久しぶり、というか16年ぶりに青春18きっぷ使い切りの旅に出る。16年の間に青春18きっぷも様変わりし、購入時に日付を指定、3日あるいは5日連続限定仕様、自動改札機使用可能となっていた。で、購入してみると、かつてのスタンプ欄がなくなり、サイズも普通のきっぷと同じになっていた。なんか特別感がなくなってしまったが、これも時の流れである。
ちなみに、今回の旅の目的は、長年目指している「全国私鉄公営鉄道制覇」の本州最後の砦、秋田にある二つの三セク鉄道の制覇である。二つの三セク鉄道とは、由利高原鉄道と秋田内陸縦貫鉄道である。
この2線に乗車すれば、本州の私鉄公営鉄道は(ほぼ)全制覇となる。
中央本線

(中央本線 79.9km)


(中央本線 94.9km)

(右) 駅のホームでブドウを栽培している

(篠ノ井線 13.3km)
名古屋・名古屋駅
旅の始まりは名古屋駅から。昨年までの青春18きっぷには、有人改札で日付のスタンプを押してもらうという毎日の儀式があったのだが、普通の磁気きっぷとなった今では、自動券売機で購入し、そのまま自動改札に突っ込むだけで終わり。殺風景になったものである。
まずは名古屋から中央線に乗って松本に向かう。長野からさらに北上して、日本海側から秋田に向かう算段である。
本日は、夏休み、3連休、さらには夏の青春18きっぷ期間の初日ではあるのだが、早朝6時の名古屋駅は静かなものである。少し離れた新幹線のホームはいつもの休日の朝より人が多いように見えるが、まだ混雑というほどでもなさそうである。
中央線のホームに止まっていたのはJR東海の315系。中央線はすっかり315系に統一されてしまったので、どの列車も8両固定編成で全席ロングシート。長旅だと転換クロスシートがありがたいけど、まあ贅沢は言えない。
中津川・中津川駅
名古屋駅から1時間半弱。最初の乗り換えは中津川駅。
中津川駅の手前、美乃坂本駅周辺ではリニアの工事が進んでいるのが見えた。このあたりにリニアの岐阜県駅と車両基地が建設されることになっているらしい。名古屋駅周辺もかなり大規模な工事が行われているのだが、いったいリニアはいつになったらできるのやら。
跨線橋を渡り隣のホームに移動して、停車している松本行の313系2両編成に乗り換える。
塩尻・塩尻駅
中津川で乗り換えた列車は松本に行くのだが、塩尻駅で甲府方面からやってくる同じく松本行の普通列車に抜かされる。ただ抜かされるだけならまだしも、45分も停車するという謎ダイヤ。しかたなく、20分後にやってくるJR東の列車に乗り換えることにする。
乗り換えの時間に、塩尻駅名物のものすごく狭い立ち食いそば屋でそばを食べたかったのだが、あいにくの満席。というか座席は2席しかないのだが...。
ホームにあるぶどう園などを見物しつつ、松本行の列車に乗り換える(アゲイン)。
しばらくしてやってきたのは211系6両編成。編成は長くなったが、列車はかなり古くなった。211系は国鉄時代に製造開始され、JR初期にも導入されていた車両。名古屋地区の中央線でも走っていたが、今は絶滅しているので、少し懐かしい気分になる。
松本城
松本市・松本
塩尻から松本までは15分少々。あっという間に到着する。ホームに降りると、「まつもと~、まつもと~、まつもと~」という名物のアナウンスが流れる。最近のホームは駅名標が減ってきていて、旅行中だと正しい駅に降りたのか不安になることが多いので、こういうアナウンスぐらい他の駅でもしてほしい。
ここからさらに北上と行きたいところだが、途中下車して松本城を見学することにする。
松本城は言わずと知れた日本に5つしかない国宝天守閣の一つ。もちろん江戸時代の天守閣が現存している現存十二天守の一つでもある。
松本駅で乗車した市内の周遊バスは、クレカのタッチ決済可能になっていた。海外に行ったとき、交通機関がタッチ決済対応になっているのはむっちゃありがたいので、全国でもっと広がってほしい。
松本・松本城
市役所前でバスを降り、目の前の太鼓門から松本城に入城する。内堀を渡って黒門をくぐると天守閣が見えてくる。屋根の隙間に見える黒い漆の壁がとてもスタイリッシュ。城郭全体の華麗さで言えば姫路城にはかなわないかもしれないが、天守閣そのものの意匠の良さで言えば、断然松本城が日本一の名城だと思う。ともかくカッコいい。
インバウンド景気のせいか、最近は数時間を超える天守閣入場待ちの列ができることがままあるらしいが、ネットで事前に時間指定入場券を購入しておいたので、並ばずにすぐに入場することができた。ただ、気になるのが時刻指定入場券を持っていると申告しただけで、だれも入場券を確認しない。言ったもの勝ちみたいになっているのだが、ええんやろうか?
天守閣入場時は靴を脱いでその靴をビニール袋に入れて持ち歩くスタイル。外から見ると五層の天守だが、内部は6階建て。急な階段を上り下りしないといけないので微妙に靴袋が邪魔になる。
最上階から松本盆地と北アルプスを眺めてから、城を後にする。
松本・旧開智学校
まだ少し時間があったので、松本城近くのもう一つの国宝、旧開智学校校舎を見学する。
旧開智学校は明治時代初期の擬洋風建築の小学校の校舎。明治初期、洋風の要素を取り入れた木造建築が全国で作られたのだが、大半が失われたため、現存する貴重な建物となっている。
洋風といいつつ、どこか中国の仏教寺院のような雰囲気もあり、カラフルな外観と合わせて異世界ファンタジーの建築物のようにも見える。
内装も階段の手すりや照明の意匠にこだわっており、ステングラスがはめ込まれた講堂など、おおよそ小学校とは思えない建物である。
私が今から40年ほど前、小学校低学年の頃に通っていたのは、戦前にできた木造校舎だった。でも、ただ木造というだけで何の変哲もない殺風景な校舎だった(冬場むっちゃ寒かった...)。開智学校と私の小学校の差を考えると、文明開化に沸いた明治初期から富国強兵にいたる間で、何か大事なものが失われてしまったのかもしれない。
篠ノ井線
松本・松本駅
松本から篠ノ井線、信越本線で長野に向かう。
普段名古屋から長野に向かうときは特急・しなので移動するのだが、篠ノ井線には特急は通らない、普通列車だけが通るルートがある。篠ノ井駅の二駅手前、姨捨駅がそれである。
姨捨駅は今どき珍しいスイッチバック駅で、普通列車だけが本線から分岐して駅のホームに入線し、特急などの通過列車はそのまま本線を通過する。勾配に弱い鉄道は、勾配の途中で停車すると再発進ができなくなるため、かつては勾配の途中に駅を設ける際、このような形式が採用されていた。車両の性能アップや線形の改良でこのような駅は減ってきたのだが、姨捨駅は現役バリバリのスイッチバック駅である。
姨捨駅のホームから長野市のある善光寺平が一望できるため、夜景がきれいな駅としても有名。今回は昼間であったがホーム越しに善光寺平を見下ろすことができた。
飯山線
長野・長野駅
長野からは飯山線で新潟へ。飯山線は長野から3駅先の豊野駅が起点。そこまでの区間は「しなの鉄道北しなの線」で、青春18きっぷの範囲外である。なので、長野駅で260円のきっぷを別途購入して乗車した。
飯山線は全線単線、非電化のローカル線。国鉄時代にかろうじて廃線を免れ、現在まで営業が続かれている。
全く乗客がいないかというとそうでもなく、地元の学生が多数利用しているようだ。
長野から終点の越後川口までは3時間。基本的に山の中なので景色があまり変わらないせいか、それとも行き違いのための停車が多いせいか、なんだかとても長く感じた。
田園地帯を抜け、千曲川を超え、トンネルを抜け、読書をしながら乗車を続けると、「越後」とつく駅名が増え始め、長い長い新潟県に入ったようだ。
信越本線

(上越線 22.8km)

(信越本線 63.3km)


長岡・越後川口
3時間の山越え紀行を経て、終点・越後川口に到着。ここで上越線に乗り換える。
関東から新潟に抜ける上越線、いろいろと見どころの多い路線だとは思っているのだが、多分、一度も乗車したことがない。いつか乗り通してみたいですな。
長岡・長岡駅
20分で長岡に到着。長野から豊野で分かれた信越本線(正確には長野-豊野間は、しなの鉄道北しなの線)とここで再び合流する。ここからは信越本線に乗り換えて、本日のゴール新潟を目指す。
さすがは日本海側最大の都市・新潟である。新潟に近づくたびにどんどん乗客が増えてくる。座席が埋まり、立っている乗客が増えたところで、終点の新潟駅に到着。
新潟
新潟・新潟駅
新潟駅は在来線だけで3面5線の堂々たる大ターミナル。この他に上越新幹線のホームもある。
新潟には何度か訪れているのだが、いつも夜について1泊して、翌日早朝に出発というパターン。ろくに街歩きすらできていない。さすがに失礼ではあるので、次こそは新潟をじっくり楽しむ旅で訪れたいものである。(と、毎回思っているが、いまだに実現していない。でも、トキエアが就航して名古屋との直行便もできたので、今度こそ本当に観光に行きたいぞ)。
本日の旅はここで終了。明日は羽越本線を北上し、今回の旅の目的の一つ、由利高原鉄道に乗車する。
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