香港MTR全線1日制覇以来の香港である。
コロナ禍を挟んでこの7年間、香港の交通事情にいろいろと変化があった。
まずは、2018年港珠澳大橋の開通である。全長50キロ弱のとんでもない長さの橋によって、香港とマカオ、さらにはその隣の中国本土珠海市と道路でつながった。香港からマカオまで、船ではなくバスで移動できるようになったのだ。
同じ年、中国の高速鉄道が香港まで直接乗り入れた。これにより、昨年、長年広州と香港を結んでいた広九直通列車が廃止された。
さらには、2022年、広九直通列車と線路を共用していた香港MTRの東鉄線が海底トンネルを通って香港島まで延伸した。
そして、全く関係ないのだが、昨年香港オーシャンパークに双子のパンダが生まれた。これはぜひ、まだ小さいうちに見ておきたい。
ということで、香港を含む珠江デルタの交通網(とパンダ)を確認しにいくため、香港に向かった。
オーシャンパーク

(右上) 山頂エリアへはロープウェイやケーブルカーで移動
(左下) やたらサービス精神旺盛なセイウチがいた
(右下) サメ専用の水族館もある
ペンギンエリアには、オウサマ、ジェンツー、イワトビの3種がいる

オーシャンパークの6匹のパンダ
香港南区・オーシャンパーク
香港の老舗テーマパーク・オーシャンパーク。動物園と水族館、遊園地の複合施設で、1977年の開園とかなりの歴史がある。大きな山が敷地となっていて、入り口の麓エリアと山頂のエリアに施設が分散しており、両エリアをケーブルカーとロープウェイが結んでいる。
オーシャンパーク内にパンダが6匹飼育されているのだが、そのうち2匹は去年生まれたばかりの双子で、今年に入ってから公開されるようになった。パンダはあっという間に大きくなって笹を食うばかりになってしまうので、今のうちに見に行っておきたかった。
パンダは園内の入り口に比較的近い場所、2か所に分かれて公開されている。最近、中国から贈られた安安と可可のペアは、Hongkong Jockey Club Sichuan Treasures という場所にいて、残りの双子を含む4匹は Giant Pand Adventure という場所にいる。
Hongkong Jockey Club Sichuan Treasures の方は、10分ほど並べばパンダを見学できるのだが、双子のいる Giant Pand Adventure は大人気で、整理券が必要。入場後すぐに整理券を取りに行ったのだが、入場できるのは3時間以上先とのこと。なお、整理券が無くても並べば見ることができるそうなので、もし整理券が取れなくても整理券無しの列に並べばいいらしい。(当然、その分時間はかかる)
となると、3時間以上パーク内で時間を潰さないといけないので、Hongkong Jockey Club Sichuan Treasures でパンダを見学したあと、ケーブルカーに乗って山の上に登った。
ケーブルカー降り場の近くには、ペンギンのエリアがある。オウサマペンギン、ジェンツーペンギン、イワトビペンギンと比較的寒い地域のペンギンが飼われているのでむっちゃ寒い。ペンギンのところだけ冷やせばいいものを、見学エリアと完全に仕切られてはおらず、人間がペンギンの環境に合わせる仕様となっている。まあ、オウサマがいらっしゃるのであれば仕方がない。
ここもペンギンが近くで見られてとても楽しいのだが、この施設のすぐ隣にレストランがあり、そこから食事をしながらペンギンを眺めることができる。ちょうど昼飯時だったので、特等席でペンギンを見ながら昼食を食べた。
その後は、イルカショーを見たり、サメ専門の水族館を見たり、ロープウェイで麓に戻り、ナマケモノを見たりしているうちに、整理券の時間がやってきた。いよいよ双子のパンダの見学である。
整理券の時刻に Giant Pand Adventure に戻ると、すぐに中に入れてもらえた。双子パンダ(まだ名前がついていない)とその母親・盈盈はグループ単位で見学することになり、入れ替え制となっている。一つのグループの見学時間は3分。時間が過ぎると無情にもカーテンが閉められ退場となる。
並び始めて3グループ目で私の番が回ってきた。位置取り的に先頭に陣取ることが出来なかったので、パンダがいる右端のエリアを確保した。
カーテンが開くと目の前で盈盈が一心不乱に笹を食べている。その後ろでは双子パンダがなにやらじゃれあっている。じゃれあっているのだとは思うのだが、かなり激しい殴り合いをしており、私の心の中の古舘伊知郎が実況し始めるレベルの争いを繰り広げていた。しばらくして、母親が双子の方に向かったので、見るに見かねたのかと思いきや、ただ、隣に座っただけだった。
ってところで、お時間。その後の親子の様子はカーテンの向こうでうかがい知れず。
事前にライブカメラで3匹の様子を確認していた時はほとんど動かなかったので、動く3匹を見られてラッキーであった。
親子パンダの横には、双子のお父さんの楽楽の居場所があるのだが、かなり遠くの室内から顔が見える程度だった。とはいえ、全6匹の姿を確認できたので大満足である。
結局、半日ほどオーシャンパークで過ごすことになった。パンダを待っている間、施設をうろうろした形だが、かなり楽しめた。なんなら香港ディズニーランドよりも見どころが多いかもしれない。
正直、「廃れた古いテーマパーク」というイメージがあったので、良い意味で期待を裏切られた。
蓮香樓
中環・蓮香樓
オーシャンパーク見学の後は、飲茶を食べて、この日の観光は終了。
中環の飲茶の名店、蓮香樓で飲茶を食べる。ワゴンから飲茶を取り、最後に食べた分だけ会計する香港スタイル。
飲茶の種類が少なく、大好きなゴマ団子がなかった点が微妙ではあったけど、味は抜群ですな。
港珠澳大橋
上環・皇后街
翌日、いよいよ陸路でマカオに向かう。
港珠澳大橋ができるまでは、香港からマカオへの移動は高速船一択で、多数のジェットフォイルが就航していた。橋が出来た現在でも船は健在で、なんならマカオのカジノ行きのメインルートは今でも船っぽい。
香港市内からマカオ市内に直行するツアーバスも運行されているのだが、今回は、あえて路線バスで行く。
香港空港のすぐ隣に、港珠澳大橋(HZMB)のイミグレーションがあり、橋を渡る前にここで出国手続きを行なう。市内から空港へ向かうバスは多数出ているのだが、それらのいくつかの路線は空港のターミナルの後、港珠澳大橋に向かう。今回は、香港島のホテルに泊まっていたので、上環ちかくの皇后街バス停から、A11系統で港珠澳大橋に向かう。
空港のターミナルに着くと2階建てのバスから大量の乗客が下りたのだが、マカオに行く人も少なくはないようで、私を含めて10名以上の乗客がバスを降りずに港珠澳大橋へ向かった。
空港をぐっと回って、しばらく走ると大きな建物が見えてくる。港珠澳大橋のイミグレーション・香港口岸である。周囲の道路はまだ整備中らしく、工事が続いている。
ランタオ島・港珠澳大橋香港口岸
皇后街から1時間弱で港珠澳大橋の香港口岸に到着。口岸とは港を表す中国語であるが、転じて香港、マカオ、中国の間の出入境審査場を指すことが多い。
香港口岸の建物は屋根が高く、空港のターミナルのような雰囲気。次々に到着する路線バスと団体旅行の乗客が次々と出境ゲートに歩いていく。出境手続きはあっという間に終わる。
団体旅行客は手続き後それぞれのバスに戻るのだが、私のような路線バス組はシャトルバスに乗ってマカオ側のイミグレーションに向かう。なお、港珠澳大橋は対岸で分岐していて、マカオ以外に中国本土の珠海市に直接向かうこともできるので、珠海市行きのバスも発着している。
バスの料金は65HKD、自販機ではクレジットカードを使うことができなかったので、有人の窓口でチケットを購入した。外に出ると目の前がバスターミナルになっていて、マカオ行きのシャトルバスの列に並び順番を待つ。バスは次々と出発するので、5分待たずにバスに乗り込むことができた。
首尾よく先頭座席を確保できたので、かぶりつきで橋を見ながら海を渡ることにする。
バスは出発すると、一旦マカオとは正反対の方向、九龍半島に向かって走り出す。何か乗り間違えたのではないかと一瞬焦ったが、どうも空港の滑走路を迂回するために遠回りしているようである。
空港ターミナルを横目に、いよいよ海上橋に出る。
いや、もう、わけわからん景色。道路の両側が海。天気が悪いこともあって、海しか見えない。どうやってここに高架道路を作ることができたのか、はたまたどうしてこんな長大橋を作ろうとしたのか、頭おかしいだろとしか思えない。
全長50キロの道路の真ん中あたりで、一度海底トンネルに入る。船の航行を阻害しないためのトンネルらしい。で、トンネルを出たらまた延々と高架道路。一瞬気を抜くと、普通の高架道路を走っているようにしか思えないが、左右を見たらやはり海の上。
40分ほどでようやく対岸に到着する。最初に珠海市行きの道が分岐し、どん詰まりがマカオのイミグレーションとなる。
マカオLRT
マカオ・澳门口岸
香港ほどではないが、マカオ側の澳门口岸もやはり大きなビルである。
入境審査、税関手続きを終えて、外に出るとやはりバスターミナルとなっていて、マカオ各地へ向かうバスに乗り込むことになる。
カジノの街であるマカオは、各カジノが各口岸に無料の送迎バスを運行しており、観光客は基本的にカジノのバスに乗り込むことになる。今回、カジノに用がない私は、あえて路線バスで移動することにする。
最初の目的地はタイパフェリーターミナルである。ここからマカオの南半分をぐるりと運行する新交通システムのマカオLRTが発着しているので、それに乗るためである。
マカオのバスはまだクレジットカードのタッチ決済に対応していないので、マカオの交通系IC・マカオパスを入手する。ちなみに、マカオパスはデポジット30パタカ込みで130パタカ。これを使うとバス料金が半額 (1乗車3パタカ) になるので、かなり多くの回数乗れる計算だ。というか日帰り観光客には使いきれない金額なので、本当は現金で乗った方が良かったのかもしれない。
バスターミナルから103X系統のバスに乗り込み、タイパフェリーターミナルに向かう。誰も路線バスを利用する人はいないらしく、乗客は二人しかいない。
マカオはマカオ半島と3つの島(タイパ、コタイ、コロアネ。埋め立てで実質一体化している)で構成されている。港珠澳大橋のイミグレーションは半島部分にあり、橋を渡ってタイパへ向かうことになる。
乗車時間は10分あまり、フェリーターミナルの出境ゲートに到着したのだが、時間帯のせいか人っ子一人いない。バスを降りた場所のすぐ隣が、マカオLRTのタイパフェリーターミナル駅で、さっそく新交通システムの試乗に向かうとする。
マカオのパンダ


LTRの車窓からカジノのド派手な建物たちが見える

入場料無料なのに客の姿はまばら
マカオのパンダたち
タイパ島・タイパフェリーターミナル
マカオLRTは、2019年に開業したマカオ唯一の鉄道だ。開業後、順次路線を伸ばしていき、タイパ、コタイをくるっと回って、マカオ半島の西側まで線路を伸ばしている。計画ではマカオ半島側でも半島を半周するルートができる予定で、最終的には現在の路線とつながってマカオ全体を周回できるようになるらしい。また、私が入境した港珠澳大橋の口岸にも路線を伸ばす計画があるそうな。
ホームに到着してしばらくすると、列車が入線してきた。
マカオLRTは、いわゆる新交通システム、日本のゆりかもめやポートライナーとほぼ同じシステムとなっている。見た目も軌道もそっくりなので、当然乗り心地もよく似ている。終始ガタガタと小刻みに揺れるあの感じである。
マカオLRTもまた、乗客の数はしめて5名程度で、営業収支がとっても気になってきたが、コタイのカジノエリアに近づくに連れ、そこそこの乗客が乗ってくるようになった。
全線の乗車時間は30分ほどだが、その間に2つ支線が伸びている。当然ここも制覇するので、まずは手前の支線に乗り換えて、石排湾に向かう。
コロネア・石排湾駅
石排湾駅へ向かう支線はゴルフ場の横を通って、その隣のカート場の横で終着駅、わずか1.6キロである。
カートの爆音を聞きながら、駅を降りて向かうのは石排湾動物園である。動物園に何がいるのかというと、ここにもパンダが2匹いる。香港のオーシャンパークは入場料は約1万円であるが、こちらは無料。やはりカジノマネーの力のなのか、なんと無料でパンダを見ることができるらしい。
が、どういうわけか、この動物園、全く人気が無い。みんなカジノに夢中なのか、貴重なパンダがいるというのに見学者は数えるほどしかおらず、心行くまでパンダのパンダ体型を鑑賞することができる。
とはいえ、パンダをいつまでも見ているわけにはいかないので、先を急ぐことにする。
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