本州は尾道から、四国の今治まで、しまなみ海道と呼ばれる高速道路が繋がっている。本州と四国を結ぶ3つの本州四国連絡ルートのうち、最も西側にあたるルートだ。
このルートは、他の2ルートと違う大きな特徴がある。それは、車ではなく、自転車や徒歩で横断することができるというものだ。
全長約70キロのルートは、サイクリングコースとしても整備されていて、沿線のいたるところに公営のレンタルサイクルステーションが設置されている。しかも、”乗り捨て”可能!
サイクリングってのは、それなりに楽しいのだが、普通は、周回コースにしないと、同じところを往復する羽目になって、行きはいいけど帰りはペダルを回すだけの苦行になりかねない。その点、乗り捨てが可能な、しまなみ海道のサイクリングコースは、気楽に片道のみのサイクリングができる。
っつーわけで、いつものロードバイク(カムラン・ブルーム号)を置き去りにして、いざ、瀬戸内海へ出発。
(左下)今治のゆるキャラ・バリィさん
(右)おいらとこの度の相棒・レンタルママチャリ (左)ぐるぐる回って、橋まで登っていく
(右上)来島海峡大橋の橋桁に登頂完了
(右下)しまなみ海道サイクリングチケット
今治市・サンライズ糸山
前日に、名古屋から電車とバスを乗り継いで、愛媛県今治市に乗り込んだ。
今治市の中心から電車で1駅、直線距離5キロほどの場所に、しまなみ海道の四国側の最初の橋・来島海峡大橋がある。ここから、しまなみ海道沿いに瀬戸内海の島々を巡って、70キロ先の広島県、尾道を目指すわけだ。
その橋の袂にある”サンライズ糸山”という施設が、レンタサイクル・ステーションで、ここで自転車を借りて、1泊2日で本州に渡り、尾道で乗り捨てるのが今回の旅の計画。
レンタサイクルのラインナップは、ママチャリから、クロスバイク、MTBと多種にわたっている。が、せっかくならば、潔く”ママチャリ”で本州を渡ろうと、大きな籠のついたママチャリを選択した。
レンタサイクルは、どれもそこそこの年式なのだが、しっかりと整備されているので、見た目よりも結構走る。ちょっと走ってみて、”行ける!”という手ごたえを感じた。
ところで、今治には、今治のご当地ゆるキャラ、バリィさんってのが、いらっしゃるそうだ。
今治のいたるところでグッズが売られているのだが、”ジワジワくる”っていうのか、”クセになる”っつーのか、だんだん、たまらなくかわいくなってきて、ついにサンライズ今治で、バリィさんの手ぬぐいをご購入。(そういえば、今治の名産品はタオルですな)
そんなわけで、旅の相棒としてバリィさんを首に巻いて、いよいよ、出発。
来島海峡大橋(今治 - 大島)
ところで、しまなみ海道が自転車通行可能といっても、高速道路と同じルートを走ることができるのは、橋の部分だけで、それ以外のルートは一般道を走行する。
となると、一つ大きな問題がある。しまなみ海道の橋は、瀬戸内海の島を結ぶ橋であり、どの橋も桁違いデカい。デカいとなると、海面からの高さも半端なく、例えば、最初の来島海峡大橋で、海面下65メートルほどもある。
この高さをどうやって、登るかといえば、当然、ペダルをひたすら漕ぐ以外に方法はなく、橋を渡るたびに、ひたすら坂を登ることになる。
一応、各橋には自転車専用のスロープが用意されていて、橋の入り口のあたりをグルグルと回りながら、緩やかに登っていけるようになっている。とはいえ、坂が緩いからって、一定の高さを登ることには変わりはなく、緩やかな分、かなりの時間をかけて登らさせられることになる。
ま、結構、しんどいですわ。
で、なんとか橋を登りきれば、そこは海上の空中回廊。瀬戸内海の島々を見下ろす絶景!
それは、いいのだが、この橋の長さは全長4キロ。しまなみ海道70キロの工程の中でも圧倒的な長さを誇る長大橋。
そりゃ最初は、絶景で楽しいが、行けども行けども景色は変わらないし、風は吹いてくるわで、なんだか、しまなみ海道の旅、開始早々に山場の予感...。
ちなみに、しまなみ海道の橋は、全て有料(歩行者は無料)。橋ごとに50~200円の料金を支払い、計500円也。
この通行料の支払いに便利な”しまなみ街道サイクリングチケット”というものが、レンタサイクルステーションにて、500円で販売されている。料金の割引はないのだが、周辺施設の割引クーポンがついてくる。料金所は基本的に無人で、賽銭箱みたいな箱に料金入れる方式となっている。お釣りがでないので、その意味でもチケットを買っておいたほうが便利。
大島
なんとか、橋を渡りきって、長いスロープを下って、最初の島・大島に上陸。
実は、この大島が全行程の中で一番大きい島で、当然走行距離も一番長い。おまけに、島の真ん中にサイクリング・ロードが設定されているので、そこそこの山を2回登らないと行けない。いや、しまなみ海道さん、ピークを最初に持って来すぎですわ...。もうちょっと、ペース配分ってものがさ...。(もっとも、広島側から行けばピークが最後にくるわけで、四国からのスタートを選んだのは、おいらの勝手なのだが....)
大島・村上水軍博物館
なんとか、2つの山(山というほどのものじゃないけどね。ま、ちょっとした丘です。)を超えて、島の反対側に到達。
思ったのが、やっぱりロードバイクってのは、楽なんだなぁという実感。いつも乗っているおいらのロードバイクなら、大した坂じゃなかったんだと思うけど、ママチャリさんでは、なかなか難儀でした。これに、子供を二人とか載せて漕いでいるお母さんは、本当にエラい! たとえ、電動アシストがあったとしても、エラい!
ここで、休憩をかねて、村上水軍博物館を訪れてみた。
村上水軍ってのは、南北朝時代から戦国時代にかけて、この辺りで勢力を誇った海賊なのだそうな。
ま、さしもの村上水軍さんもママチャリで瀬戸内海の島々をめぐることができる日が来るとはおもわなかったでしょうなぁ。
大島・能島水軍レストラン
村上水軍博物館見学後、目の前にある能島水軍レストランさんで、お昼ごはんの天丼をいただく。
真夏の太陽さんが、必要以上に頑張っていらっしゃるので、白米でエネルギーをチャージ。
伯方・大島大橋(大島 - 伯方島)
二つ目の橋、伯方・大島大橋を超えると、伯方の塩で有名な伯方島に上陸。
ここでは、当然のごとく、ソフトクリームも”伯方の塩ソフト”!
例の”お汁粉に塩を混ぜると甘みが増す”的な味がします。(いや、そうとしか形容しがたい味なんだなぁ、これが...。)
大三島大橋(伯方島 - 大三島)
サイクリングロードは、伯方島を掠めるかのようなルートが設定されているので、あっという間に次の橋・大三島大橋に到着。
大三島大橋がしまなみ海道で一番小さな橋で、全長300メートル。300メートルの橋といえば、そこら辺の川にあるようなサイズなんだけど、海面からの高さは、他の橋といっしょで、かなりの高さ。当然、スロープの上で延々とペダルを漕がないと、橋桁にはたどり着けません。
大三島・多々羅温泉
大三島に上陸し、次の橋・多々羅大橋が見えてきたところで、時刻は午後3時に近くなってきた。
さすがに、暑さのピークになってきたので、ここらで、少し温泉につかってリフレッシュ。ぷはぁー...
多々良大橋(大三島 - 生口島)
少し休憩のつもりが、湯上り後に、休憩室でゴロゴロしているうちに、すっかり動くのが嫌になり、時刻は完膚なきまでに夕方。
まぁ、おかげで、多少は涼しくなったので、自転車のペダルも多少は、軽くなったかも。
で、多々羅温泉の直ぐ近く、4番目の橋・多々羅大橋にトライ。
この橋の高さも半端なく、橋に辿り着くまでの苦難の道のりといっったら、そりゃ、もう橋田壽賀子のドラマのようですわ。
で、この橋、斜張橋と呼ばれる形式の橋で、主塔から直接斜めにケーブルを張って橋桁を支えるタイプの吊り橋となっている。
え、よーわからんって? 来島大橋(普通の吊り橋)の写真と多々羅大橋の写真を見比べると...ね?(ダメ??)
まぁ、斜張橋としては世界最大の橋なのだそうだが、そのデカさのせいで、「多々羅鳴き龍」と呼ばれる特殊な現象が起こるのだそうだ。
なんでも、橋の主塔近くのある場所で、大声を出したり、手を叩いたりすると龍の鳴き声のような独特の反響音がするらしい。
で、どうだったかって? いやね....、それがね....
いやさ、その話を、広島に着いた後に訪れたお好み焼き屋のおっさんから聞いたから、知らなくってさぁ。試さなかったんだよね....。かんぜんにスルー、素通りしてしまいました。
生口島・旅館つつ井
さて、多々羅大橋を渡りきった先にあるのは、生口島。ここで広島県に突入となる。
この島の旅館・つつ井さんで、一泊して、本日の行程は終了。
生口島は、柑橘類の栽培が盛んで、つつ井さんの売りも、レモン風呂。レモンの形をした風呂にたっぷりレモンが浮いていて、柑橘の香りで、サイクリングの疲れも、癒されます。と、言いたいところだが、実際は、子だくさんの大家族に弾き出されて、ほとんど入らずじまい...
あと、売店で売っていたジェーラートがうまかった。なんでも、つつ井さんのご近所の瀬戸田ドルチェというところで作られているそうな。おすすめですわ!
生口橋(生口島 - 因島)
二日目は、生口島の旅館・つつ井からスタート。
気合を入れていこう! と言いたいところだが、実は、昨日の段階で全行程の7割方終了していて、残すは20キロ少々。
のんびり漕いでも、昼過ぎには本州に上陸できそう。
生口島も昨日の段階で結構走っているので、1時間もかからず次の因島に渡る生口橋に到着。この橋も、美しい斜張橋ですな。
因島大橋(因島 - 向島)
しななみ街道の島々もラスト2。5番目の島、因島に上陸。
この島が、本日の山場。最初の大島以来久々に、サイクリングロードが島の中央部に設定されていて、上り坂、下り坂の連続。
さらに、本州が近づいてきて人口が多くなってきたせいか、道が狭い上に車が多くなり、サイクリングといった風情ではなく、なんだか通勤でもしている気になってくる。
いや、因島には悪いんだけど、サイクリングを広島側から始めなくてよかった、と、思ったり、思わなかったり...。
そんな因島をなんとか渡りきると、最後の橋・因島大橋が見えてきた。....が、そこには.....、「なんじゃこりゃ?」と言いたくなるような、強烈な坂が待ち受けていた。
しまなみ海道のサイクリングコースは、ママチャリでも走れるような、走り易いコースが設定されていて、これまでの工程で何度か坂があったものの、立ちこぎは、しなくても登れる坂ばかりだった。が、ここは、違う。
橋へのアプローチとなるスロープに入る手前に、どこからどう見ても、立ちこぎ必死な、激坂が、ラスボス風情で待ち構えていた。(あまりの衝撃で、写真を撮り忘れちゃったよ)
へたれサイクリストのおいらとしては、迷わず自転車を降りて歩きたくなるような坂なのだが、ここまで60キロ以上、相棒のママチャリにまたがって走行してきた以上、ここもなんとか、自転車を降りずにに登りきりたい! と、立ちこぎ全開で、スパート!
いや、がんばりましたよ。なんとか、ギリギリ坂を登り切って、橋の入口のスロープに到達。とはいえ、まだ橋の入り口だから、橋桁までまだまだ坂は続いたんだけど、ま、なんとか、休み、休みでスロープも登り切りました。
最後の因島大橋大橋は、上下2階建てになっていて、自転車や歩行者は車道の下にある1階部分を走行することになる。
工事現場のような風景で、なんとなく、景色が寂しいかも。
渡船
因島大橋の向こうは、最後の島、向島。ここまでくると、島とはいえ、結構な街になってきて、コンビニや商店の数もどんどん増えてくる。
ところで、本州に行くまでは、まだ1回海を超えなくてはいけないんだけど、なんで、因島大橋が最後の橋だったかというと、最後の因島-本州間は橋ではなく、船で渡るからだ。
向島と本州の間にも、尾道大橋という橋が架かっているのだが、歩行者・自転車用の走行帯がなく、危ないので、船の利用が推奨されている。
本州側の尾道と向島を結ぶ渡船は、3ルートあり、おいらはそのうちの一つ福本渡船の乗り場へ向かった。(厳密に言えば、向島を彷徨っているうちに、いつの間にか船着場に迷い込んでしまったという感じ。そのくらい、分かりにくいところにある)
船って、どんな船なんだろうと思っていたら、車を10台ほど載せては海峡を行き来する、なんとも見たことがない簡素な船(というより、タグボートに近い感じ)待ち構えていた。
乗り場も、港の一角のどこが桟橋だかわからないような場所で、どうやって、どこから乗るんだろうと、船を覗き込んでいたら、船着場のおばちゃんに
「乗るの? 乗るんなら早く乗って!」と、どやされてしまった。
そんなわけで、ロクに写真も撮れないまま、追い立てられるように自転車ごと乗船。料金は、わずか70円(乗船料60円+自転車10円だったと思う。なにしろ、えらい剣幕でおばちゃんが怒ってるから、いくら払ったかも覚えてまへん)
船に乗ってから、正面をよく見たら、本州・尾道はすぐ目の前で、海峡はちょっと広めの川ぐらいの幅しかない。当然、ものの数分で尾道に到着。
到着後、乗客がすべて降りたら、すぐに尾道で待っていた客を乗せ、渡船は向島に戻っていった。どうも、ダイヤなんてものはなくて、一日中ピストン輸送をしているようだ。
う~ん、何気に、見たことのない類の乗り物ですなぁ。
広島・尾道
尾道に着いてからは、軽く尾道観光をして、新幹線で名古屋に帰ったわけだが、レンタサイクルを返却する道すがら見つけたのが、写真の尾道プリン。
尾道駅近く、駅前の道にあるおやつとやまねこさんで売っている。
おいらは、今流行の”トロトロ系”プリンが大っキライで、今や稀少物の昔ながらのしっかりした固めのプリンには目がないんだよね。
プリンにぶら下がっている、よく醤油が入っている小さな魚型の小瓶には、レモン汁が入っていて、これをかけてから食べるのが尾道プリン流。程良い酸味がプリンの甘さを引き立てます。
しっかし、あの、トロトロ系のプリンってさぁ、どう考えてもプリンの失敗作にしか思えないのっておいらだけかい?
以上が、しまなみ海道ママチャリ横断の旅でございました。
島々を結ぶ海上の橋ってのが、そもそも、珍しいのに、そこを自転車を使って、渡れるという、なんとも魅力的なルートです。おまけに、自分の足で、四国から本州まで渡りきったという得も知れぬ充実感のおまけつき。
70キロという距離なので、脚力がある人なら、3~4時間で走破できて、ママチャリでも1泊すれば、結構余裕で走れます。
景色といい、走りやすさといい、レンタサイクルの充実度といい、ここは、間違いなく日本一のサイクリングロードでしょう!
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