

 最南端と最西端の離島の旅だったが、端っこよりも印象的だったのは波照間島のニシ浜の海の色。テレビでしか見たことがないような青い海がすぐ目の前に広がっていた。
 聞いたところによると、冬の八重山諸島はいつも天気が悪いらしい。6日ほど石垣島に滞在したのだが、確かに、雨が降らなかったのは波照間島に行った日ぐらいのもの。快晴とはいかなかったが青い海を見ることができて本当によかった。
このブログは天気になかなか恵まれないのだが、流氷とかオーロラとかロケット打ち上げとか、ここぞという時だけはいつも晴れてくれる。
 天気の神様か気象庁に感謝したいね。

0 件のコメント: