2015-10-20

東京湾彷徨記

 東京から伊豆諸島への生活・観光の足として、東海汽船さんが、東京港から定期船を運航している。
 基本これらの航路は、東京の竹芝フェリーターミナルから各島を結んでいるのだが、夏場を除く土日には、久里浜と横浜にも一部の船が停泊する。
 東京湾には、以前国道16号線の旅のときに乗船した東京湾口の房総半島の金谷港と三浦半島の久里浜港を結んでいる東京湾フェリーも就航している。時刻表を確認したところ、これらを合わせると、金谷→久里浜→東京→横浜という東京湾をふらふらと彷徨う無意味な船旅ができることが判明。
 手段が目的となる旅はこのブログの十八番ということで、まずは、スタート地点の金谷港へ出発。

(上)浜金谷駅
(下)金谷港フェリーターミナル (左上)金谷港出港
(右上)久里浜港でセイリング・ドリル中の日本丸
(下)すれ違った反対方向の東京湾フェリー・かなや丸 東京湾フェリー・しらはま丸
富津・浜金谷駅

 千葉駅から普通電車で1時間半弱、内房線、そして千葉県西端の駅・浜金谷駅が、金谷港の最寄駅である。簡易Suicaタッチ機の置いてあるローカル駅だが、さすが東京近郊区間、ホームがやたらと長い。
 駅を降りて、海に向かって5分ほど歩くと金谷港のフェリーターミナルに到着する。

富津・金谷フェリーターミナル

 お土産屋やレストランのあるターミナルで、乗船券を購入。運賃は片道720円、久里浜までは40分の船旅である。
 東京湾アクアラインに客を取られて、けっこう苦しいと思うのだが、頑張って1時間に1本のダイヤを保っている。
 出航10分ほど前から乗船を開始するが、乗客は30~40人といったところか?
 14時20分定刻通り出港。
 久里浜までの距離は直線で7キロほど、港からすでに対岸の三浦半島は見えている。航路はほぼ直線なので、正面を見ていると、じわりじわりと三浦半島の姿が大きくなっていく。

 出発して20分ごろ、ちょうど中間地点で、久里浜から金谷へ向かうもう1隻のフェリーとすれ違う。のんびり航行しているように見えるが、すれ違う時は一瞬である。
 久里浜の港が見えてくる頃、船長よりアナウンスがあり、本日、久里浜港に帆船の日本丸が寄港していて、セイル・ドリルという、帆を張る訓練をしているとのこと。デッキに上がって、久里浜港を見てみると確かに、白い大きな帆船が帆を広げている。
 近づくにつれシルエットがはっきりしてくるのだが、36枚の白い帆を棚引かせている姿は実に美しい。しかも、運よく帆を広げるタイミングにあたったらしく、どんどん帆が広がっていく。幸先よくツキに恵まれ、いい旅になりそうである。
 

(上)久里浜港の受付カウンターと待合室(?)
(下)ジェットフォイル! セフンアイランド虹
Boeing929 - Jetfoil ジェットフォイルの船窓から
横須賀・久里浜港

 久里浜港から東京港へは、伊豆大島から東京へ向かう東海汽船のジェットフォイルに乗り込むことになる。ジェットフォイルとは、種子島航路釜山航路に引き続いて、当ブログ3度目の登場となる ボーイング社製の水中翼船。水中に翼があり、高速走行時は船体を揚力で持ち上げて走行する高速船であり、おいらの大好物である。要は、この旅の目的は、このジェットフォイルに乗りたかったということである。
 久里浜の出航まで45分、日本丸を見学する前に予約済みのチケットを引き換えておこうと、フェリーターミナルに向かったのだが、窓口がどこなのかわからない。フェリーターミナルは東京湾フェリーのターミナルで、東海汽船の文字は見当たらない。
 かといって、東海汽船のターミナルがあるわけでもなさそうなので、ターミナルをうろうろしていたら、入り口近くにパーティションで区切られた物置スペースを発見。そのパーティションに東海汽船のポスターが貼ってあってので、出航直前になったら臨時のカウンターが開かれるのであろうと安心する。

 だが、出航30分前になってもスタッフが現れる気配がない。不安になって、東京湾フェリーのカウンターの方に、ここでよいのかと聞いてみたら、「え? 乗るんですか??」と、なんだか慌てた様子を見せる。
 どうやら、久里浜の東海汽船のカウンター業務は、東京湾フェリーに委託されているようなのだが、おいらが乗船するという予約情報は、東京湾フェリー側には伝わっていないらしい。
 この航路、久里浜から東京に向かう部分に乗車する乗客は、年に数人もいないらしい。それゆえ、客なんかいるはずがないと踏んでいた東京湾フェリーは全く準備をしてなかったようだ。係員が何人かやってきて、慌てて乗船券を印刷するプリンターが準備される。何度も「ご用件はなんでしたっけ?」と、たらい回しにされながらも、「悪いのはこいつら(東京湾フェリー)ではなく、東海汽船の奴らだ」と自分に言い聞かせ、ニコニコと何度か事情を説明し、何とか乗船券をゲットする。

横須賀・久里浜港

 もうすぐ船が来るので、岸壁で待っていて下さいと言われ、日本丸を眺めながら、所在なしに待つのだが、岸壁は文字通りの岸壁で、どこで待っていればいいのかもよく分からない。当然、乗客はおいらひとりのはずなので、「日本丸を眺める五郎丸のポーズ」とかやってみても、きっと誰も相手にしてくれない。
 しばらくすると、船にタラップを掛けるスタッフが何人が集まってきたので、どうやら正しい場所にいるらしいことがわかる。考えてみたら、ここから乗るのはおいら一人だが、降りる人はそれなりにいるはずである。

 15時45分の出港予定だが、定刻5分ほど前にようやくジェットフォイルが姿を表す。”セブンアイランド虹”と命名された船体は、その名の通り虹色(ちょっと異論をはさみたくなるデザインだが、まあ、やめておこう)に塗装されている。日本に就航しているジェットフォイルはボーイング社製と川崎重工でライセンス生産されてものがあるのだが、こちらは正真正銘のボーイング製のボーイング929。
 久里浜で10名ほどの乗客が降りた後、唯一の乗客であるおいらが乗り込む。指定された席(奇しくも、釜山航路でリバースした因縁の座席と全く同じ位置)に座るやいなや、すぐに船は動き出した。
 久里浜から東京の航路は週末限定で、1日1本しか就航しておらず、料金も4,190円(インターネットで予約すると3,570円)と高額なので、誰も乗らないのは理解できるが、実は鉄道よりも早く東京に行くことができる。久里浜-東京間は総武線快速で1時間半かかるが、ジェットフォイルなら1時間。ジェットフォイルの魅力といえば、高速走行時に船体を傾けて走ったりする浮遊感や揺れの少なさなどがあげられるが、やはり一番は、その速さである。
 窓を見ていると、東京湾を航行する貨物船や漁船を異次元の速さでぐんぐん抜いていく。途中、東京湾アクアラインの海ほたるや帆船型の換気所の横を航行するのだが、あっという間に近づいて、あっという間に通過してしまう。
 しかし、東京湾には、いろいろと面白いものがある。大正期に造成された要塞の第二海堡跡、富津岬の先に立つ奇妙なデザインの明治百年記念展望台、海ほたる、斬新な造形美の東京ゲートブリッジなどなど。
 見飽きない船窓を眺めているうちにレインボーブリッジをくぐって東京港の竹芝客船ターミナルに到着する。

 ところで、ジェトフォイルの船内で、ジェットフォイルの紹介として、東海汽船が保有する4隻のジェットフォイルを東京港で並走させた映像が放映されるのだが、この空撮映像がむちゃくちゃかっこいい。
 撮影する日を教えてくれたら、わざわざ東京まで見に行ったのに...。次回があったら、ぜひ大々的に広報してほしいものです。

竹芝客船ターミナル 東京都観光汽船 お台場ライン 大江戸温泉物語
東京 港・竹芝客船ターミナル

 続いて、最後の船旅として、竹芝から横浜へ大型客船で移動するのだが、出航まで、まだ5時間以上時間がある。
 そこで、巨大な竹芝ターミナルを後にして、歩いて10分、ゆりかもめで一駅の日の出桟橋に向かい、水上バスでお台場に渡って時間を潰すことにする。

東京 港・日の出桟橋

 日の出桟橋からは、東京都観光汽船さんが、都内各所への水上バスや遊覧船を就航させている。今回乗ったのは、対岸のお台場へ向かう”お台場ライン”。17時15分の便。
 わずか20分の船旅だが、レインボーブリッジを潜ったり、デッキから臨海部の夜景を間近で楽しんだりと、見どころはまあまあある。
 お台場側の桟橋は、お台場海浜公園の中で、お台場メディアージュのすぐ真下。
 このあたりで食べたハンバーガーが、恐ろしくまずかったので、恨みつらみを書き連ねたいところだが、まあ、実名は避けておこう。
 とりあえず、昔、昭和の頃、プールとかに設置してあっち自販機のハンバーガーみたいなハンバーガーを食べられる場所がお台場にあるということだけ書いておく。

東京 江東・大江戸温泉物語

 それでもまだまだ時間が有り余っているので、風呂にでも入ろうと、ゆりかもめに乗って大江戸温泉物語に行く。
 大江戸温泉物語は、いわゆるスーパー銭湯の類なのだが、宿泊設備もあり、かなり大規模。
 入場を済ませると、浴衣に着替えて館内の縁日風の飲食施設をぶらついてから、温泉につかることになる。楽しいと言えば楽しいが、2回脱衣することになり、めんどくさいと言えばめんどくさい。
 内装はかなり凝っていて、さながら縁日のテーマパークと言ったところなのだが、なんだか外国人観光客に圧倒的な人気があるようで、ハリウッド映画に出てくるアジアのような無国籍感を楽しむことができる。
 温泉だが、広くて湯船がたくさんあって、混雑時でも快適。値段は張りますが、いい所ですわ。

再び竹芝客船ターミナル (上)東海汽船 大島航路・さるびあ丸
(下)東海汽船 八丈島航路・橘丸 (左上)さらば東京
(右上)羽田空港
(左下)横浜ベイブリッジ
(右下)横浜みなとみらい地区
東京 港・竹芝客船ターミナル

 ゆりかもめで、レインボーブリッジを渡って、再び竹芝客船ターミナルに戻ってくる。ターミナルの周辺と屋上は公園になっていて、昼間は都会のオアシスとして賑わっているのだが、今は、「何しにこんな時間にこんな所をうろついているんだよ!」と言いたくなるカップルが2組ほどいるのみ。
 岸壁には、伊豆諸島に向かって出航する東海汽船の大型船が2隻係留されている。この内、横浜に寄港するのは、伊豆大島、利島、新島、式根島、神津島と巡る大島航路の”さるびあ丸”の方である。(もう一方は、三宅島、御蔵島、八丈島を巡る”橘丸”)
 ターミナルの1階に下りると、かなりの人数が乗船開始を待っていた。伊豆諸島と本州の往来のメインルートであるので、島に帰る人と観光客がこの時間に集まってくるのだ。
 乗船券を発券してもらい、ターミナル内のカフェでコーヒーを飲んでいると、伊豆諸島の式根島出身の歌手・夏一という方が歌を歌っていた。いい声をしているので、是非、いい曲と巡り合ってほしいものである。

東京 港・竹芝客船ターミナル

 出港20分前、いよいよ乗船開始。
 基本は伊豆諸島に向かう夜行便なので、等級に分かれた船室が割り当てられており、各自それぞれの部屋に向かっていく。
 1時間半足らずで船を降りるおいらは、当然2等の椅子席なのだが、椅子も全席指定となっている。5層に分かれた客室の下から2層目が椅子席で、乗客はほとんどいない。
 まあ、椅子に座っていてもしょうがないので、デッキに登り、東京湾から東京の街を眺める。
 ぼちぼち秋も深まってきたので、夜の海は風も強くさすがに肌寒い。

 22時に定刻通り出航し、レインボーブリッジを通過すると、東京タワーなどの東京の夜景がだんだんと小さくなってくる。なんか船で旅立つと、二度と戻って来られない気がしちゃうね。(2時間後には戻ってくるんだけどさ)
 代わりに近づいてくるのが羽田空港で、こんな時間でも飛行機の発着は続いていて、ひときわ眩しく輝いている。
 そこから先は、しばらく工業地帯が続き、コンテナや工場ばがりの景色となる。

横浜港に到着 横浜港大さん橋
横浜・横浜港 沖合

 途中、延々と工業地帯が続くのだが、横浜に近づくにつれ、再び街の明かりが目に入ってくる。
 何と言っても目立つのは、みなとみらいの観覧車とその前の大きな横浜ペイブリッジ。
 ペイブリッジの姿が大きくはっきりと捉えられるようになると、みなとみらい地区の高層ビルの姿も浮かび上がってくるようになる。
 観覧車のネオンは未だ灯っているものの、ビルの明かりは消えかけていて、さすがの横浜の街もぼちぼち眠りにつく時間のようである。

横浜・大さん橋

 横浜ベイブリッジをくぐり、横浜港内に入って10分ほど、定刻から10分ほど遅れて横浜港の大さん橋に到着した。
 時間も時間ということもあるのが、横浜で降りる乗客は、もちろんおいら一人。ただし、横浜から乗船する乗客は数十人いて、乗船の列を作っている。
 下船口がわからず船内で若干迷子になりかけたものの、なんとか到着前に下船口を発見。
 乗船客を待たせて、一人さっそうとタラップを降り、横浜の地を踏んだところで、東京湾を彷徨う旅も無事終了。

 下船したのはいいが、ターミナルはとっくに閉鎖しているらしく、人気のない真っ暗なターミナルを、係員に誘導されながら出口まで連行されることになる。やはり、基本、横浜で降りる乗客は想定されていないらしい。
 ところで、到着した大さん橋だが、横浜のランドマークにもなっている巨大な桟橋と言うより、正しくは巨大な岸壁兼フェリーターミナルである。イギリスの著名な建築家が設計したとかで、結構奇抜なデザインになっている。
 ターミナルは閉鎖されているが、屋上の公園は24時間解放されているため、日付が変わりかけている時間だが、まだまだ客足は絶えていない。
 おいらもゆっくり見物したいのだが、今日中に東京に戻りたいため、終電が間近に迫っている。急いで、最寄りのみなとみらい線の日本大通り駅を目指すとする。

 なんだが、東海汽船と東京湾フェリーにとっては迷惑な客だったみたいだが、楽しい海上の一日を過ごさせてもらった。
 ところで、最後に乗った大型船、逆方向の横浜→東京間でも乗船することができる。こちらは横浜18時10分発、東京19時45分着という常識的な時間の運行となっており、ナイトクルーズ的に利用することができる。運賃はインターネットで予約すれはわずか1,250円。なかなかおいしいデート・プランだと思うのだが、どうだろうか?

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