2019-03-31

フィンランド ラップランドでオーロラを見る (#2 サーリセルカ前編)

 オーロラを見るためにフィンランドのラップランドへ向かう旅。
 クリスマスのヘルシンキ観光を終えた深夜、北極圏目前のロヴァニエミに向か夜行列車・サンタクロースエクスプレスに乗り込む。

サンタクロースエクスプレス

ヘルシンキ中央駅ホーム
奥が駅舎 (左)寝台個室
(右)2階デッキの通路 トイレ兼シャワー室
洗面台を手前に引くとシャワールームとなる
ヘルシンキ・ヘルシンキ中央駅

 サンタクロースエクスプレスことIC273号ロヴァニエミ行きの出発時刻は22時13分。
 あまりに暇すぎて早めに駅に戻ってきてしまったのだが、まだホームに列車の姿はない。もしかしたら1時間ぐらい前からホーム入線しているのではないかと期待していたが、そういうものではないらしい。
 とにかくフィンランドの鉄道はアナウンスがないので、いつの間にか列車が出発していて乗り損ねるなんて自体は避けたいので、ホームで待つことにする。
 フィンランドにきてまる1日。ぼちぼち寒さにも慣れてきたと思っていたのだが、外でじーっと座っているとさすがに寒い。それなりに大きな荷物も抱えているのであまり出歩きたくはないのだが、じっとしていては寒いし....

ヘルシンキ・ヘルシンキ中央駅

 ホームを小さくウロウロしていると、ようやく列車が入線してきた。
 やってきたのは緑色の2階建ての寝台列車。車両の色はフィンランドの国鉄VRのイメージカラーのようだ。
 予約してあった車両はホームの先頭の方。スーツケースを抱えてホームを歩いていたのだが、途中見事に氷の上で滑り転んでしまった。すぐ目の前で大はしゃぎしていた子供が尻もちをついていたので、「慌てるなよ、少年!」と心の中で思っていたのだが、その少年よりも8倍ぐらいド派手に転倒してしまった。
 したたかに打ち付けたケツをさすりながら、車両へ乗り込む。

 サンタクロースエクスプレスの座席は、椅子席とベッドのある個室に分かれている。個室は全て二人部屋なのだが1階と2階で少し異なり、2階は室内にシャワーとトイレがあり、1階はシャワートイレが共同となっている。
 おいらがとった部屋は2階のコンパートメント。ロヴァニエミへの運賃と合わせて、二人で266ユーロ。日本からでも簡単に予約をすることができる。
 コンパートメントの扉を開けて、まず思ったのは「うわっ狭!」ってこと。向かって左が2階建てのベッドで右がユニットバスだったのだが、その隙間はほとんどなくスーツケースを2つ置いたら完全に空間が埋まってしまうような大きさである。
 スーツケースをベッドの下に放り込んでなんとか空間を作り、ユニットバスを覗いてみる。扉を開けると、そこは狭いトイレと洗面台しかない。シャワーは? と探してみるとなにやら説明が書いてあり、洗面台を動かすとシャワーが出てくるらしい。
 金具をはずし、洗面台を手前に引くと確かにシャワーがでてきた。まあ気分的にはトイレの個室にシャワーが付いたみたいな感じである。
 この後シャワーを浴びてみたのだが、案の定、水が少ししかでない。ボタンを押した後一定期間お湯が出るのだが、その量は儚く、シャワーを浴びれば浴びるほど体が冷え切っていくという仕様。うっかり石鹸で体を洗ってしまったがため、その石鹸が落ちるまで地獄の行水が続く羽目になった。
 まあ電車でお湯をふんだんに使えるわけもないので、仕方がないことではあるけどね。

サンタクロースエクスプレス出発進行!

サンタクロースエクスプレス 食堂車とミートボール
(右下)カウンターの奥にテーブル席がある
サンタクロースエクスプレス

 荷物を片づけたり、シャワールームをチェックしているうちにいつまにか列車が動き出した。あいかわらずフィンランドの鉄道はサイレントである。
 例によって改札もなく列車に乗り込んだのだが、さすがに寝台列車には検札があった。出発してしばらくしたらラフな格好のおっさんが切符拝見にやってきた。といっても切符はなく、ネットで予約したときの控えを印刷した紙を見せるだけ。あっさり検札終了。
 そうこうしているうちに、ぼちぼち日付が変わる時間。やることもないので寝ることにする。
 そうは言ってもなかなか寝付けないので、ときどき窓の外を覗いていたのだが、ヘルシンキを離れた後すぐに森の中に入り、その後は大きな都市はなく、森の中の小さな街を通過するのみ。さすが森と湖の国である。

サンタクロースエクスプレス

 翌朝7時に目が覚めたので列車の探検に出かけることにした。むろん、この時期のフィンランドの朝7時は暗闇の中である。
 先頭の5両ほどは、おいらの乗っている車両と同じ2階建てのコンパートメント。その後ろに座席車両と食堂車が続いている。
 おいらのコンパートメントは先頭から2両目、後ろから2両目の食堂車までは結構遠い。車両と車両の間は空調のない場所で、かなり寒い。北極圏が近づいてきている感がある。
 コンパートメントを通り抜け、座席車両へ。お休みの皆さんの間を申し訳なく思いながら歩いていく。
 座席車両を2両通り抜けるといよいよ食堂車に到着。前方半分は売店とキッチンと立ち席カウンター。後ろの半分はテーブル席になっている。
 カフェラテと北欧名物のミートボールを注文すると、なかなかちゃんとした朝ごはんが出てきた。

サンタクロースエクスプレス

 食事を終え、コンパートメントに戻って2時間。ようやく終点・ロヴァニエミが近づいてきた。
 ロヴァニエミはフィンランドの北極圏の入り口。冬至を過ぎて間もないこの季節の日照時間は2時間余り。11時に日が昇り、13時には沈んでしまうらしい。
 それでも10時を過ぎれば徐々に空は明るくなってきた。

ロヴァニエミで長距離バスに乗り換え

ロヴァニエミ駅に到着 サーリセルカへはバスで移動
ロヴァニエミ・ロヴァニエミ駅

 サンタクロースエクスプレスは定刻通りに終点・ロヴァニエミに到着した。ヘルシンキから北へ800キロ、さすがに積もる雪の量も増えていて、一面銀世界である。
 ロヴァニエミはサンタクロース村があることで有名な街。列車を降りた乗客のかなりの数がサンタクロース村へ向かう路線バス、あるいは貸し切りツアーバスに乗り換えていく。
 おいらはサンタよりオーロラということで、サンタクロース村には目もくれずに、目的地サーリセルカに向かうバスに乗り換える。
 白いロヴァニエミの駅舎を出て、左側がバスターミナル。出発まで30分あまりしか時間がないので、まずはバス停の位置を確認する。バスターミナルには何台かのバスがとまっており、その中にからおいらが乗るカラショク(ノルウェーの街らしい)行きのバスを探す。
 それらしきバスを見つけたので運転だか車掌さんだかに聞いてみると、「このバスだ。乗れ」とばかりに、バスに押し込まれた。出発まで少々時間があるはずなのに、やたらせっかちだと思っていたのだが、バスは定刻よりも10分以上早く発車してしまった。
 「おいおい」と思っていたのだが、すぐに間違っていたのはおいらの方だと気が付いた。バスは駅を出発すると、数百メートル離れたロバニエミ・バスターミナルという場所に到着した。
 おいらが日本から買ったチケットをよく見てみると、「ROVANIEMI BUS STATION」からのチケットになっている。これはこのバスターミナルのことで、おいらがのったバス停は「ROVANIEMI RAILWAY STATION」らしい。だから、出発時間も間違っており、バスは時刻表通り駅を出発していたのだ。
 危なかった!
 のんびり売店でも寄っていたら、置いて行かれるところだった...。
 そんな間違いもあるかもしれないが、フィンランドの高速バスMATKAHOULTOのチケットは日本からでも簡単に予約でき、なかなか便利な移動手段である。

 バスの乗車時間は約3時間半。途中いくつかの停留所に停車するはずなのだが、降りる客も乗る客もおらず、どんどん通過していく。日本でも北国では当たり前なのかもしれないが、凍結しているようにも見える道を時速100キロでかっ飛ばしていくのはなかなかに恐ろしい。
 ロヴァニエミから少し北にいくと、いよいよ北極圏に突入。時期的に、一日中日が昇らない極夜の世界となる。日が昇らないとはいえ、昼間も真っ暗かと言えばそうではなく、夜明け前や日没後のような明るい時間が一日数時間はあり、一応昼は訪れる。
 バスが走り始めて数時間でそんな薄暗い昼間も終わり、14過ぎたあたりでもはや暗くなってしまった。
 結局、バスは一度ソダンキュラという町で停車したのみで、あとはまっすぐな道をノンストップで走り続けていった。

いよいよサーリセルカ到着

ホテル リエコリンナ
カクシラウッタネン

 サーリセルカの街に到着する15分ほど前、一度カクシラウッタネンという場所で停車し、乗客の何割かが下車した。この場所には、オーロラ観測用に天井がガラス張りになっている個室、ガラスイグルーがあることで有名な、この地域最大のリゾートホテルがある。
 おいらも4日後にここに訪れる予定なのだが、ひとまずは通過してサーリセルカの街に移動する。

サーリセルカ ホテル・リエコリンナ前

 カクシラウッタネンから15分でバスはサーリセルカの街に入っていく。バスはサーリセルカの街を1周して3か所のバス停に停車する。おいらが下りたのは最初のバス停、ホテルリエコリンナ前のバス停である。ここで降りたのは5名ほど。残りの皆様は別のバス停で降りるのか、それともサーリセルカからさらに北の街に向かうのだろうか?
 サーリセルカに着いた時刻は15時過ぎなのだが、当然ながら町は既に真っ暗。完全に留保なしに夜である。
 チェックインを済ませ、荷物を置いて防寒具を着込んだところで、一つ決断をしなくてはならない。
 今回の旅ではこのサーリセルカとカクシラウッタネンで合計5泊する。運が良ければサーリセルカでもオーロラ観測ができるらしいが、より確実なのはサーリセルカからオーロラ観測のバスツアーに参加することである。バスツアーに参加すれば、雲の切れた場所に移動することができ、オーロラに遭遇できる可能性がより高まるという理屈である。
 一つの決断とは、本日のツアーに参加するかどうかを決めることである。
 オーロラが出るか出ないかは基本的には運任せなのだが、ある程度予測が可能である。太陽の自転周期が27日であるためオーロラには27日の周期性があり、さらに太陽の光学観測の結果などから、3日先までの予測が可能らしい。
 おいらはこの旅に出るまでの1か月間ずーっとアラスカ大学のオーロラ予報のサイトを見続けていた。オーロラの出現率はKP値とよばれる10段階の数値で表される。ざっくり言えば、KP値が2以下だと観測が難しく、3だと運次第、4だとなんらかのオーロラは見える、5以上だと出まくりという値らしい。
 今回、おいらのサーリセルカ滞在期間では3日目の夜がKP4、その前後が3となっている。
 で、考えたが、今日は一日中曇り空で、この後の天気予報も曇りが続く見込み。KP値も低いし、長旅の疲れもある。ということでバスツアー参加は見送ることにした。
 ただ次の日わかったことだが、この日バスツアーに参加していれば雲の切れ目からオーロラが見えたらしい。後の祭りだが...。

サーリセルカの街を探索

(上)サーリセルカの街並み
(下)Muossi GRILLIのトナカイ肉ホットドッグ ホテルの部屋の中にあるサウナ
(右)電気で熱した石に水をかけて蒸気を発生させる
サーリセルカ

 さて、パッと見、夜にしか見えないのだが時間的にはまだまだ夕方。サーリセルカの街を散策してみることにする。
 サーリセルカの街は1周しても30分ほど。大きなホテルが4軒、レストランが5軒ほど、スーパーが1軒と、いくつかのお土産屋さん、以上終わりといった小さな街である。
 オーロラ観測でも有名なのだが、街の隣に巨大なスキー場があり、フィンランドの人々にとってはスキー場の街として認知されているようだ。
 おいらが泊まったホテル・リエコリンナはサーリセルカの街の一番奥にあるので、街の入り口近くのスーパーまで歩いていくと街を一通り横断することになる。
 気温は当然氷点下で、寒いことは寒いのだが慣れてしまえば、どうにかなるものである。ホテルやレストランを覗きながら、街唯一のスーパー、クーッケリに到着。まあ、いたって普通のスーパーでヘルシンキのそれとあまり大差がない。リゾート地だけに値段が高めらしいのだが、そもそもフィンランドの物価が高いのでよくわからなかった。

サーリセルカ Muossi GRILLI

 街の入り口までついてしまったので、もと来た道を戻ることにする。
 帰り道、青い小屋のホットドッグ屋さんで、夕飯を食べることにした。お店の名前はMuossi GRILLIでトナカイ肉のソーセージに入ったホットドッグが売りらしい。
 トナカイ肉だろうが、豚肉だろうが腸詰めにしてしまえば違いはわからず。普通においしいホットドッグだった。
 店を出て少し歩いたところで、今度はホットチョコレートという看板を見つけたので温まろうと入ってみた。しかし、出てきた飲み物は、どう考えても森永のココアそのもの。うん、どれだけ考えても、粉を溶かしてのみあの森永ココア。絶対どこかに見慣れたあの箱があるはずだと探してみたが箱は見つからなかった。だが、俺の中の疑念は消えていない。あれは絶対に森永ココアである...。

サーリセルカ ホテルリエコリンナ

 夜になってから、ホテルの近くの空の開けた場所を散策してみたのだが、一面曇り空でオーロラは見えそうにない。やはり今日はオーロラは諦めることにする。
 ところで、フィンランドと言えばサウナなのだが、宿泊したホテルには各個室にサウナが備えられていた。
 サウナと言っても日本みたいに部屋全体に蒸気を充満させるようなタイプではなく、熱した石に自分で水をかけながら温度を調整するタイプで、乾式サウナというらしい。
 おいらは、あまりサウナは好きではないのだが、このタイプのサウナは暑すぎず、そして体が温まりなかなか快適。
 結構病みつきになり、宿泊中、何度も入ることになった。

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