予定外のシアトル見学、ニューヨーク散策を終え、いよいよお目当ての Amtrak に乗車する。
 乗車する列車はニューヨークのペンステーションからナイアガラの滝のすぐ横を通ってカナダのトロントに向かうメープルリーフ号。
 せっかくナイアガラを通るので、一度下車して一泊し、ナイアガラの滝を見学する。
ペンステーション
 (左上) マジソン・スクエア―・ガーデン
(左上) マジソン・スクエア―・ガーデン(右上) イニハン トレイン ホール
(下) 日光が降り注ぐコンコース
 (左上) 7時15分発 Amtrak63 メープルリーフ号 トロント行き
(左上) 7時15分発 Amtrak63 メープルリーフ号 トロント行き(右上) メープルリーフ号は紙のボーディングチケットが必須
(下) ペンステーション駅ホーム
 (左) メープルリーフ号ビジネスクラスのシート
(左) メープルリーフ号ビジネスクラスのシート(右上) カフェ
(右下) カフェで買ったサンドイッチをAmtrak柄の箱に入れてくれた(持って帰った)
ニューヨーク・ペンステーション
 ニューヨークのAmtrakの発着駅は、グランドセントラル駅と並ぶもう一つのターミナル、ペンシルバニア駅である。一般にペンステーションと呼ばれるこの駅は、エンパイアステートビルの2ブロック西に位置している。
 開業は1910年で、当時の全米十大鉄道会社の一つペンシルバニア鉄道がニュージャージーへ繋がる川底トンネルとともに開業させた。開業当初はボザール様式(またしても...)の荘厳な駅舎があったのだが、鉄道の衰退とともに土地の有効活用の観点から1968年に新しいビルにとってかわられた。このビルがNBAのニックスとNHLのレンジャースの本拠地である マディソン スクエア―ガーデン である。
 ペンステーションには Amtrak の他に、西に向かうニュージャージートランジット(NJT)と東に向かうロングアイランドレイルロード(LIRR)が乗り入れており、あまり大きくはない地下のコンコースは、常に通勤客などで混雑していた。
 この混雑を解消すべく、一昨年モイニハン トレイン ホールと名付けられた新たなコンコースが開業した。マディソンスクエアガーデンの西側にあったジェームス A. ファーリー ビルというボザール様式(これしかないのか??)の郵便局の建物を駅舎として再開発したのである。ちなみに、駅の西側に郵便局があったのは偶然ではなく、かつては郵便局の地下の線路に直接運搬する郵便物を運搬していたからだそうである。
 メープルリーフ号の出発は朝7時15分。事前にネットでチケットを買っておいたので、あとは列車に乗るだけかと思っていたのだが、国際列車であるメープルリーフ号は、紙のボーディングパスの発券と事前のチェックインが必要とアナウンスされていた。
 チケット窓口で"CANADA"とスタンプの押されたボーディングパスを発券してもらうと、パン屋の裏側でチェックインしているからそちらに行けと言われた。ホールの横のパン屋の裏側という屈強なガードマンにぼこぼこにされそうな場所に足を踏み入れるのは勇気がいるが仕方がない。
 実際にパン屋の裏側で待っていたのは意外にもシルバーなおじさまで、これはあっさり通してくれるかと期待したのだが、そうはいかなかった。パスポートを渡すと手元のマニュアルで国別の対応を確認し始めた。いつまでもマニュアルをペラペラ捲っているので、何を調べているのかと覗き込むと、Japanのページが見つからないらしい。見つからないらしいが、俺の目にはしっかりと"Japan"と書かれたページが見えている。しびれを切らして「ここにJapanと書いてある」と指をさして、どうにか事なきを得た。
 チェックイン完了後は、壁に沿って一列に並べと言われ、そこにはカナダ戦線への志願兵のごとくスーツケースを持った一団がメープルリーフ号の出発を待っていた。
 出発の10分ほど前に、いよいよホームへの移動が開始された。壁際に並んでいた志願兵たちは、一列に並んでエスカレーターへ誘導され、地下のホームへ降りていく。
 地下のホームには銀色の機関車に率いられた銀色の客車が乗客を待っていた。これぞ、まさにAmtrakという出で立ちだ。エモいぞ。
 今回、奮発してビジネスクラスのチケットを購入していたので、列車の一番後ろにあるビジネスクラスの車両に乗り込んだ。一番後ろの車両は前方半分が売店、後ろ半分が客席となっている。売店を通り抜けると、2列-1列の広々としたシートが並んでいた。
 メープルリーフ号は全席自由席なので、適当な空き席に腰を下ろし、出発を待つことにした。
 列車はかなりの年代ものらしく外観も内装もかなりおんぼろである。シートもいくぶんくたびれてはいるのだが、それも含めて風情である。
 メープルリーフ号はニューヨークからトロントまで12時間かけて走行するが、ほとんどの区間はアメリカ国内、そしてニューヨーク州内である。7時15分にペンステーションを出発して、国境手前のナイアガラフォールズ駅に着くのは午後4時39分。ナイアガラフォールズ駅はカナダ側にもあり、カナダ側で入国手続きを行う。その後、カナダ側の乗務員が乗車して再出発するのが午後5時45分で、2時間後の7時43分にはトロントに到着する。9時間ちょいアメリカで、休憩1時間を挟んで、2時間がカナダ区間といった塩梅となる。
 今回は、ナイアガラで一泊するので、カナダ側のナイアガラフォールズ駅で一度下車し、翌日同じ列車でトロントに向かうという旅程にした。
  
メープルリーフ号出発
ニューヨーク・ペンステーション
 定刻になると、特にアナウンスもなく列車が発車した。機関車から離れた車両であることもあり、揺れはあるものの駆動音は静かである。
 ペンステーションの地下ホームを西に向かって出発した列車は、地下トンネルの中で北に90度向きを変える。しばらくして地上に顔を出すと、そこはマンハッタン島の西側の縁、ハドソン川のすぐそばを北上していく。
 20分ぐらいすると、橋をわたりマンハッタンに別れを告げて、ブロンクスに入っていく。そして、ところどころ駅に停車しながら北上を続けるのだが、いつまでたっても左手の車窓はハドソン川のままである。
 問題はそのハドソン川の川幅。行けども行けども一向に川幅が縮まらない、さすがは大陸の川である。木曽川とはわけが違う。
 結局、ハドソン川を越えるのは出発して3時間後、それでもなお1キロ近くありそうなハドソン川を越え、列車は徐々に西側に進路を変えていく。
 ここから先はナイアガラ近くのバッファローまで大きな街はなく、車窓は森、畑、たまにちょっとした集落が繰り返しとなる。
 そんななか、目を引いたのが途中ですれ違った貨物列車。長い長いとは聞いていたが、とてつもなく長大な編成であった。きちんとは数えられなかったのだが、おそらく400両前後あったのではないだろうか?
 1両20メートルとしても全長8キロ。しかもコンテナは2段積みである。10キロ近い列車とかもうわけがわからない。踏切通過する間にサザエさんが終わるのではないだろうか??
 大陸は根本的にスケール感が違いすぎる。
 ところで、ビジネスクラスの乗客は、コーヒーやジュースなどのソフトドリンクは無料で飲み放題となっている。
 ビジネスクラスの座席は車両の半分、20名ほどしかいないため、売店に行くと顔パスでジュースを渡してくれる。
 9時間の長丁場ということで、途中昼ご飯にサンドイッチを買ったのだが、やはり飲み物のコーヒーは無料。ビジネスクラス、気持ち良いですなぁ。
バッファロー
バッファロー・Exchange Street駅
 ペンステーションを出発して約9時間。アメリカ側のナイアガラの観光拠点、バッファローにやってきた。途中の駅で長時間停車し、一時は1時間近い遅れだったのだが、いつの間にか20分遅れを挽回している。貨物が優先のアメリカの長距離鉄道網では遅れがかなりの頻度で発生するので、時刻表にはかなりのバッファを設けているようである。
 バッファローを出発したら40分でナイアガラフォールズ駅に到着する。ここからカナダのナイアガラフォールズ駅まではわずか2分。ナイアガラ川を超えたらカナダに入国である。
 ナイアガラ川を越える橋からわずかにナイアガラの滝の姿を確認することができた。
 カナダのナイアガラフォールズ駅では入国審査を行うため、トロントまで乗車する乗客も含めて、一度列車を降りてイミグレーションに向かう。
 俺のようにここで降りる乗客は、駅舎の中にあるイミグレーションを通過後に晴れて釈放となり、駅を出ることができるようになる。
 赤レンガの駅舎が作られたのは1879年と150年近くの歴史がある。イミグレーションなどの設備に場所を取られているのか、乗客が入ることができるスペースは小さな待合室のみ。売店もなく、田舎のJRの駅を彷彿とさせる。現在のナイアガラへのアクセスの主役は飛行機とバス。列車自体、一日何便かしか止まらないので、まあ、こんなもんですかね。
ナイアガラ到着
ナイアガラフォールズ・ナイアガラフォールズ駅
 ナイアガラフォールズ駅からナイアガラの滝まではわずか数キロ。滝周辺の観光地を回るWEGOというバスに乗って、カナダ側のナイアガラの滝の観光拠点テーブルロックに向かう。
 駅から滝まではバスでわずか10分、水しぶきの向こうに滝が見えてきた。
 バスから降りると、まず見えたのは虹。滝から虹が立ち上がっていた。
 テーブルロックはカナダ滝の落下点の目の前で、滝の巨大さとそこを流れる水量にいきなり圧倒される。いや、滝の大きさは想像の範囲ではあったものの水の量には驚いた。こんなに大量の水が蛇口からひねたっかのように大量に流れ出続ける姿は驚きを通り越して、むしろ恐ろしい。ナイアガラ半端ないっすわ。
 テーブルロックの目の前にあるのがカナダ滝と呼ばれる有名な馬蹄形の滝である。川の中州となる島を挟んで反対側にも滝があり、こちらはアメリカ滝と呼ばれている。
 ナイアガラの滝は明日ゆっくり見学する予定なので、本日は滝の全貌を眺めるべく、スカイロンタワーという展望タワーに向かった。
スカイロンタワー
ナイアガラフォールズ・テーブルロック
 テーブルロックは滝の上部と大体同じ高さなのだが、背後にはさらに高い崖があり、その上にホテルが立ち並んでいる。スカイロンタワーも崖の上に位置している。
 崖の上に上るためのケーブルカーが運行されているので乗車する。フォールズ・インクライン・レイルウェイと名付けられたケーブルカーはおそらくつるべ式と思われるが、交錯せず独立した複線のレール上を交互に車両が上り下りする形となっている。
 乗車時間は数分、なんなら階段があれば上ってもいいぞという高さなのだが、階段はなくケーブルカーの独占営業となっており、3.1カナダドルの運賃を上納せざるを得ない。
 
ナイアガラフォールズ・スカイロンタワー
 ケーブルカーの降り口から徒歩10分でスカイロンタワーに到着する。
 スカイロンタワーは高さ160メートルのタワーで、タワーの上部に円盤状の展望台があり、シアトルのスカイニードルとちょっと似た形状をしている。
 1965年完成の古い施設ということもあるのか、オフシーズンなのかタワー内はかなり閑散としている。特にタワーの1階はゲームセンターとなっているのだが、置かれている機械は古く、部屋も暗く、しかもフロアの半分ちかく何も置かれていない空間がある。もちろん客は数人。なんとなく、しなびた温泉街で見たことのある景色が広がっている。
 それでも展望台に上ってみたらそこそこの観光客がいた。併設された展望レストランにそれなりに予約が入っているようなので、細々と営業は成り立っているようである。
 さて、1階のゲームセンターの雰囲気から全く期待していなかった展望台からの眺めだが、どっこい絶景である。
 展望台の高さは地上143メートルだが、滝つぼから測れば200メートルをゆうに超える高さとなる。アメリカ滝、カナダ滝を眼下に見下ろし、彼方のエリー湖とオンタリオ湖をも一望。滝と反対側の方向も街があまりないため、大陸の雄大さを体感できる。ここは行っておいて損はない。
ナイアガラフォールズ・テーブルロック
 夜になるとナイアガラの滝はレインボーにライトアップされる。
 ただ風向きのせいなのか水しぶきで滝全体に靄がかかり、いまひとつはっきりと滝の姿を見ることができなかった。まあ、幻想的といえば、そうなのかもしれないが、わざわざライトアップしなくてもナイアガラの滝はすごいですよと、ナイアガラ観光協会的な人に言っておきたい。
 明日は朝から滝をあらゆる角度から見て回ろうと思っている。











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