2023-05-27

Amtrak Maple Leaf 号でナイアガラの滝へ (後編)

   ニューヨークから Amtrak に乗ってナイアガラ経由でトロントに向かう旅。一週間の北米旅行もいよいよ終盤。
 本日は夕方から再び Maple Leaf 号に乗車し、終点のトロントを目指すのだが、それまでの時間ナイアガラの滝をありとあらゆる角度から見て回ることにする。

徒歩でアメリカへ

カナダとアメリカを繋ぐレインボーブリッジ
徒歩で渡ることができる。 レインボーブリッジから滝を見る
手前がアメリカ滝で奥がカナダ滝

テラピンポイントからカナダ滝を見る

言うてもアメリカ滝も迫力がある
ナイアガラフォールズ・レインボーブリッジ

 翌日、早朝から滝見物にでかける。ホテルの窓から外を見てみると雨、霧が立ち込めていて視界も悪そう。と思ったのだが、どうも雨というよりも滝からの水しぶきがあたり一面に広がっているっぽい。天気を変えるとか、さすがナイアガラの滝、もうケタが違い過ぎる。
 雨だか水しぶきは太陽が昇るにつれ収まり、ホテルを出るころには晴れ間が広がっていた。

 まずはカナダ滝とアメリカ滝の間にある中洲のゴート島へ向かう。ゴート島は川の真ん中よりアメリカ側にあるせいなのかアメリカ領土である。アメリカ側から橋がかかっていて、徒歩や車で訪れることができる。
 カナダからアメリカへはナイアガラ川の上に掛かるレインボーブリッジという橋を通って歩いて入国することができる。アメリカへ行くときもカナダへ行くときも出国はノーチェックだが、入国には当然入国審査が必要。小さいながらも空港のような入国審査場が設けられている。橋の通行料はカナダからアメリカに行くときのみ1ドル(米ドルでもカナダドルでも1ドルでよい)必要。

 テーブルロックからバスで数分、レインボーブリッジに直結したカナダの出国ゲートに向かう。出国ゲートは自動改札機で、1ドル投入すると通行できるようになる。ちゃんと米ドル、カナダドル両方の両替機も置いてあるので小銭がなくても安心である。
 出国ゲートを抜け、橋を渡り始める。アメリカ滝を間近に、カナダ滝を正面に捉えることができるので、レインボーブリッジ自体も滝の観光名所である。
 橋の長さは300メートル5分とかからずアメリカの地にたどり着く。
 アメリカ側の橋の出口はナイアガラフォールズ州立公園となっていて、公園の中の道を通ってゴート島に向かうことになる。公園内には展望台やアメリカ滝の滝壺まで降りるアトラクション、そして、ナイアガラの映えスポットがたくさんある。
 その中でもゴート島最大の見どころは、カナダ滝の滝口の際すぐ真横にあるテラピン・ポイントと言う場所。レインボーブリッジから10分歩いて橋を渡りゴート島へ、そこからさらに10分ほどで到着する。
 テラピン・ポイントはテーブルロックのちょうど対岸にあたるのだが、より滝に近いので迫力が段違い。際限なく滝に吸い込まれる水の流れが圧巻である。
 ゴート島の反対側はアメリカ滝なので、アメリカ滝の滝口にも見学ポイントがある。アメリカ滝はカナダ滝よりかなり小さいのだが、それでも十分でかい。

ナイアガラクルーズ

カナダ滝の滝つぼのすぐ近くまで近づくことができるナイアガラクルーズ

実際問題、滝に近づくと水しぶきがすごすぎて何も見えない

クルーズ船乗り場近くのファーストフード店は滝が良く見える穴場スポット
バッファロー・テラピンポイント

 今度は滝を下から見上げようとクルーズ船に乗り込み。ナイアガラの滝壺に近づく頃ができるクルーズ船は、アメリカ側とカナダ川両方から出航している。どちらも通るコースも値段もほとんど同じである。
 今回はカナダ側のクルーズ船に乗ることしたため、再び徒歩でカナダに戻ることにする。
 アメリカからカナダに戻るときは、レインボー・ブリッジの入り口にある鉄製の回転ゲートを通って出国する。動物園とかにある一度出たら戻ってこれないアレである。入るときはいろいろうるさいが、去るものは追わずなのか、ゲートを回すだけで出国完了となる。
 レインボーブリッジを渡りカナダに着いたらもちろん入国審査があったが、難なく突破してカナダへの再入国を果たす。動いた時間が早朝だったせいか、アメリカ側もカナダ側もほとんど待ち時間なく、数分で入国することができた。

ナイアガラフォールズ・Niagara City Cruises

 カナダ側のクルーズ船の乗り場は、レインボーブリッジのすぐ近くにある。入場口でチケットを見せると赤いビニール製のポンチョを渡され大型エレベーターに誘導される。
 そこから一気にナイアガラ川の水面近くまで降下し船着き場に到着する。船はひっきりなしにやってきて、前の乗客が下船次第、乗船となる。船を待つ間にみんなポンチョを着るので、赤色のビニールが列をなしている不思議な景色を見ることができる。
 いざ乗船が始まると船の中で場所取りが始まる。デッキは2層で下層が室内、上層が屋外となっている。みんな一斉に上層の左舷の場所を取るのだが、出遅れてしかたなく右舷前方の場所を確保した。ただ、あとでわかったことだがこの船の場所取りは、出発時こそ左舷はアメリカ滝が目の前に見えるものの、実は最終的にほとんど意味がない。
 船は出港するとまずアメリカ滝の方向に進み、右に旋回し今度はカナダ滝の方に向かう。その後、特攻隊かのごとく滝に直進していく。途中からだんだん水しぶきが激しくなり、最終的には目を開けていられないほどの激しくなる。もはや水しぶきというか、水流の中にいるかのような状態となる。ポンチョで頭と上半身はある程度守られているが、足はずぶ濡れになる。
 乗客も大半はたまりかねて下層に逃げ出すので、上層はガラガラになる。船の場所は取り全く意味がなかった。
 遊覧船は全体としては滝の鑑賞というよりは、ずぶ濡れを楽しむアトラクションなのだが、滝の下から抜け出して船着き場に戻る途中改めて滝を見上げると、崖の上から見るのとはまた違った雄大さを味わうことができた。まあ、靴はもう中までぐっしょりですがね...。

 フェリー乗船後、切符売り場の横にあったレストランというかファーストフードのお店で昼ご飯を食べたのだが、ここからの滝の眺めがとてもよかった。
 滝を見える場所は数あるのだが、ここからはアメリカ滝とカナダ滝の両方がバランスよく正面に見える。滝を眺めながら食べるピザは、うまかった。

ビハインド・ザ・フォールズ

トンネルを通って滝の裏側にいくことができるジャーニー ビハインド ザ・フォール
ナイアガラフォールズ・ジャーニー ビハインド ザ・フォール

 続いては滝を裏側から見ることができるジャーニー・ビハインド・ザ・フォールを訪れる。
 滝の裏側とはどういうことかというと、滝の裏側に掘られたトンネルに入り、そこからくりぬかれた窓から滝の裏側を見るということである。なんでそんなトンネルがあるのかというと、かつてここにあった水力発電所の施設の跡らしい。
 入り口はテーブルロックの上に建つテーブルロックセンターにある。またしてもポンチョを渡されエレベータに乗り込み、地下のトンネルへと向かう。ちなみに今度はポンチョの色は黄色である。
 エレベーターを降りると細い横穴があり、滝の裏側に繋がっている。横穴から滝に向かう坑道は二つあり、一つは滝の本当に真裏、一つは滝の真横に繋がっている。
 真裏側はもうまさに真裏なので、目の前にあるのは水の壁。水量が凄まじいのは実感できるが、滝の裏側なのかどうかはよくわからない。おっさんがすごい勢いでホースから水を出しているかもしれない。
 一方滝の真横は滝を真上に見上げることができ、また格別の迫力である。ナイアガラの滝、水量が多すぎて落ちる水に厚さがある。水が流れているのではなく、水の塊が押し出されているのだが。
 下流の方を見てみると、目の前にさっき乗ったクルーズ船がある。見学中は滝の目の前に止まっているように見えるのだが、実は滝の水流に押し流されないようにかなりスクリューを回しているのがよくわかる。
 クルーズで滝に近づくのもよいが、真横から見るのも面白い。ま、どちらもびしょぬれになるわけではあるのだが...。

パワーステーション ザ・トンネル

発電所の跡地を見学する パワーステーション
(右下) ザ・トンネルに向かうエレベーター 発電所の排水管の跡を歩く ザ・トンネル ザ・トンネルの終点はテーブルロックの真下

滝つぼレベルからの滝の姿も格別

ナイアガラフォールズ・パワーステーション

 最後に、テーブルロックから滝の上流側に歩いて5分ほどのパワーステーションを見学する。
 ここは2006年まで使われていた発電所の建屋を改装してつかわれている施設である。発電所の歴史やタービンなどが飾ってあるのだが、一番の見どころは発電所の排水を流す排水管の跡を歩く The Tunnnel というアトラクション。
 排水管といっても、そこはナイアガラの水量を使う巨大水力発電所の排水管なのでとてつもなく巨大。しかも、排水管の跡ということは、その先に繋がっているのは滝の下流ということになる。その位置が、テーブルロックのほぼ真下、カナダ滝の目の前である。

 パワーステーションに入ると、入り口すぐ近くに大きなエレベーターがある。これが The Tunnel に繋がるエレベーターである。もともと11基あった垂直タービンの跡にエレベータを取り付け、排水管まで一気に降りることができる。
 タービンの高さは約40メートル。それが11機も横に並んでいる。エレベーターに窓がついているのでそのケタ違いな規模がよくわかる。
 そのタービンも含めてエレベータの長さは50メートルあまり。地下に着き、エレベーターを開くとすぐに排水管、とんでもなくデカい。正確な数値が分からなかったのだが、10メートルは超えるであろう大きさ。本来は管なので円形だったはずだが、歩きやすくするために床の方が平らに埋められている。それでもデカいのだ。この大きさは激流が流れていたと思うとそりゃ、どんだけでも発電できそうである。
 トンネルの長さはかなり長く700メートル弱。10分近くトンネルを歩くことになる。
 終点に近づくと滝の轟音が聞こえ始め、ついにトンネルの向こうの明かりが見えてくる。外に出ると目の前にカナダ滝が見え、足元には激流がある。
 この施設、最近できたせいもあり、各種ガイドブックにあまり載っておらず、現地に着くまで知らなかったのだが、滝の迫力を感じるのに近すぎず、遠すぎず、びしょぬれにならない適度の距離感に位置していて、ナイアガラ観光必須の見学スポットだと思う。

メープルリーフ号再び

前日とほぼ同じ時刻の夕方 滝に虹がかかった (左上) ナイアガラフォールズ駅の待合室
(右上) Amtrak #63(メープルリーフ号)は、カナダ税関による車内検査が終わるまで乗れないよという案内
(下) ステップに足をかけて列車に乗る夢がかなった (左上) 一般車 ビジネスクラスとあまり変わらない
(右上) トロントまでの車窓はこんな感じ
(左下) トロントの街に入ってきた
(右下) トロント・ユニオン駅に到着
ナイアガラフォールズ・テーブルロック

 そうこうしているうちに夕方になり、ナイアガラを後にする時間となった。バスに乗って駅に向かうのだが、滝から虹が出ていた。虹に歓迎され、虹に見送られるナイアガラ。演出が憎すぎる。遠いけどまた、見に来たいねぇ。
 この後はメープルリーフ号に乗ってトロントに向かうため、昨日と同じ WEGO バスでナイアガラ駅に向かう。運行情報を見ると、本日はアメリカ側のナイアガラ駅に20分早く到着しているらしい。Amtrak スケジュールはガバガバっぽい。

ナイアガラフォールズ・ナイアガラフォールズ駅

 ナイアガラ・フォールズ駅の待合室に行くと、大きな荷物を持った乗客がたくさんメープルリーフ号を待っていた。
 ほぼ定刻通りに列車はやってきたのだが、ここまで乗ってきた乗客のカナダの入国手続きを終えてからしか乗車できないので、30分程待つことになる。
 しばらくして、車掌がやってきて乗車開始を告げた。
 ペンステーションと違い、ほぼ地面と変わらない高さのホームから乗車するので、入り口の近くにステップ代わりの黄色い台を置いてくれた。これだよ、これ。俺の Amtrak をイメージは荒野に停車した列車に乗り込むイメージ。
 昨日と同じメープルリーフ号なので、車内の様子は昨日と変わらない。ただ、ナイアガラからトロントまでわずか2時間なのでビジネスクラスではなく一般車に乗車した。
 一般車は2列-2列のシートでビジネスクラスよりも1列多いのだが、十分に広く、シートの幅は変わらないように感じた。

 例によって音もなく、いつの間にかメープルリーフ号は終点の終点のトロントに向かって出発する。トロントはオンタリオ湖に面したカナダ最大の都市。都市圏人口は600万人を超え、北米全体でも屈指の大都市である。
 ナイアガラから見て位置的には真北にあたるのだが、間にオンタリオ湖があるために、湖の西側をくるりと迂回して列車は進んでいく。
 湖の近くを走行しているはずだが、さほど近くないようで湖の姿は見えない。
 出発してしばらくは草原地帯を走るが、トロントに近づいてくると徐々に街の景色が車窓に見えてくる。
 最後は、何本もの線路が並行して走る区間を通って、トロントのユニオン駅に到着する。
 メープルリーフ号はニューヨークからトロントまで875キロの道のりを12時間30分かけて走破した。評定速度は70キロ。欧州や日本の高速鉄道と比べれるとかなりのんびりした旅だが、その分大陸移動の醍醐味を感じられる鉄道旅であった。

トロント

(左) トロント・ユニオン駅のホームとトレインシェード
(右) アーチが美しいい駅構内 ファサードが立派なトロント・ユニオン駅
背後にCNタワーが見える 駅前にはロイヤルヨークホテル
トロント・トロント ユニオン駅

 トロント・ユニオン駅は、12面16線の巨大駅。高架上のホームは立派なトレインシェードに覆われている。地上面がコンコースとなっていて、近郊列車であるGOトレインが頻繁に発着している。
 駅の歴史は古く19世紀中ごろまでさかのぼることができるが、現在の駅舎ができたのは1927年で、当初はカナダ国鉄とカナディアンパシフィック鉄道の共同駅で、現在もファサード上部にその名が刻まれている。
 入り口近くには大きなホールがあり、カナダの玄関口として申し分のない荘厳さを誇っている。
 駅舎の目の前にあるロイヤルヨークホテルは駅と同時期にカナディアンパシフィック鉄道が開業させたステーションホテルで、経営主体は変わったものの今でもトロントを代表する高級ホテルとして客を出迎えている。
 駅舎の向こう側には、ブルジュハリファができるまで世界最高の自立建造物であったCNタワーが見える。
 トロントの街並みも見学したかったのだが、日本に帰る飛行機の時刻が迫っているので、早々にユニオン駅を後にした。

 そんなわけで、1週間のニューヨーク、ナイアガラの旅行はおしまい。
 実は、僕が北米を訪れたのは今回が初めてである。
 ウルトラクイズに憧れた世代なので、ニューヨークには特別な憧れがあったのだが、ようやくマンハッタンの地に足跡を残すことができ感無量である。
 アムトラックも子供の頃から一度乗ってみたい鉄道だったのだが、一つ夢がかなった。
 だが、なによるもナイアガラの滝である。現地に行くまでは、ニューヨークとアムトラックが旅の目的で、ナイアガラはそのおまけと考えていたのだが、完全に考えが甘かった。
 ナイアガラの滝の水量の迫力に圧倒された。
 ナイアガラの滝、やはり死ぬまでに一度は見ておきたい名所中の名所であった。

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