2019-04-01

フィンランド ラップランドでオーロラを見る (#3 サーリセルカ後編)

 オーロラを見るため、フィンランドの北極圏の街・サーリセルカにやってきた。
 サーリセルカの滞在は5泊6日。初日は曇り空のため、オーロラを見ることはできなかった。
 しかし、オーロラの出現確率を表すKP値が上がってくるのは今日から。残り4夜でなんとかオーロラをこの目に焼き付けたい。

サーリセルカ滞在2日目

サーリセルカの朝10時 R Kioskiのホットドッグ
その場でパンを温めて作ってくれる トナカイのステーキとニョッキ的な何か
サーリセルカ・ホテルリエコリンナ

 サーリセルカ滞在2日目の朝10時。
 朝といってもまだまだ空は明るくならず、見た目は普通に夜。
 ここサーリセルカは基本的にはスキーリゾート。スキーをやらない人にとっては、何もない街ということになってしまう。
 今回の旅は長旅なので、もともと今日を休息と洗濯の日と考えていた。
 夜はいよいよオーロラ観測ツアーに参加するので、それまではのんびり洗濯しながら過ごすことにする。
 で、ホテルの洗濯機を使ったのだが、なんと洗濯にたっぷり2時間かかるらしい。
 とりあえず朝ごはんを食べがてら散歩に出かける。
 実はフィンランドに来てからずっと気になっていた食べ物があった。フィンランドではR-kioskiというコンビニがほぼ市場を寡占していて、どこにいってもR-kioskiだらけである。その中で、日本のコンビニでいう所のおでん、肉まんポジションで売られているのがホットドッグ。いつも美味しそうな匂いを漂わせているので、ぜひ一度食べておかねばと思っていた。
 街の中央にあるホリデイ・インホテルの入口にR-kioskiがあるので、そこまで歩いていく。
 なんだか昨日もホットドッグを食べた気がするが、そんなことは怯まずホットドッグを注文する。
 注文するとちゃんとパンを温め、ソーセージを詰めて渡してくれる。レジ横にケチャップ、マスタード、フライドオニオンがおいてあるので、あとは好きに仕上げてくれというスタイル。
 まあ、どうってことのないシンプルなホットドッグだが、それ故に実に美味しい。日本のコンビニにもおいておいてほしい一品。
 腹が膨れたところで、さらにふらふらとサーリセルカの街を歩いた後で、ホテルに戻ってきた。
 洗濯物を乾燥機に移し替えたのだが、乾燥にもたっぷり1時間。本当に洗濯で半日が終わってしまった。

サーリセルカ・Ravintola Kaltio

 その後ダラダラと過ごして、夕ご飯の時間。
 ぼちぼちフィンランドらしい何かを食べておこうと、近くのホテルにある伝統的なフィンランド料理が食べられるレストランRavintola Kaltioを訪れた。
 フィンランド、ラップランドの名物料理と言えばトナカイの肉。
 ここはストレートにトナカイステーキと副菜としてニョッキ的な何か(名前は忘れた)を注文した。
 トナカイ肉の感想としては、肉質的にはラムに近い。というか、牛でも豚でもない食感なので、ラムとしか言いようがないのだけかもしれない。味付けが濃いせいもあって、そこまでクセがあるわけではないのだが、おいしいかと言えば、「そりゃ牛の方がうまいですわ」といった感想。
 ま、そうなるわな。
 ニョッキ的な何かも実にニョッキ的で、ニョッキ的に美味しかったです。

オーロラ観測バスツアーに出発

オーロラ観測 キートス号
サーリセルカ・ホテル リエコリンナ

 時刻は夜9時。いよいよオーロラバスツアーの出発の時間である。
 しかし空を見上げてみると、なんのことはなく昨日よりもさらに雲が多い。
 サーリセルカにはオーロラツアーのようなウインターアクティビティーを主催している業者がいくつもあるのだが、今回参加したのは、日本語ガイドが案内してくれるノルディック・ジャパンさんのキートス・オーロラハンティング・ツアー。
 どの業者でもオーロラハンティングの内容はほぼ同じで、サーリセルカの北50キロほどの場所にある大きなイナリ湖とその周辺のたくさんある湖のどこかに向かい、そこからオーロラを観察する。湖の上は空が開けているので、そこならオーロラが観測しやすいだろうということである。ポイントはいかにうまく雲の隙間の下にバスを止められるかで、見事タイミングが合えばオーロラを見ることができるということになる。

 この日まずは、サーリセルカから北へ30分ほど進んだあと、道のすぐ脇の湖の畔でバスが止まった。
 街からかなり離れた場所で、当然あたりは真っ暗。最初何も見えなかったのだが、目が慣れてくると目の前に凍り付いた広い湖面が広がっているのが見えてきた。
 湖面を歩くことができるということで、雪が積もった湖面をおっかなびっくり歩いていく。少し岸から離れた場所に立つと、周りに視界を遮るものがなくなり、広大な夜空が広がってきた。
 だが相変わらずの曇り空、時々、雲の切れ間はあるにはあるのだが、オーロラらしきものは何も見えない。
 30分以上滞在したのだが天気は好転せず、別の場所に移動することになった。

 次に向かったのはイナリ湖を見下ろす高台。なんらかの電波塔が立っているので、おそらくあたり一面を見下ろすことができる他よりも一段高い場所なのだろう。
 ここでも30分ほど滞在したのだが、空の様子は変わらず。そもそも論として、オーロラも出ていないらしい。
 結局、この日はオーロラを見ることはできなかった。
 やはりそう簡単にオーロラを見ることはできないらしい。
 サーリセルカ滞在は、残り3夜。そしてKP値が一番高いのは明日。明日こそオーロラが見たいものである。

スノーモービルサファリ

やたらとデカいスノーモービル 1時間走ってたどり着いた山頂からの眺め
サーリセルカ・Joiku-Kotsamo Safaris

 サーリセルカ滞在3日目。本日もオーロラバスツアーに参加予定なのだが、夜までは当然何もやることがない。
 さすがに2日続けて部屋でゴロゴロするのも何なので、ウインターアクティビティーに挑戦してみることにした。
 ホリデイ・インの隣にあるアクティビティ屋さんJoiku-Kotsamo Safarisで、スノーモービルに乗って雪山を探索するアクティビティ、スノーモービル・サファリを申し込んだ。
 スノーモービルに乗るアクティビティというのは日本でもよく見るし、おいらも参加したことがある。日本の場合、スノーモービルの乗車時間は30分ほど、見えてる範囲をぐるりと回って終了だと思うのだが、こちらのは一味違う。
 日程はばっちり2時間。片道1時間スノーモービルを走らせるとすると、いったいどこまで連れていかれるのだか?

 

 受付を終えると、まずは分厚い防寒着を着させられる。
 その後スノーモービル置き場に連れていかれたのだが、乗れと言われたスノーモービルがやたらとでかい。イメージ的にはハーレー並みの大きさである。
 そのハーレーに載せられ、アクセルとブレーキの操作を簡単に教えられたらすぐに出発となった。
 少しビビりながらアクセルレバーを引き、先導するインストラクターの後をついていく。運転自体は簡単なのだが、スノーモービルがデカイため、やたらとハンドルが重たい。なかなかの重労働。
 サーリセルカが特別なのか、このあたりでは普通なのかは知らないが、街中から周りの森に向けてスノーモービル専用の道路が整備されており、その道に沿って山道を進んでいく。
 最初は森の中の細い道を走っていたのだが、いつの間にか森を抜けスキー場らしき開けた場所に出た。スキー場と言っても、おそらくは超上級者コースで、とんでもなく急斜面のゲレンデである。
 そんな斜面ももろともせずスノーモービルは登っていってくれるのだが、今一つスノーモービルを信頼しきっていないおいらにとっては、いつか転げ落ちてしまうのではないかと不安でならない。
 スキー場の頂上らしき場所にロッジらしき建物があり、そこがゴールかと思っていたのだが、その裏側をノンストップで通過して山を下り始めてしまった。
 山の頂上のむちゃくちゃ眺めの良く、写真を撮りたかったのだがその夢叶わずじまい。
 というか、ここまでおそらく30分以上走り続けており、いい加減しんどい。だが、そんなことはお構いなく、インストラクターは山道を下り続ける。そして、下りは上りに輪をかけて、つんのめりそうで怖い。
 思えば予約していた人がドタキャンしたとやらで出発前ごたごたしていたのだが、その遅れを取り戻そうとしてノンストップでぶっ飛ばしているのかもしれない。
 ゲレンデの裏山を降り、再び山道に入り、また道を登り始めた。坂を登り続けると、森林限界を超えたのか木が無くなり、視界が一気に開けてきた。
 そして、ついに山頂らしき場所で、インストラクターがスノーモービルを止めた。
 ヘルメットを外し、久しぶりに両足を地面の上におろしたのだが、そこには見たこのない景色が広がっていた。
 サーリセルカから10キロほど北にあるその山から、雪に覆われた森を遠くまで見通すことができる。そのさらに向こうに見える北極圏の山々は、フィンランドだけでなく、ノルウェー、ロシアの山も見えているのだそうな。
 寒さもあって、1時間近いスノーモービルの運転はかなりしんどかったのだが、それ以上の価値のある景色だった。
 頂上でインストラクターがホットブルーベリージュースを配ってくれた。ブルーベリージュースというのはフィンランドではかなりスタンダードな存在で、どこででも飲むことができる。冬はホットが定番らしく、日本でいうお茶のような存在らしい。
 この旅で何度となくブルーベリージュースを飲んだのだが、やはりこの景色を見ながら飲んだブルーベリージュースが一番おいしかった。

 しばらく景色を眺めた後、サーリセルカに向けて、再びスノーモービルに跨る。行きとは違い、森を抜けずに開けた雪原を駆け下りていく。
 行きも1時間近く走ったので、帰りも当然そのくらいの時間がかかった。
 そういえば、スノーモービルサファリって、3時間のコースもあったのだが3時間だったらどこまで連れていかれたのだろうか...。

オーロラバスツアー リベンジ

北欧のライ麦パン
日本のコンビニでも売ってほしい ラップランドサファリのオーロラバスツアー ついにこの目でオーロラを観測
サーリセルカ・ホテルリエコリンナ

 スノーモービルサファリを終えた後は一日のんびり過ごして夜を待つことにする。
 この日の晩御飯はホテルのレストランでハンバーガーを食べることにした。
 ハンバーガーと一緒にパンが出てきたのだが、日本では見たことのないタイプの黒く固いパンが出てきた。ライ麦のパンらしい。2種類あり、ひとつはパサパサ、もう一つはパリパリといった食感である。このような水分の少ない硬めの食パンが北欧ではスタンダードなのだそうな。
 最初は味気ないと思ったのだが、食べていくうちにライ麦の味わいがだんだん癖になってきた。
 日本のパン屋さんにもぜひおいておいていただきたい。

サーリセルカ・ホテルリエコリンナ

 夜を迎え、本日もオーロラ観測バスツアーに参加する時間となった。
 この日申し込んだツアーの主催は、この界隈の最大手Lapland Safarisさん。どれだけLapland Safarisさんが幅を利かせているかというと、サーリセルカを歩いている人たちの半分以上の人がここからレンタルした赤いジャンバーを着ており、もはやサーリセルカの制服と化しているぐらいである。
 最大手だけあってツアーの参加人数も多くバスも大型。そのバスにさまざまな国からやってき人々が乗り込み、オーロラの期待を背負って出発する。
 この日の夜が、おいらの滞在期間中で最もKP予想値が高く、オーロラ出現の可能性が高い日である。しかしながら、天気は下り坂で午後から雲がどんどん増えており、出発前、空を見上げたの時は星がほとんど見えなかった。
 うまいこと雲の切れ目を探さないと、オーロラは見えなさそうである。

 バスは前日と同じく、サーリセルカから北に延びる道を進みイナリ湖を目指している。
 30分ほど走ったところで、「おいおいこのバスでその細い道を走るのは自殺行為だろ...!」というような脇道に入り、山を登り始めた。
 そして脇道に入って5分ほどの場所でバスが停車した。暗くてよく見えないのだが、右手が開けているので、おそらくそちらに湖があるのだろう。
 インストラクターが「オーロラが見えた」だのなんだの言っているようだが、目が暗闇に慣れていないせいか特に何も見えない。
 湖の上に降り、しばらく歩いていると目が慣れ、だんだんと周りの景色が見え初めてきた。
 そこで空を見上げたところ、空はやはり一面の雲。ところどころに星が見えているので、切れ間がないわけではなさそうだが、まあ基本的に「曇り空」という状態。
 こりゃ今日もオーロラは厳しいかなと思っていたのだが、やはり周りでオーロラがどうのこうのと言っている人がいるっぽい。
 雲をもう一度よくみていたら、真上の雲に一本の緑色の光の筋がついているように見えた。ちょうど空の端から、反対側の端まで微妙に光っている部分が繋がっているのだ。
 さらにずっと見ていると、その緑色の部分はなにやら微妙に動いているらしい。
 オーロラだ。
 雲の上に一筋のオーロラが見えている。
 最初に見えたオーロラは時期に消えてしまったのだが、しばらくした後、また別の場所がうっすら緑色に光り始めた。
 オーロラは出てくれるのだが、いかんせん雲が厚い。なんと言うか、すりガラス越しに(あるいはモザイク越しに)オーロラを見ているような感じである。
 その後、しばらくオーロラが出なくなり、またしばらくしたらオーロラが現れるというのを何度か繰り返した。
 結局、雲が切れることがなかったので、はっきりとしたオーロラは見えなかったのだが、空を覆うほどの大きなオーロラを何度か見ることができた。
 この日はオーロラが見えていたせいか最初に着いた場所から動くことはなく、1時間程滞在してサーリセルカに戻っていった。
 まあ鮮やかとは言い難いが、間違いなくオーロラを見ることができた。
 とりあえず、この旅の目的は達成である。

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