2025-08-28

青春18きっぷ 秋田三セク鉄道制覇 (#3 秋田内陸縦貫鉄道)

 青春18きっぷで秋田の二つの3セク鉄道、由利高原鉄道と秋田内陸縦貫鉄道に乗車する旅。
 2日目で鳥海山の麓を走る由利高原鉄道を制覇し、本日は秋田内陸縦貫鉄道を制覇する。
 秋田から秋田内陸縦貫鉄道の北の起点である鷹ノ巣駅へ向かう。

奥羽本線

秋田駅 Iの字をハートにしていいものかどうかは、世界に問うてみたい 奥羽本線は秋田駅を境に標準軌と狭軌でわかれ、ホームはつながっているが線路は分断されている #14 秋田 07:27発 弘前行 → 鷹ノ巣08:57着
(奥羽本線 86.2km) 秋田からしばらくは田んぼが続く
秋田・秋田市

 本日乗車する予定の秋田内陸縦貫鉄道は、奥羽本線の鷹ノ巣駅から田沢湖線の角館を南北に結ぶ鉄道。まずは秋田から奥羽本線で、鷹ノ巣に向かい、秋田内陸縦貫鉄道で南下することにする。
 早朝、秋田から乗車する列車は「弘前行」の普通列車、いよいよ北国にやってきた感がある。
 奥羽本線は福島から青森を結ぶ歴史ある東北の大動脈路線である。現在では、福島-新庄間が山形新幹線、大曲-秋田間が秋田新幹線との供用区間となっていて標準軌に改軌されている。そのため、秋田駅ではホームの途中に車止めが作られ、南は標準軌、北は狭軌と分断されている。ホーム上も柵で区切られていて、まるで国境線が引かれたかのようにも見える。
 そんな分断ホームの北側に止まっている、東北ではおなじみの701系電車に乗車する。早朝で乗客は10名ばかりに見えるが、4両編成の長大編成。18メートル級2両に詰め込まれるのが当たり前の名鉄民からするうらやましい限りである。

 列車は定刻通り秋田を出発。秋田からしばらくは八郎潟を干拓した田んぼを眺めながら北上。
 その後は米代川の流れに沿って川を遡上し、1時間半ほどで鷹ノ巣に到着した。

鷹巣

(左) JR東日本・鷹ノ巣駅
(右) 秋田内陸縦貫鉄道・鷹巣駅 (左上) 祝日の朝の駅前の商店街
(右上) 一度だけ途中下車ができる「片道寄り道きっぷ」
(下) 北秋田名物 バター餅
北秋田・鷹ノ巣駅

 JRの鷹ノ巣駅の改札を出て、隣の秋田内陸縦貫鉄道の鷹巣駅に向かう。両駅は同じ構内にあるのだが、”ノ”の有無で微妙に駅名が違う。
 国鉄末期、現在の秋田内陸縦貫鉄道は、北の鷹ノ巣側の阿仁合線と南の角館側の角館線で分かれている状態だった。両路線とも特定地方交通線(いわゆる赤字ローカル線)に指定されたものの、地元自治体の出資により第三セクター化して、秋田内陸縦貫鉄道として存続することが決まった。その後、両線の間の未開通区間を開通させ、全長94キロの文字通り秋田県を縦貫する鉄道路線となった。
 今回は秋田内陸縦貫鉄道を鷹巣から角館まで片道だけの乗車する。片道乗車だと一日乗車券では元が取れないので、下車する予定の阿仁合駅までの切符を買おうと思ったのだが、それを伝えると、1回だけ途中下車のできる片道切符「片道寄り道きっぷ」があると駅員さんが教えてくれた。
 鷹巣-角館間の普通運賃は1700円、片道寄り道きっぷはプラス100円で途中下車ができるきっぷとなる。阿仁合で打ち切って2枚のきっぷだと2140円となるので、340円の得したことになる。ナイス、駅員さん。
 次の列車の発車時刻までは約2時間。駅前の商店街をうろうろしてみたのだが、いかんせん休日の朝ということもあり、人の気配はないし、お店ももちろんやっていない。
 唯一の発見が、駅の隣の観光案内所で見つけた北秋田名物のバター餅。バターが練りこまれた餅らしいのだが異常に柔らかい。まさに餅とバターの中間の食感でおいしく、小腹が減っていたのでとても助かった。

秋田内陸縦貫鉄道

#15 鷹巣 10:05発 阿仁合行 → 阿仁合11:05着
(秋田内陸縦貫鉄道 秋田内陸線 33.0km) (上) 沿線随所で見ることのできる田んぼアート
(下) シートをよく見ると秋田犬の柄になっている 阿仁合駅
北秋田・鷹巣駅

 出発10分前に改札が始まったので、改札を通ってホームに向かう。ホームにいたのは阿仁合行きのワンマン気動車、もちろん単行、ザ・ローカル線である。AN-8800形というオリジナルの車両で、オレンジのシートの模様が特徴。シートをよくみると小さな秋田犬がいっぱい描かれていて、かわいい。この柄のオリジナルTシャツを作って売ってほしい。
 沿線には田んぼアートがいくつか作られていて、その旅に速度を落として運転してくれる。田んぼアートは正面から見たときに奥行きがあるように描かれており、正面以外からの角度だと何が書いてあるかわからない時がある。正面に回って正体が分かった時の驚きがとても楽しい。

北秋田・阿仁合駅

 約1時間で終点・阿仁合に到着。秋田内陸縦貫鉄道は基本、途中の阿仁合駅で運行系統が分かれている。乗ってきた列車はそのまま角館行になるそうだが、せっかくなので阿仁合駅で降りて周囲を散策してみることにする。
 とりあえず、お昼も近いので、駅に併設された食堂でご飯を食べる。ジェノベーゼソースのパスタ、なかなか美味しかった。

阿仁合

なぜかクマのはく製が飾ってある内陸線資料館 (左上) 阿仁合は北緯40度らしい
(右上) 阿仁異人館・伝承館
(下) 左が伝承館で右が異人館 間はなぜか地下通路で結ばれている 阿仁合駅すぐ裏手を流れる阿仁川 #16 阿仁合 13:43発 角館行 → 角館15:10着
(秋田内陸縦貫鉄道 秋田内陸線 61.2km) マタギの里の夏に姿を現す かかしコンテスト
北秋田・秋田内陸線資料館

 昼ご飯を終えたところで、駅の散策。まずは駅前の駐車場の横にある秋田内陸線資料館に行く。国鉄時代からの秋田内陸縦貫鉄道の歴史が展示してある施設だが、目玉は、なぜか熊のはく製。マタギが仕留めた熊のはく製が囲炉裏の横に無造作に置かれている。ちょっと怖い。
 肝心の鉄道関係の展示で目を引いたのが、かつて列車の運行制御に使われていたCTC制御盤。これ自体は各種鉄道系の博物館で目にすることがあるのだが、驚いたのは2年前まで現役だったということ。ソフトウェア全盛の時代に、バッキバキにフルスクラッチされた制御盤がつい最近まで使われていたらしい。アナログ制御盤がつい最近まで現役だったことは熱いのだが、使い続けざる得ないというローカル線の厳しい現状も垣間見える。

北秋田・阿仁異人館・伝承館

続いては駅から徒歩5分の阿仁異人館・伝承館に向かう。
 途中、役所の前を通ったのだが、そこに「北緯40度」を示す碑が建っていた。ずいぶん北の方まで来たもんだと思うと同時に、どれだけ北に言っても日本暑いのかよと突っ込みたくなる。この日の阿仁合の気温は30度越えの真夏日。暑い
 かつてこの地は鉱山の街だったらしい。鎌倉時代から戦後まで銅を中心に様々な鉱物が採掘されていた。伝承館はその歴史を伝える資料館となっている。採掘された鉱石や、歴史的な文章などが保存されている。
 そして、その隣には、明治初期に外国のお雇い外国人技師の宿舎として建てられた建物が「異人館」として保存されている。レンガがイギリス式に積まれているレンガの積み方がなんとも雑であるが、それこそが建物がごく初期の洋館であることの証だとも言える。
 異人館の中にも当時の豪奢な調度品などが残されていて、お雇い外国人の厚遇ぶりがうかがえる。歴史的価値からも、ルネッサンス風ゴシック建築の美しさからも一見の価値がある建物である。
 ちなみに、異人館と伝承館は数メートル離れたすぐ隣に隣接しているのだが、移動はクーラーの聞かない灼熱の地下通路を通る必要がある。地上に通路を作ればよいだけの気がするのだが、雪国ならではの雪対策なのかな?
 なお、太っ腹にも両施設は入場無料である。
 駅の裏側に阿仁川という川が流れていて、川沿いに公園があるため、川のそばを通って駅に戻ることにする。が、暑すぎて清涼感ゼロ、マイナスイオンも全く感じられず、ただ遠回りをして駅に戻っただけとなった。無念...。

北秋田・阿仁合駅

 阿仁合を2時間半満喫し、秋田内陸縦貫鉄道の残りの区間を乗車すべく、阿仁合駅に戻ってきた。
 やはり出発10分前に改札が始まり、構内踏切を超えて、角館行きの列車が止まっているホームに向かう。今度の列車は2両編成。クラブツーリズムの団体客がいるらしく、後方の車両は実質貸し切りとなっている。私が乗車した前方の車両も座席はほぼ満席。意外と賑わっている。
 斜め前に座っていた家族連れのお父さんが、しきりと「秋田内陸縦貫鉄道」には「1両編成の列車がある」というこを熱弁していたのだが、全国的に単行の列車は特に珍しくはない。これだから、都会もんは...。
 阿仁合から先もいくつか田んぼアートを見せてくれたのだが、そればかりでは飽きるだろうということなのか、最後に「かかしコンテスト」という変化球を見せてきた。

かかしを並べ人気投票を行うという毎年恒例のイベントらしい。かかしの中に人が紛れているとみせかけて、やはり「かかし」というリアル系のかかしがいくつか紛れているのが楽しい。

角館

角館駅 武家屋敷が連なる「角館武家屋敷通」

武家屋敷 川原田家

(上) 石黒家 このふすまの向こうに住人がいらっしゃるらしい
(左下) 欄間の影が美しい
(右下) 江戸に植えた木が育ち、庭を覆いつくしている
仙北・角館駅

 阿仁合から1時間半、終点・角館に到着した。これにて秋田内陸縦貫鉄道も全線制覇完了である。
 今回の青春18きっぷの旅の目的は、秋田の二つの三セク鉄道に乗車であるので、目的を達した今、ここから先は名古屋への帰路となる。本日はもう一つ列車に乗って、田沢湖線の終点・大曲駅まで移動しておくことにする。
 田沢湖線は秋田新幹線と線路を共有しており、そのせいなのか普通列車がとても少なく、次の列車までは1時間強時間がある。せっかくなので、角館の街を観光することにした。
 観光案内所で観光マップをもらうと、徒歩圏内に武家屋敷があることがわかった。1時間で往復となるとギリギリではあるが、間に合いそう。

 角館には江戸時代の武家屋敷が何軒も残っていて、中でも武家屋敷通りと呼ばれる道の両脇には、今でも何軒もの武家屋敷が並んでいて、江戸時代さながらである。
 武家屋敷のうち何軒かは有料で公開されていているので、今回は河原田家と石黒家を見学させてもらった。どちらもガイドが簡単に屋敷を紹介してくれるのだが、面白かったのはお城に近い位置にあった石黒家。
 なんと現役の住宅で、ふすまの向こうでは主が生活を営んでいるらしい。現在でもちゃんと住まいとして機能していると考えると、俄然お屋敷のリアリティが増してくる。そうはいっても、さすがは武家屋敷。住居としては持て余すであろう広さ、欄間の豪華な透かし彫りや江戸時代から伸び続ける庭の大木、お武家様の権力をまざまざと見せつけられますな。

田沢湖線

#17 角館 16:31発 大曲行 → 大曲16:50着
(田沢湖線 16.8km) (上) 新幹線ホームに到着 隣に秋田新幹線が停車している
(下) 写真のモアレが気になる大曲駅
仙北・角館駅

 武家屋敷に夢中になっている間に、危うく列車に乗り遅れそうになった。駅から武家屋敷までは1キロ以上、1時間で往復するには微妙に遠かった。速足で戻ってなんとか滑り込みセーフ。

大仙・大曲駅

 20分ほどで大曲駅に到着。
 田沢湖線は秋田新幹線と共用区間であるが、大曲のホームは在来線と新幹線で分かれているのだが、ホームの運用の関係か新幹線側のホームに到着した。新幹線用のホームの先には新幹線用の中間改札があるのだが、普通列車の乗客は改札機の横の隙間を通り抜けてくれとアナウンスがある。大曲駅、ゆるくてとてもよい。
 さて、秋田をくるっとほぼ一周するかたちになったところで、本日の移動は終了。駅前のラーメン屋で夕食を食べ、明日に備えるとする。
 明日から2日かけて大曲から名古屋まで帰ることになる。明日は、この旅最大の長丁場、早朝から夜遅くまで、東北から関東の端っこまでひたすら普通列車で移動する。

#4 東北関東南下作戦 に続く (coming soon....)

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