2015-10-12

関東非鉄輪鉄道十二番勝負(前編)

 「電車」とか「鉄道」と言うと、2本のレールの上を鉄製の車輪が走るアレを想像する。
 だが、世の中にはゴムタイヤの鉄道やモノレールもある。そんな非鉄輪鉄道が関東には12路線走っている。
 ということで、2日に分けて全制覇してみた。

日暮里 → 見沼代親水公園
(東京都交通局 日暮里・舎人ライナー 9.7km) 終点の駅名の由来・見沼代親水公園
荒川・日暮里・舎人ライナー 日暮里駅

 手始めは、東京都区部の鉄道空白地帯に伸びる都営の日暮里舎人ライナーから。
 去年の東京フリーきっぷ 444.3km 完全制覇のときにも乗っているが、あのときは夜だってので、車窓は闇の中だった。で、改めてみたら、昼間に見てみたら、夜乗っていた時に見えた闇の正体が、舎人公園と荒川だとわかる。
 車両としては、ゴムタイヤで自動走行するAGTと言われるタイプで、ポートライナーやゆりかもめと同じタイプ。これと言って特徴がないんだよね。

足立・見沼代親水公園

 ところで、前回乗車とた時に気になっていたのが終点の駅名になっている見沼代親水公園。駅名になるぐらいの公園なのに、全く聞いたことがない。
 一体、どんな公園なんだろうって見に行ったのだが、やたらしょぼい川に沿うように、作られたえらく細長い公園。かなり、拍子抜けしたっていうか、他に駅名にすべき地名とか、ランドマークってなかったんかね?

上野動物園西園 → 上野動物園東園
(東京都交通局 上野懸垂線 0.3km) 上野のパンダ・リーリーさんも拝んどきました
台東・上野動物園モノレール上野動物園西園駅

 続いては、現存する日本最古のモノレール・上野動物園モノレール。上野動物園の中を走っているアレである。
 動物園の遊戯施設のふりをしているが、微妙に敷地外を走っているため、東京都交通局が鉄道事業として運行している。
 レールにぶら下がって走る懸垂式の乗り物だが、千葉や湘南のモノレールとは異なった、ここにしかない独自形式のモノレールである。
 千葉や湘南のモノレールは、サフェージュ式と呼ばれ、カーテンレールのようにレールの真ん中からぶら下がるタイプなのだが、上野はナマケモノのように両手でレールを掴むような形でぶら下がっている。その分揺れないので、乗り心地はかなりよい。
 ただ、動物園の端から端を結んでいるわけではなく、園外の道路をまたぐほんの300メートルを結んでいるだけなので、園内の移動手段としては「歩いたほうが早い」という位置づけ。やはり乗って楽しむ遊戯施設のポジションだ。
 距離が短いせいなのか、必要性がないからなのか、なんとものんびりと走るのだが、それでもあっという間に終点についてしまう。もうちょっと乗っていたいんだけどね。

新橋 → 豊洲
(ゆりかもめ 東京臨海新交通臨海線 14.8km)
港・ゆりかもめ 新橋駅

 動物園でパンダをちら見してから、今年で来たばかりの上野東京ラインに乗って新橋に移動する。
 新橋からは、ご存じ、ゆりかもめに乗車する。ルートの見どころは、何と言ってもレインボーブリッジ。新橋側から乗車すると、レインボーブリッジを通る前に、大きなループ線を通って一気に高度を上げていく。ただ残念なのがゆりかもめの線路はレインボー・ブリッジの中央に敷設されていて、橋上から東京湾を眺めることはできない。
 ちなみに、レインボー・ブリッジから形式を眺めるなら、橋の両岸に整備されている遊歩道がベスト。特に、夜景はおすすめ。

 なお、ゆりかもめも、日暮里・舎人ライナーと同じくAGT。レインボーブリッジのループ線を上りきるぐらいなので、坂には強いのだが、いかんせん遅い。ルートのせいもあるのだが、お台場のあたりで、ぐるぐるといつまでも景色が変わらないときは、永久ループにはまったのではないかと錯覚する。

リゾートゲートウェイ・ステーション
→ リゾートゲートウェイ・ステーション
(舞浜リゾートライン ディズニーリゾートライン 5.0km) 駅の外観からして、ファンタジー
浦安・ディズニーリゾートライン リゾートゲートウェイ・ステーション

 ゆりかもめで終点・豊洲まで来てたので、次は、位置的に、ネズミの国のあいつに乗らなくてはならない。
 おっさん一人で乗りに行くには敷居が高すぎるのだが、逃げるわけにはいかないので、舞浜へと向かう。
 ディズニーリゾートラインは、東京ディズニー・リゾートをグルグル回るモノレールで、テーマパークの外を走っているので、国土交通省に認可を取った立派な鉄道事業。交通系ICカードも使えるし、定期券も作れるらしい。
 システムとしては、日本跨座式と呼ばれるモノレールで、多摩や大阪にあるやつと同形式。
 東京モノレールのような古典的なモノレールは、社内に走行系の部品の配置スペースが食い込み、社内をフラットにできない。そこで、車両を全体に縦長にし、車内の床面を上げることで、フラットな空間を実現しているのだが、その分、重心が高そうな不安定な外観になってしまう。あと、何よりもホームからレールの下のまでの高さが高くなり、転落時はそれだけで死んでしまいかねない高さになってしまう。(故に、ホームドアは必須)

 さて、舞浜駅はホームからして、乗客のテンションが他とは違う。
 そんな奴らをしり目に、目の前のディズニーランドには目もくれず、モノレールの乗り場に向かう。
 だが、そのモノレール乗り場も完全なテーマパーク仕様で、外観はファンタジーで、乗り場は広々としていている。
 とはいえ、所詮は駅、自動改札も普通の奴だし、駅のホームだって他と変わりゃしない。と、半ば自分に言い聞かせるようにホームで待つのだが、やってくるのは窓枠がミッキーの形をしたモノレール。座席の配置も、見たことの内容な、曲線上に配置されたロングシート。まあ、金がかかってますわ。
 線路は単線で、列車は反時計回りに回り続ける。駅は全部で4つで、一周13分少々。ランドを見て、ホテルを見て、シーを見たら、元の駅・リゾートゲートウェイ・ステーション(名前なげーよ)に戻ってくる。
 なんだが、周囲のテンションにがっつりMPを削られ、テンションだだ下がりになって舞浜駅を後にする。

ユーカリが丘 → ユーカリが丘
(山万 ユーカリが丘線 4.1km) ”女子大”というジューシーな名前の駅がある 女子大という駅の前にあったのは、女子大の研修施設のみ
佐倉・ユーカリが丘線 ユーカリが丘駅

 今回の12路線のうち、一番興味があったのがこの路線。
 関東の路線図を見ていると、京成線から寄生虫のようにちょこっと路線が伸びていて、”山万ユーカリが丘線”という、およそ鉄道路線名とは思えない名称が記されている。
 この路線は京成本線のユーカリが丘駅周辺を宅地開発したデベロッパーが宅地の利便性を高めるために、自ら運行している鉄道なのだ。つまり山万とは、この不動産デベロッパーの名称なのである。

 京成のユーカリが丘駅に到着。車内では特に乗り換えのアナウンスはないが、京成の駅のすぐ横に山万ユーカリが丘駅はちゃんと実在している。
 予想していたよりはしっかりとした駅だったが、券売機や改札機は相当な年代物で当然ICカードには対応していない。切符を買ってホームに登ると、こじんまりとした”こあら号”を名乗る電車が待ち構えていた。
 タイヤ走行の新交通システムなのだが、ゆりかもめなどより小型かつ簡素な造りで、有人走行である。VONAと呼ばれるシステムで、かつて、愛知県小牧市に同じ形式のピーチライナーが走っていたが、今となってはここにしかないタイプの鉄道である。
 乗ってみると、どうやら空調がないらしく、窓が開け放たれている。夏場はどうなってしまうのだろうか?

 しばらくすると、3両編成の列車が動き出す。路盤にガタがきているのか、結構揺れる。
 路線図を見ていて気になるのが、ざっくり過ぎるその駅名。「中学校」だの「公園」だの「女子大」だの…。
 ん? 女子大??
 ボヤッキーの「全国の女子大生のみなさん」のセリフで育った世代としては、JKよりも「女子大」の方が、心にぐっと響く。これは、下車せざるを得ない。胸の高まりを抑えきれずに、女子大駅で電車を飛び下りた。

佐倉・女子大駅

 まあ、降りる前から知ってはいたのだが、駅周辺に女子大なんてものはない。
 あるのは和洋女子大学の研修施設だけで、人の出入りで言えば、その隣の小学校の方が確実に多そうである。
 何故「女子大」なる甘美な響きを駅名としたのかは定かではないが、現実とは得てしてそのようなものであるということを、痛感した次第である。

千葉 → 千城台
(千葉都市モノレール 2号線 12.0km) 千葉みなと → 県庁前
(千葉都市モノレール 1号線 3.2km) (上)懸垂式モノレールの未来感!
(下)電車が浮いているので、ホームの段差が低い
千葉・千葉都市モノレール 千葉駅

 続いては、千葉に移動して千葉モノレールへ。
 こいつも一度乗ってみたかった。千葉に行くと道路の上をモノレールが滑空していく。むちゃくちゃかっこいい。20世紀の頃、21世紀になったらこんな乗り物が街中を走りまわっいてると想像したものである。(千葉モノレールができたのは1988年のことなんだけどね)
 千葉のモノレールは東京や大阪のモノレールと違って懸垂式。巨大なカーテンレールのようなレールに車体がはめ込まれていて、地上から車体の底面を直接見上げることになる。
 カーブを曲がるときは、車体を左右に振りながら曲がるのでスピード感も普通の鉄道のそれとは全然違う。
 千葉駅のホームに到着すると、レールにぶら下がったモノレールが待ち構えている。床面に浮いているので、ホームの高さがものすごく低く、階段数段分しかない。
 乗り込んで出発を待つこと数分。扉が閉まり、モノレールが静かに動き出した。

 駅を出て、まず期待以上の浮遊感に驚かされる。乗り物というより、アトラクションである。ビルの隙間を縫って、路上の自動車を上から追い抜いて行く様はハリウッド映画の1シーンのよう。
 と、車窓を眺めながらアドレナリン放出し放題だったのだが、そんなヤツはおいらだけで他の乗客にとってみたら、ただの日常、モノレールよりもスマホの画面に夢中である。まあ、それゃそうだ…。
 「スゲー!スゲー!」と興奮していたのだが、ふと、あることに気が付いた。このモノレール、カーブの度に車体が横に振られるので、油断していると結構酔う。乗り物酔いに極端に弱いおいらにとっては、本なんか読もうものなら、確実に吐ける。
 う~ん、カッコよさと実用性ってのは、得てして一致しないものなのね…。

 ところで、この千葉モノレールは、今回の12の非鉄輪鉄道で唯一、1号線と2号線の2路線がある。
 1号線と2号線は、千葉駅で分岐するのだが、どちらの路線も1号線の千葉みなと方面に直通していて、千葉みなとから交互に出発する運用になっている。
 千葉から2号線の終点千城台へ、折り返し千葉みなと行きに乗って、今度は1号線の終点県庁前へ。
 県庁前へ着いた時には、すっかり日没。

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