フィンランドにオーロラを見に行ってきた。
「オーロラ」と簡単に言うものの見るのは結構難しい。
オーロラが出現するかしないかの運もあるのだが、いくらオーロラがガンガンに出ていても雲が出ていたら、当然何も見えない。
事前に「フィンランドにオーロラを見に行った」という人の旅行記をいろいろと見て回ったのだが、どうやら2、3泊では「見れなかった」という声が多数派っぽい。
となると、できる限りオーロラ観測ポイントで長居をしたいところだが、暇と予算に限りがあるので、今回はオーロラの出やすい北極圏に5連泊することで、なんとかオーロラを見てこようと企てた。
ヘルシンキに到着
ヴァンター・ヘルシンキ・ヴァンター国際空港
日本から約10時間、フィンランドの首都ヘルシンキ近郊のヴァンター空港に到着。
入国審査でやたらしつこく問い詰められ、到着フロアにたどり着いた時にはすっかりくたびれ果てていた。
落ち着いたところで、まず行くべきところはもちろんトイレ。
カフェの裏手というなんだかわかりにくいところにあるトイレを見つけ、用を足そうと小便器の前に立ったのだが、何かがおかしい。小便器の設置位置が明らかに高いのだ。
「高い」といっても、「ちょっと」ではなく「かなり」だ。具体的に言えば、身長170cm弱のおいらがつま先立ちしても届かない位置にある。そりゃ欧米人に比べたら背は10センチ以上小さいし、足もかなり短い。とは言え物理的に用を足せない位置に設置されているなんて、いくらなんでもおかしすぎる。
スイッチを押したら高さを調整できるのだろうか? この国では用を足すとき、放物線を描くのであろうか? いやいや明らかな施工ミスだろ? と、しばし考えたがわからず、やむを得ず大便器を使用させてもらうことにした。
トイレから出るとき振り返って気が付いたのだが、よく見たら3つ並んだ小便器の高さが微妙に違う。手前から低、中、高と並んでいる。
そう、おいらは分をわきまえず一番高い便器を使用しようとしていたのだ。うーむ、この国では身の丈に合った便器を選んで用を足す必要があるらしい。いきなり勉強になった。
さて一つ賢くなったところで、空港からはヘルシンキ市街地へ移動する。空港からヘルシンキ市街地の中央駅までは時計回りのP線と反時計周りのI線という2本の電車があり、どちらに乗っても30分ほどで到着する。
ターミナルから長いエスカレータに乗って、空港の駅へ移動。フィンランドの鉄道駅に改札はなくホームで切符を買い、そのまま車両乗り込むことになっている。到着も出発もアナウンスはなく、電車は無言で到着して無言で去って行ってしまう。P線、I線どっちがええんだろう? と迷ったが、とりあえず先にやってきたP線に乗り込むことにした。
車内の乗客はまばらで、大きなスーツケースを持ち込んでも十分座るスペースを確保できた。
空港駅は地下深くにあるのだが、電車はすぐ地上に上がり、あとは終点まで地上を走行していった。改札がなかったので車内検札があるかと思ったが、どうやらそれもないらしい。
夜の早い冬のヘルシンキだけに、すでに空は真っ暗。
北欧の冬ということで寒々しい景色が続いているが、雪はそんなに積もっているわけではなく、日本の北国のような雪に埋もれている感じはない。
ヘルシンキ・ヘルシンキ中央駅
終点・ヘルシンキ中央駅に到着。
大きな屋根に覆われた頭端式の櫛型ホームが並ぶ、いかにもヨーロッパのターミナルといった風情のヘルシンキ中央駅だが、P線、I線はその屋根から外れた西側の増設(?)ホームに停車する。
ホームに降りてまず思ったのは「寒い!」ということ。気温はマイナス数度だったので極端に寒いわけでもないのだが、名古屋からやってきたばかりの身にはえらく堪える。
ヘルシンキ中央駅にも当然改札はないので、スーツケースを引きずりながらホームを歩いていると、いつの間にか駅の外に出てしまった。
まずは駅の近くに予約していたホテルに駆け込み、防寒対策を整えなおしてから街の散策に出かけることにする。
クリスマス・イヴのヘルシンキへ
ヘルシンキ・市街地
で、荷物をホテルにおいて出かけたのはいいのだが、この日はクリスマス・イヴ。クリスマス休暇でほぼ全ての店が閉まっており、開いているのはコンビニぐらい。ファーストフードやスーパーも大半が閉店している。
まあ、人のいない静まり返ったヘルシンキの街なんてなかなか見られるものではないので、レアなものが見られたといえば、見られたのかもしれない。
そんなわけで、軽く周囲を散歩したものの行く当てもなく、寒さに負けてホテルに戻ることにした。晩御飯はホテルのレストランの他に選択肢もなく、少ないメニューの中から、やたらコンソメ味のするカルボナーラを食べることにした。
北欧は物価が高いとは聞いていたが、この日、たいしておいしくないカルボナーラとフィンランドの国民的炭酸オレンジジュースJaffeで20ユーロオーバー。なかなか先が思いやられる。
クリスマスの朝
ヘルシンキ・ヘルシンキ中央駅
さてオーロラの話だが、ヘルシンキでもオーロラが見えることもあるらしいが、せいぜい1年に1度ぐらいのもの。観察するためにはもっと北へ向かわなくてはならない。
スカンジナビア半島の北部、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ロシアにまたがる北極圏の地域をラップランドといい、ここがオーロラ観測のメッカとなっている。
おいらが目指すのは、フィンランドのラップランドにあるサーリセルカという街。普通はヘルシンキで飛行機を乗り換えてイヴァロ空港に向かい、そこからバスで移動するのだが、今回はあえて陸路を使うことにする。
なぜ陸路かといえば、ヘルシンキから途中のロヴァニエミまでの間に通称・サンタクロースエクスプレスと呼ばれる寝台列車が運行されており、それに乗りたかったからである。
その寝台列車の出発は夜の22時。本日、それまでの時間はヘルシンキ市内観光に出かけることにした。
といっても、クリスマス・イブの翌日は当然クリスマス。やはり街は静まり返ったままである。
店の入り口に貼ってある休日の案内を眺めてみたが、どの店も少なくとも24日から26日までは閉店か営業時間を縮小している模様。見渡してみても、街を歩いているのは、観光客らしき人たちしかいない。ヘルシンキの人は、家でじっとしているのだろうか?
となると観光できる場所は限られてしまうが、まあ仕方がない。まずはヘルシンキのシンボル、ヘルシンキ大聖堂に出かけることにする。
ヘルシンキ・ヘルシンキ大聖堂
ヘルシンキ大聖堂はヘルシンキの駅から歩いて10分弱。トラムの行きかうヘルシンキ一の目抜き通り・アレクサンテリンカツ通りをあるいて大聖堂に向かったのだが、やはりカフェの一つも営業していなかった。
気温的には、それなりの防寒具を身に着けていれば、なんとか凌げる寒さ。感覚的には、札幌辺りの気候といったところ。
通りを抜けたると大きな元老院広場があり、その奥にヘルシンキ大聖堂がデデーンと鎮座している。広場の向こうの大聖堂という「いかにもヨーロッパ!」という風景にテンションがあがる。(ヨーロッパに来たのは今回が初めて!)
ヘルシンキ大聖堂自体も巨大だが、その土台もまたしかりで、大聖堂に至るまでの階段の巨大さにまず圧倒される。
その土台の上に建てられた白い石造りの教会の正面に、やはり巨大な見上げるような柱や扉がある。ただ、この扉は開かれておらず、実際の入り口は正面から見て左側にあり、昼間は自由に出入りできるようになっている。
中に入ると正面には宗教画、柱や梁に様々な細かい装飾が彫りこまれている。まあ正直あまり詳しくないので何が描かれているのかはわからないが、ヘルシンキを象徴する教会だけはあるように思えた。
ヘルシンキでランチタイム
ヘルシンキ・ヘルシンキ大学駅
ヘルシンキ大聖堂を見たところで、一旦地下鉄でヘルシンキ中央駅へ戻る。
この後、トラムで街をウロウロするつもりなので、市内交通共通の一日乗車券を購入する。この乗車券の使い方だが、ただ買っただけではダメで地下鉄やフェリーなら入り口、近郊列車なら車内のリーダーにかざしてアクティベートしなくてはならない。基本、地下鉄もトラムも改札がないので誰もチェックしないのだが、たまに回ってくる検札に見つかると80ユーロ徴収されるらしい。
地下鉄も空港からの電車と同じように特に発車の合図もなく、到着後すぐに出発してしまう。この電車に乗ってよいのだろうかと確認なんぞしようものなら問答無用で置いて行かれるので、電車が来る前に十分に確認しておく必要がある。
ヘルシンキ・ヘルシンキ中央駅
ヘルシンキ中央駅に戻って昼食とする。街中はショッピングモールもレストランも全てお休みだが、さすがに駅の中の店は営業していた。
そこで、駅の中にあったフィンランドで人気のハンバーガーチェーンHesburgerとコーヒーチェーンRobert's Coffeeでランチを調達することにした。
で、まあ、結論としては僕はどっちもダメでした。
Hesburgerは、なんというか昔のスーパーのフードコートにあった名も知れぬハンバーガー屋さんのような肉感のないパティがいただけない。Robert'sのコーヒーは雑味が多いというかはっきりしない味で今一つ。
ただコーヒーに関して言うと、この後、フィンランドのどこで飲んでも似た系統の味がした。おそらくはこれがフィンランド的なスタンダードな味で、段々飲み慣れてくるとともに、おいしく思えるようになってきた。
世界遺産・スオメリンナ島
ヘルシンキ・マーケット広場
腹ごしらえを終えたところで市内観光を再開。と言うか、冬至直後のこの時期、正午を過ぎればあと数時間で日没。のんびりしている時間はない。
行くあてもなかったので、トラムに乗ってヘルシンキの港近くのマーケット広場に行ってみる。
夏場は港の広場に青空マーケットが並び、冬でもオールドマッケートホールという室内市場があり賑わっているらしいのだが、本日は当然休業。
なんか面白いものはないかと歩いていると、どうやら多くの観光客がフェリー乗り場に足を運んでいるっぽい。人の流れについていくと、そこはスオメリンナ島行きのフェリー乗り場があった。慌てて観光ガイドを見てみると、スオメリンナ島とは世界遺産にも指定されているヘルシンキの海軍の要塞跡の島なのだそうな。
フェリーの乗り場には出発時間が表示されているが、概ね一時間に数本のフェリーが島と往復しているらしい。出発時間まで10分ということで、ともかくフェリーに乗り込んで出発時間を待つとした。電車と同じく定刻になると静かに船は出発し、10分ほどでスオメリンナ島に到着した。
ヘルシンキ・スオメリンナ島
島に着いたら、もはや夕方の気配が漂ってきた。暗くなる前にヘルシンキに帰ろうと思うと、次の船には乗り込みたい。となると滞在時間は40分ほど。
時間内で見られる範囲を見て回ろうと、やや駆け足で回ったので、何が何だかはよくわからなかったのだが、まあ、城壁と軍の官舎らしき建物、そして教会は見た。
なんか和歌山の友が島に似てるなぁという身も蓋もない感想を抱きつつ、そそくさとフェリーでヘルシンキに戻っていく。
もうちょっと時間があるときに来るべき場所でしたな。
冬のヘルシンキの昼は短い
ヘルシンキ・Kappeli
マーケット広場から街の中心部の方向へエスプラナーディー公園という細長い公園が伸びている。
公園を歩いて駅の方向に戻ろうと思ったのだが、公園の中におしゃれなガラス張りのお店を発見した。クリスマス休暇の今日も営業しているらしい。
ちょうど喉も乾いていたので、コーヒーでも飲もうと中に入る。
入り口から見て、右側がレストランで、左側がカフェとなっている。普段からなのか他に空いているお店がないからなのかはわからないが、右側のレストランは長蛇の列となっている。
一方、カフェは比較的空いていて、シナモンロールとコーヒーをカウンターで注文して、席を陣取った。改めてみてみると、なんだか年季の入った風情のある建物である。
調べてみると、ここは1867年に創業した歴史あるKappeliというカフェなのだそうな。かのシベリウスも常連だったと書かれているのだが、シベリウスが何者なのかおいらにはわかない。無念極まりない。
ヘルシンキ・エスプラナーディー公園
すっかり日が沈んでしまったので気分は夜なのだが、実は時刻はまだ17時。列車の出発時間までまだ5時間もある。
とは言え寒いし、どこも行くあてもない。途方に暮れたおいらが出した結論は、とりあえず「トラムに乗って時間をつぶそう」である。
フィンランドのトラムは1から10までのライン番号が付与されていて、地下鉄1路線と合わせてヘルシンキ中心街を隈なく結んでいる。
とりあえず町の中心から反時計回りで北に向かう3号線に乗る。市の中心でさえクリスマス休暇で真っ暗なので、少し離れたオフィス街や住宅街は当然漆黒。誰も歩いていない。
終点近くの駅で降り、今度は南に向かう10号線、さらには長距離フェリーターミナルに向かう6T号線に乗り換える。
クリスマスのせいなのか、単に時間の問題なのかフェリーターミナルの入り口も閉鎖されており、入り口で途方に暮れているフェリーの乗客? を尻目に、今度は7号線で北東方向に向かった。
と、さすがにトラムにも飽きてきたので、 駅でトラムから地下鉄に乗り換えて、ヘルシンキ中央駅に戻ってくることにした。
結構時間をつぶしたつもりだが、それでも出発まであと3時間。
営業している数少ないカフェで夕ご飯を食べ、コーヒーを飲みながらサンタクロースエクスプレスの出発を待つことにする。
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