2025-03-20

モルディブで水上飛行機に乗る

モルディブで 水上飛行機に乗る 2025/2/19-25

 世の中に乗ってみたい乗り物がたくさんある。ホーバークラフト、飛行船、列車ごと船に乗せる鉄道連絡船、などなど。
 そのうちの一つが水上飛行機である。水上飛行機とは、滑走路ではなく水上から離着水する飛行機のこと。要は、「紅の豚」でポルコたちが乗っているアレである。
 水上飛行機は軍事用、防災用として活躍するほか、小規模な離島路線を中心に民間航路も世界中で多数運行されている。多数の離島を抱えているはずの日本でも戦前は運行されていたようだが、戦後絶滅してしまった。
 で、どこなら乗れるのかと調べたのだが、世界最大の水上飛行機の運行会社(TMA - Trans Maldivian Airways)はモルディブにあるらしい。

 モルディブはインド洋北部に浮かぶ島国である。島国と言っても日本とは違い、モルディブは26の環礁が領土となっている。環礁とは環状に形成されたサンゴ礁のことで、島は主にそれぞれの環礁の外縁にあたる部分にある。モルディブの主要産業は観光であり、小さな島一つが一つのリゾートホテルとして開発されてきた。
 モルディブの空の玄関・ヴェラナ国際空港は、首都であるマレ島の隣の島にある。海外からの観光客は、そこから各リゾートの島へ移動しなくてはならない。空港のある南北マーレ環礁の島へはボートで、それ以外の環礁へは水上飛行機で、さらに離れた環礁へは一度国内線に乗り換えてからボートで移動する。つまり、ヴェラナ空港からやや離れたホテルに行くためには水上飛行機に乗る必要があるということである。
 つまり、モルディブのヴェラナ国際空港から少し離れた環礁にあるホテルに泊まるときには、必然的に水上飛行機にのることができるということである。
 そこで、今回はモルディブ諸島の北方、ラヴィヤニ環礁にあるリゾートホテルに宿泊する旅に出た。

ヴェラナ空港

フェリーで空港のあるフルレ島から市街地のマレ島へフェリーで移動
マレ・ヴェラナ空港

 名古屋からシンガポール経由で一日かけてモルディブの首都・マレのヴェラナ空港に到着。
 ここからいよいよ水上飛行機に乗り換えて...、と行きたいところだが、そうはいかない。というのも、水上飛行機は有視界飛行で行われるらしく、夜は飛ぶことができない。(滑走路で離着陸するわけではないからね)
 夜間に到着した場合、ボートで行くリゾートであればそのままボートに乗り換えて出発できるのだが、水上飛行機の場合は空港の周辺で一泊して、次の日に島に向かうことになる。
 ヴェラナ空港はフルレ島という島にあるのだが、この島には基本的に空港しかない。フルレ島と橋で二つの島が繋がっていて、一つがモルディブの古くからの首都であるマレ島、もう一つが人口の島フルマーレ島である。翌日水上飛行機で移動する乗客は、たいていどちらかの島のホテルに宿泊することになる。
 今回はマレのホテルに宿泊するため、マレ島までフェリーで移動することにする。空港のターミナルを出たらすぐ目の前がフェリーターミナルになっていて、各リゾート島へ行くボートが次々と出発していく。その中の一つの桟橋がマレ行きのフェリー乗り場となっていて、24時間運航されている。
 モルディブの通貨はルフィアなのだが米ドルも広く流通していて、大抵のものがルフィアと米ドルの二重価格になっている。フェリーの値段は1米ドル、窓口で米ドル札を渡すと乗車券をくれる。
 フェリーは10分おきに出航すると聞いていたのだが、なんだかいつまでたっても船がやってこない。おまけにフェリーを待っている乗客は我々しかいない。もしかして朝までフェリーが来ないんじゃないのかと、不安になってきた頃に、ようやくフェリーがやってきた。
 フェリーが桟橋に到着すると、どこからともなく人が集まってきて、深夜だというのに10人以上の乗客が乗り込んできた。どこかに時刻表があるのか、アナウンスがあるのか、はたまた船の姿を目撃して集まってきたのかそのあたりはよくわからず...。
 フルレ島からマレの島は目と鼻の先、乗車時間は10分たらず。あっという間に到着する。
 夜遅く、暗くてよく見えないのだが、それでも海がきれいなことは確認できた。明日が楽しみである。

マレ・マレ島

 フェリーを降りて、徒歩数分でホテルに到着したので、この日は終了かと思いきや、ホテルの玄関に鍵がかけられていて、中に入ることができない。
 予約サイトでは12時までチェックイン可能と書いてあったので油断していたのだが、完全に締め出されてしまったようである。
 電話をかけても誰も出ず、途方に暮れかけていたのだが、ちょうどそのタイミングで宿泊していた乗客がフロントに降りてきた。しかも日本の方である。扉越しに事情を話し、従業員を呼び出してもらった。
 しばらくしてやってきた(たたき起こされた)従業員に扉を開けてもらい、なんとかチェックインすることができた。あの時の宿泊客の方、本当にありがとうございました。

 あとでわかったのだが、どうもこのあたりのホテルは、空港からの送迎がセットになっているらしく、フェリーで自力で到着する客はいないらしい。そんなわけで、我々は無断キャンセル扱いになり、締め出されたようである。ホテルに事前に連絡を取らなかったが失敗だった。特に外国に宿泊するときは、ホテルとよく連絡を取るべしと学習した。

いよいよ水上飛行機

朝の空港のフェリー乗り場 細い道を挟んですぐ反対側が空港ターミナル (上) ずらりと並んだリゾートホテルのカウンター
(下) 水上飛行機のカウンターと搭乗券 (上) 真新しい水上飛行機ターミナル
(下) 宿泊するル・メリディアンのラウンジ

ラウンジの窓の向こうに着水する水上飛行機が見える

マレ・ヴェラナ空港

 翌朝、ホテルの人に送迎してもらい、ヴェラナ空港に戻ってきた。
 改めて昨日のフェリー乗り場を見てみたのだが、やはり海はとてもきれいである。気温は30度前後ということらしいが、湿度がなくとても過ごしやすい。あらためて、滝のように汗が噴き出る日本の夏は地獄である。

 さて、ここから水上飛行機に乗るのだが、チェックインの方法が少し変わっている。
 ヴェラナ空港から各リゾートホテルまでの水上飛行機の手配は、基本的にリゾートホテルが行い、宿泊代と合わせて請求される。なので、チェックインも航空会社のカウンターではなく、ホテルのカウンターで行う。ヴェラナ空港のロビーには100を超えるのではないかという数のホテルのカウンターが並んでいて、その中から自分の宿泊するホテルのカウンターを探し手続きを行う。
 なお、水上飛行機のダイヤは固定されておらず、その日の宿泊客を効率よく運ぶため、数か所のホテルに寄りながら臨機応変に、寄り合いタクシーのように運行されている。そのため、自分の飛行機が何時に出発するのかは前の日の夕方にならないとわからない。

 ホテルのカウンターで手続きを終えると、ようやく航空会社のカウンターに案内される。ヴェラナ空港からの水上飛行機の運行は、モルディブ航空とトランス・モルディブ航空の2社が担っていて、それぞれ青色と赤色がシンボルカラーである。
 今回登場するのは、赤い機体のトランス・モルディブ航空である。カウンターで預入荷物を預け、搭乗券を受け取ると、マイクロバスに案内され、水上バスのターミナルへ向かう。水上飛行機のターミナルは滑走路を挟んでターミナルの反対側にあり、車で5分といった距離である。
 ところで、この搭乗券、出発時刻は何も書かれておらず、結局いつ飛行機が出るのか全くわからない。

マレ・ヌービル水上飛行機ターミナル

 水上飛行機ターミナルに到着すると、再びホテルのスタッフが現れ、それぞれのホテル別のラウンジに案内される。
 国際線のターミナルが小ぶりでけっこうな年季物であったの比べ(どうやら新ターミナルを建設しているようだが)、水上飛行機のターミナルは真新しく巨大である。四角い建物の中央が吹き抜けになっており、2階から4階までぎっしりラウンジが並んでいる。
 私が案内されたのはマリオット系の二つのホテルの共同のラウンジなのだが、乗客は我々のみ。水上飛行機の出発時刻まで、食べ物やドリンクを自由にいただくことができる。
 窓の向こうは、青いモルディブ航空の発着場となっていて、ひっきりなしに水上飛行機が離着水している。

水上飛行機に搭乗

いよいよ搭乗、そして離水開始

美しい環礁

途中で他の島を経由して再出発

マレ・ヴェラナ空港

 しばらくして時間となると、ラウンジから搭乗待合室に案内され、さらにしばらく待たされた後、いよいよ飛行機に案内される。
 ターミナルを出ると、目の前に網の目のように桟橋が伸びていて、そこに十機を超える水上飛行機が停泊している。
 どれが俺の飛行機だろうとわくわくしながら係員の後ろをついていくと、その行く手に赤い水上飛行機が1機停泊していた。デ・ハビランド・カナダ製、DHC-6である。
 小さな飛行機なので、桟橋からタラップを数段登るとすぐに機内。座席は1-2の3列シートで、座席数は15席。後ろ半分は荷物スペースになっていて、私のスーツケースも無造作に積み上げられている。
 コックピットの扉は開けっ放しになっていたので、コックピットを除くことができるすぐ後ろ、最前列の席を確保した。

 全員が席に着き、ハッチが閉じられると、雑な機内安全の説明があり、その後耳栓が配られた。その理由はすぐにわかって、エンジンが唸りだすと隣の席と会話できないほどの音量になるからだ。
 やがて飛行機は水面を動き始めた。桟橋から離れると、滑走スペースまでゆっくりと移動する。波が穏やかなせいか、飛行機の動きは地上のタキシングとあまり変わらず、海の上を動いていることを忘れそうになる。
 しばらくして、飛行機はターミナルに背を向けると、一気に加速をし始める。窓を見てみるとフロートが大きな水しぶきを上げている。その後、あっさりと離水に成功し、大空へと飛び立っていった。
 座席に座っている分には通常の飛行機とあまり変わりない離水だったが、窓の向こうは水面。水面から直接大空へ、映画みたいであった。

 ヴェラナ空港がある北マーレ環礁は南北約70キロ、東西約40キロの大きな環礁である。空港はその南端にあり、飛行機はその北隣のラヴィヤニ環礁に向かっている。
 上空から見ると、環礁というのがよくわかる。環礁はサンゴ礁でできた大きな島の内側が水没し、その縁だけが地上に残された地形である。上空からはサンゴ礁とその縁がくっきり見え、縁の小高い部分が時々島になっているのが見える。
 それぞれの島には多数のヴィラが建てられたリゾートホテルが建築されている。
 サンゴ礁の海は青く、とてもきれいである。
 水上飛行機は、途中1か所、他のホテルに寄って、私が滞在するとル・メリディアンホテルに到着した。約40分の空の旅であった。

ティラマフシ島

ホテルのあるティラマフシ島に着水

部屋のバルコニーからの景色
梯子ですぐに海に降りることができる ビーチももちろん美しい 夕陽もまたよし
ラヴィヤニ環礁・ティラマフシ島

 今回宿泊したホテルは、ラヴィヤニ環礁ティラマフシ島にあるル メリディアン モルディブ リゾート&スパである。
 ティラマフシ島にあるというよりは島全体がホテルなので、水上飛行機を降りたら、そのままレセプションに案内されチェックインし、その後チェックアウトまでホテルに軟禁状態になる。つまり、何をするにしてもホテルに課金である。
 モルディブのホテルは、どこでも水上に建てられたヴィラが売りなのだが、今回私が選んだのはラグーン・ヴィラ。浜辺から少しだけ海にせり出したヴィラとなっている。バルコニーは環礁の縁の方を向いていて、近くのきれいな海から、環礁を超えた水平線の向こうまで眺めることができ、抜群のロケーションであった。
 で、このヴィラだが、このホテルの中だけでも、水上ヴィラが島の東西にあり、さらにビーチに沿ったビーチヴィラがある。それぞれ朝日が見えるとか、夕陽が見えるとかビーチが近いとかいろいろな売り文句が書かれていて、どれにするかむちゃくちゃ迷った。結果、ラグーン・ヴィラはとても良い選択ではあったのだが、現地に来て、日本では気にしていなかった大きな選択ポイントがることに気が付いた。
 環礁の縁に島がある場合、片方は外洋に向いていて、片方は環礁の内側を向いていることになる。どちらにも遠浅の浜で泳ぐことができるのだが、当然、潮の流れは外洋側の方が早く、危険とされている。このホテルでも外洋側の海はライフジャケット着用が義務付けられていて、基本的に遊泳するビーチは環礁の内側に設定されている。
 この環礁の内側か外側かという視点は、現地につくまで全くなかった。大海原を眺めたり、夕陽や朝日を眺めるなら環礁の外側も悪くないが、泳いだり、スノーケリングを楽しみたいのであれば、断然内側が有利である。行ってみないとわからないことって、やっぱりあるよねという話。

 この後、ここで4泊過ごしたのだが、まあ天国でしたわ。
 何よりも素晴らしいのは、海。抜群の透明度に加えて、水温がかなり高い。私がいつも言っている温水市民プール(水温30度らしい)より体感温かい。かといって、外が灼熱というわけではなく、カラリとして日陰に入れば汗も噴き出てこない。
 私は普段、海とプールがあれば、たとえ海が目の前でもプールに入る派なのだが、今回ばかりは断然、海。きれいで、磯臭いわけでもない海が目の前にあると無性に入りたくなる。
 滞在中、全て晴れていたこともあり、ともかく一日中、海でちゃぷちゃぷ泳いでいた。

スノーケリング

インストラクターが素潜りで撮ってくれた動画

ラヴィヤニ環礁・ティラマフシ島

 宿泊2日目、せっかく目の前にきれいな海があり、部屋のすぐ近くですら魚が泳いでいるので、環礁のドロップポイントまで行ってスノーケリングをしてみることにした。
 ホテルのアクティビティーとしてインストラクターを付きでスノーケリングをしたのだが、本当に素晴らしいインストラクターだった。
 ホテルから数百メートル先のドロップポイントまでボートで向かい、そこからはインストラクタが浮き輪を引っ張って泳いで行ってくれる。
 さすがこのあたりの海を知り尽くしているだけあって、カラフルな魚だけでなく、エビやカメ、エイまでも見つけてくれた。それだけではなく、私が持っていたGoProを持って、素潜りで魚の姿を間近で撮影してきてくれた。
 迫力満点の映像が取れているので、ぜひ動画を見てほしい。

帰国

1時間以上遅れて、帰りの水上飛行機が到着 上空から見たラヴィヤニ環礁 島は小さいが環礁全体としてはとてつもなく大きい

帰りのフライトも順調

水上飛行機ターミナルに無事到着
ラヴィヤニ環礁・ティラマフシ島

 帰りも、行きと同じように水上飛行機でマレまで帰るのだが、やはり前日の夜にならないと出発時間はわからない。
 で、前日の夜に 朝9時25分出発と知らされ、8時25分にチェックアウトしたのだが、いつまでたっても飛行機がやってこない。理由はわからなかったが、遅延しているらしい。結局、1時間以上、待ちぼうけを食らったのち、無事帰りの水上飛行機に乗ることができた。
 本来はシンガポール便の出発時刻の3時間ほど前に到着するはずだったので、マレの街でも散歩しようと思っていたのだが、そんな時間的余裕はなく、水上飛行機ターミナルを降りると、すぐに送迎車に乗せられ、せかされるようにチェックアウトの列に並ばされた。
 というわけで、バタバタの内にモルディブを出発。のんびりしたリゾートホテルの日々から一気に現実に引き戻された。
 まあ、言うても飛行機に無事乗れたし、その後も定刻通り名古屋に帰ってこれたので、言うことなしですわ。

 いや、モルディブむちゃくちゃいいところでした。
 なによりも海。透き通るブルーの海が気持ち良すぎた。きれいで、水温も温かく、ビーチも過ごしやすい。何よりも、ホテルのプライベートビーチなので、人が少ない。
 リゾートと言えば、ハワイや石垣島などの海を見てきたが、正直レベルが違いすぎる。
 私は海を見ても、正直テンションが上がる方ではなく、「せっかく来たので気持ちだけ」という感じで海に入るタイプなのだが、この海は違った。日焼けさえなければ、一日中海に浮かんでいたい気分だった。
 また行きたいと思う場所は世界中にたくさんあるが、ここは「絶対にまた来る」と思える場所でした。今すぐにでも、もう一度モルディブ行きたいですなぁ。

0 件のコメント: