香港と海を隔てたマカオを結ぶ港珠澳大橋を使って、珠江デルタを一周する旅。
早朝、香港からマカオへバスで移動し、マカオのパンダを見学。
続いて、マカオLRTの残りを乗りつぶしていく。
媽閣廟
マカオ・媽閣駅
パンダを見学後、石排湾支線からマカオLRTの本線に戻る。
マカオLRTにはもう一つ支線があるのだが、そちらは後回しにして、本線の終点・媽閣駅に向かう。媽閣駅は、現時点でマカオ半島側にある唯一の駅。タイパ島の北の端あたりから線路が地下に潜り、そのまま海底をくぐって、地下線のまま終点・媽閣駅に到着する。
マカオ半島には世界遺産が多数あるのだが、これまでバスやタクシーしかアクセス手段がなかった。コタイのカジノから電車でアクセスできるのは、実に便利になった。
マカオ・媽閣廟
媽閣駅は、マカオ半島の西端あたりにある。歩いて5分ほどの場所に世界遺産であるマカオ最古の寺院・媽閣廟がある。
寺院といっても仏教色はそこまで強くなく、道教などが混ざった中華系の寺院である。敷地には4つのお堂があり、階段を登りながらお参りしていくスタイル。入り口で線香を買ったら大量に渡され、訳も分からずそのまま近くの線香立てに大量に置いたのだが、どうも4つのお堂に少しづつお供えするのが正解だったらしい。
手ぶらでは何なので、一番頂上のお堂で再度、やたら太い線香を購入したのだが、なかなか火がつかない。なんかコツがあるのかもしれないが、5分以上悪戦苦闘してなんとか火が付いたので、お供えして山を下りて行った。
媽閣廟から東に歩いていくと数多くの世界遺産があるのだが、時間の関係で見向きもせずに媽閣駅に戻る。
珠海へ
珠海・横琴口岸
媽閣駅からマカオLRTで引き返して、蓮花駅で、もう一つの支線に乗り換え、横琴駅に向かう。
横琴駅へ向かう支線は出発した後すぐに地下に入り、海を越えた隣の駅、横琴駅で終点となる。で、海を渡った先にあるということは、そこはマカオではなく中国本土の珠海市であり、イミグレーションを通れば、中国に入境することができる。
香港MRTの羅湖駅をイメージしていて、改札を出たらイミグレ直行かと思っていたのだが、普通に駅の外に出てきた。しかも、橋を徒歩で渡ると、マカオに戻ることもできるらしい。どうも横琴口岸のマカオ側の空間に普通に駅があるという構造のようだ。
この先の行程だが、最終的には高速鉄道で香港に戻る予定である。で、香港行きの高速鉄道は広州から出るので、まずは珠海から広州へこれも高速鉄道で移動する。珠海駅は、マカオの一番北側の拱北口岸の隣にあるので、マカオ側を移動してもよいのだが、どのみち中国側へ入境しなくてはならないので、横琴口岸から中国本土へ入境することにする。
というのも、マカオから中国に向かうメインルートは拱北口岸経由なのだが、ここは一日中激しく混雑していて、最悪1時間以上並ばないといけない。一方、横琴口岸は利用客が比較的少なく、私が入国審査の列に並んだときも待っているのは10人程度であった。で、すぐに通過できるかと思いきや、一人ひとりの審査の時間がやたらと長い。一人、3分はかかる。なので、10人しかいないのに30分以上待たされて、やっと中国に入境した。
さて、ここから高速鉄道の出発駅である珠海駅への移動しなくてはならないのだが、その移動方法がさっぱりわからなかった。
後で調べたところ、どうやら珠機城際鐵路なる鉄道路線で移動するのが一番早かったようなのだが、その改札らしき場所は見つけたものの、どこへ行く路線なのかわからず、また券売機も見当たらなかったので乗車を断念。結局、バスで移動することにした。
バス停に行ってみたものの、どのバスに乗ればいいのかさっぱりわからない。かなり長い時間バスの案内板とにらめっこして、ようやく珠海駅を通るバス系統を見つけ、それに乗り込むことができた。いや、漢字をうっすら読めるからどうにかなったのだが、漢字を読めない西洋人はこれは詰んじゃうよね。
バスの料金は1元、大昔に作った広州の交通系ICカードを持っていたのだが、有効期限切れなのか反応せず、結局1元札を運賃箱に突っ込むことでようやく乗車することができた。いや、珠海市内の移動は、なかなか難易度が高かった。
広州へ
珠海・珠海駅
バスを待っている間に雨が降り始め、珠海駅に着くころには大雨。バスを降りたら駆け足で駅コンコースに滑り込んだ。
ここから、高速鉄道を2本乗り継いで、香港に戻ることにする。
バスとは違い、中国の高速鉄道の乗車券の購入は簡単だ。Trip.com などのサイトから日本語で予約できる。
ただし、中国の高速鉄道は完全にeチケットに移行していて、紙に乗車券は発券されない。中国国民は身分証がチケット代わりになるのだが、外国人の場合はパスポートがその代わりとなる。改札は二段階。まず駅入口で改札と手荷物検査を受けて待合室に入り、乗車するホームへ降りる前にもう一度改札がある。eチケットと言い、手荷物検査と言い、飛行機に乗り込む時の要領である。
改札は自動化されているが、外国人は普通の改札機を利用することはできない。各改札の端の方に有人改札があり、そこにある機械にパスポートをかざすことで通過できる。
中国の鉄道は改札が混むことがあるので早めに駅に到着しろ、と各種ガイドブックに記載があるのだが、珠海駅の改札は混んでおらず、すぐに待合エリアに入ることができた。珠海駅から中国各方面に列車が発着しており、広い待合エリアで多数の人が列車を待っている。ホームへの改札は、列車の出発15分ほど前から始まり、それ以前にはホームに上がることができない。
私が乗る列車は広州行きではなく、梅州という謎の都市行きである。地図をみたらかなり北方にあり、うっかり寝過ごしたら大変なことになりそうである。
珠海・珠海駅
改札の時間となったので、有人ゲートからホームへ入場する。普通の自動改札より有人ゲートの方が空いているので、少し得した気分になる。
広州への列車は中国高速鉄道の標準車両・和諧号である。ヨーロッパからの技術移転で製造された経緯があり、どことなくドイツのICEを彷彿とさせるデザインとなっている。
座席はビジネスクラス、一等車と二等車とある。座席の大きさ的に、それぞれ日本のグランクラス、グリーン車、普通車に相当する。中国の高速鉄道の運賃は日本よりもかなり安く体感的には半額ぐらい、なので、ちょっと贅沢して一等車の座席を選んだ。座席は二列-二列の配置になっていて、大きさ的には、やはり日本の新幹線のグリーン車相当となる。非常に快適である。
乗り心地としては、静かで揺れも少なく申し分ない。気になるのは、隣の席のやつがやたら大きな音量で、YouTube的な何かを見ていてうるさいこと。まあ、こればかりはお国柄なので仕方がない。
香港へ帰還
広州・広州南駅
1時間ほどで、広州南駅に到着。ここで香港行きの列車に乗り換える。
飛行機の乗り継ぎのように、一度改札の外へ出ずに待合室に戻ることができる通路があったので、そこでパスポートを見せて待合室に入った。いろいろなトラブルを懸念して、乗り換え時間に1時間を確保しておいたのだが、10分もあれば十分だったようである。ということで、結果的に、1時間近くの空きが出来てしまった。
広州の高速鉄道駅は広州南駅と広州東駅がある。どちらからも香港に行けるのだが、本数的には広州南駅の方が多く、距離も近い。広州南から深圳までは以前から高速鉄道が走っていて、私も10年以上前に一度乗ったことがある。その路線が香港まで延伸開通したのが2018年だ。これにより、広州だけでなく中国本土各地から香港への直通高速列車が走るようになった。なんと北京からも直通列車があり、専用の夜行高速列車も運行されているらしい。
広州・広州南駅
1時間弱待って、ようやく香港行きの列車のホームに入場できた。今度は和諧号より新しい車両である復興号。なんだか「最新型」という外観である。
内装もモダンで、とても落ち着きのある車内である。が、やはりすげーでかい声で通話してるやつがいるんだよなぁ...。うるさいのはそいつだけで、あとはみんなむっちゃ静かなんだけど、誰も文句言わないんだねぇ。
香港・香港西九龍駅
あっという間に、香港に到着。夜であったし、香港部分は地下なので車窓は何も見えず。
香港側の駅は「香港西九龍駅」と名付けられている。九龍半島の西側という意味だと思うのだが、香港MTRの九龍駅より東側にあり、「北品川」感がある。
中国の出国と香港の入境はこの駅で一気に行う。つまりは、この鉄道駅は実質中国領ということになる。中国各地からの列車が乗り入れることを考えると、すごく合理的かつ唯一の方法論ではあると思うが、一国二制度がなし崩しになっているような気もしてくる。
日本のパスポートは自動化ゲートを通過できるので香港の入境はあっという間。なんとか丸一日かかって香港に戻ってきた。
なお、この西九龍駅はMTRの九龍駅、柯士甸駅と連絡しているが、どちらもものすごく遠い。よく連絡通路を繋げたもんだというぐらい遠い。
ただ、嬉しい発見もあった。西九龍駅から九龍駅の徒歩ルートは途中渡り廊下になっていて、ヴィクトリアハーバーの夜景が良く見えたのだ。百万ドルの夜景をみることができるちょっとした穴場スポットである。
香港・中環某所
この日は、香港名物の焼味飯(焼き豚丼的な料理)を食べようと思って、中環にある有名店を目指して歩いていた。Google Mapを頼りに歩いていたのだが、ちょっと間違えて隣の店に入ってしまった。
夜9時近くとはいえ、客が一人もいないというのは嫌な予感がしたのだが....、案の定、ダメでしたね。
一応、写真だけ載せておきました。これだけは、いつかリベンジしたい。
香港MTR延伸路線
香港島・金鐘駅
香港旅行最終日。午後のフライトなので、午前中に追い込み観光を行う。
まずは、香港MTR全線1日制覇を行った2018年以降に開業・延伸したMTR路線に乗っておく。
一つ目は東鉄線の延伸区間、紅磡駅と金鐘駅の間である。
一時を除いて、長く東鉄線の終点だった紅磡駅から線路が延伸され、ビクトリア・ハーバーを海底トンネルで渡って、香港島まで繋がったのだ。これで香港MTRは4つのルートで九龍半島と香港島を結んだことになる。スターフェリーで渡らなければいけなかった時代は遠い過去となりつつある。
朝、金鐘駅から東鉄線に乗り、紅磡駅に向かう。海底トンネルを含む区間なので長めの距離ではあるが、間に一駅あるのみなので、あっという間に到着する。
で、驚いたのは紅磡駅のホームが地下になっていたこと。東鉄線は中国本土と結ばれた九広鉄路と線路を共有しており、香港側の玄関である紅磡駅は広い半地下の駅であった。地上駅はどうなっているのかと見に行ったのだが、旧ホーム付近に立ち入ることができずよくわからなかった。なんとなく駅空間自体は残っていそうである。また、コンコースフロアでも旧九広鉄路の構内部分は立ち入り禁止となっていて、広い駅舎を持て余しているように見えた。
沙田・大囲駅
続いては、屯馬線に乗車する。
2018年の段階では、紅磡駅を起点に屯門方面に西鉄線が伸びていた。これを北側に延伸し、馬鞍山線とつなげたのが屯馬線である。
こちらも2018年には地上にあったホームが地下に移っている。今を思えば、確かに2018年の段階で駅の周りをむっちゃ工事してたんだよね。
屯馬線の新規開業部分は、東鉄線の東側を走っている。途中、かつて啓徳空港があった場所を通り、大囲駅で再び東鉄線に合流する。
大囲駅は高架駅だがそれまではずっと地下路線。啓徳空港の現在の様子が見たかったがそれは適わなかった。
香港鉄路博物館


(右上) 廃線跡をそのまま使用しているらしく分岐器もそのまま朽ちている
(下) 静態保存された車両たち
香港鉄路博物館の客車たち
大埔・大師傅粥品
最後にもう一か所、香港鉄路博物館を見学してから日本に帰ることにする。
香港鉄路博物館は、東鉄線のさらに北側・大和駅から徒歩10分弱の場所にある。
大囲駅から20分ほどで大和駅に到着。博物館の開館まで少し時間があるので、朝食を食べることにする。
香港の朝ごはんと言えば、朝粥。駅直結のショッピングセンター・大和広場に大師傅粥品というお粥専門店っぽい店があったので、そこに入ってみた。
メニューがよくわからず、安牌で何も入っていないノーマルな朝粥を頼んだのだが、薄味で何も味がしない。卓上にある何かしらの調味料を入れてみたのだが、どれもいまいち。サイドメニューに揚げパンも頼んでしまったので、机上が炭水化物フェスティバルで賑わうことになった。
揚げパンはむっちゃおいしかった。ボリューム的には揚げパンだけで十分だったね。
大埔・香港鉄路博物館
朝食を平らげたところで、鉄道博物館に向かう。博物館は大和駅の一駅隣の大埔墟駅の旧駅跡にある(現在の駅の場所からみると、大埔墟駅よりも大和駅の方が近い)。
旧駅跡なので線路に沿って歩いていけばすぐ近くなのだが、真っ直ぐな道がないため、一度街中を通り抜ける必要がある。
食堂とか自転車修理工場といった店が並ぶ小さな商店街の中に、博物館の入り口があった。博物館と言っても敷地は狭く、入場料金は無料である。
屋外の車両展示と、旧大埔墟駅の駅舎を利用した屋内展示があるはずなのだが、タイミングが悪く駅舎は改装中で中に入ることはできなかった。
見どころは、実際に車内にも入れる歴代の客車だ。戦前の20世紀初頭から50年ほど前の私と同じ年の客車まで並んでいる。客車の歴史を見てみると、最初は不安定そうな木製の椅子にはじまり、クッションの利いた椅子に変わり、徐々にクッションが薄くなっていく。現在の香港MTRの車両の椅子は固いステンレス製なので、ある意味先祖返りしているようにも見える。
香港、マカオ、ちらっと広州を回る旅、無事に完了。
今から15年ほど前、広州から香港やマカオに移動したことがあったのだが、当時は香港へは深圳まで新幹線であとは地下鉄か、直通の普通列車、マカオへは高速バスで移動だった。それぞれ2時間ぐらい時間がかかっていたので、香港マカオ間の高速船を加味すると一日で珠江デルタを一周するのはかなり大変だったはずである。それを考えると便利になったものであるが、同時に香港、マカオが完全に中国に取り込まれたんだなぁと実感した。
実際、香港の街は年々中国化していて、最近では上海などの大都市とあまり景色が変わらなくなってきた。昔、広州からの直通列車で深圳を過ぎ、羅湖の鉄橋を渡って香港に入ると、車窓の風景ががらりと変わったものだが、今では深圳の方がはるかに都会的な景色かもしれない。
現地の人にとっては余計なお世話かもしれないが、寂しいなとは思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿