東京の地下鉄(東京メトロと都営地下鉄)とJRの東京都区内、さらに都電と日暮里・舎人ライナーが1日乗り放題となる「東京フリーきっぷ」。
このきっぷを使って、それら全路線を1日で乗り切ってしまう旅。早朝4時、暗闇に包まれた蒲田駅を出発してから14時間が経過した18時。東京の街は再び夜を迎えている。
いくつかのトラブルを乗り越えながら、ここまで33本(+東京フリーきっぷ範囲外の電車3本)を乗り継いできた。
残りは、JRが総武線、京葉線、中央線と山手線の一部、東京メトロが千代田線、日比谷線、副都心線、有楽町線、東京都交通局が都電と日暮里・舎人ライナーとなっている。
最後は、中央線の最終電車で西荻窪に到着する予定だが、それまでまだ7時間も先。秋の夜は長い。
(メトロ 千代田線/JR 常磐線 26.0km) 34. 金町 18:07発 代々木上原行 → 綾瀬 18:14着
(JR 常磐線 4.1km) 35. 綾瀬 18:15発 北綾瀬行 → 北綾瀬 18:19着
(メトロ 千代田線 2.1km)
36. 北綾瀬 18:24発 綾瀬行 → 綾瀬 18:29着
(メトロ 千代田線 2.1km) 37. 綾瀬 18:33発 代々木上原行 → 北千住 18:36着
(メトロ 千代田線 2.6km)
葛飾区・金町駅
おいらの乗った千代田線の列車はJRの常磐線に柏まで直通する列車だが、常磐線の都区内境界駅は金町なので、金町駅で降りる。
駅に着いたときにはすっかり闇夜。代々木上原では空がまだ明るかったのだが、地下鉄に乗っていると時間の感覚がおかしくなる。
終端まで来たら、もう常磐線には用はないので、折り返しの電車を捕まえる。
さっさと千代田線とはおさらばして、次の路線に移りたいのだが、千代田線には支線があるので綾瀬に戻って支線を往復する。
足立区・綾瀬駅
綾瀬駅のホームの片隅に切欠き状の0番ホームがあり、そこから1駅先の北綾瀬まで延びている千代田線の支線に乗車する。
小さなホームから、3両編成の電車が出発し、終点に到着するとそのまま折り返して綾瀬に戻ってくる。今回の旅では珍しい、”いかにも”という支線だ。
綾瀬に戻った後は、さらに1駅、北千住まで戻って、日比谷線に乗り換える。ただし、日比谷線を制覇するわけではなく、2駅先の三ノ輪駅で降りて、近くの都電・三ノ輪橋まで移動し、都電の制覇を行う。
(メトロ 日比谷線 2.9km) 39. 三ノ輪橋 19:01発 早稲田行 → 早稲田 19:55着
(都電 荒川線 12.2km) 本来乗るはずだった都電
(友人撮影。おいらはこの頃、まだ三ノ輪橋界隈をさ迷っている) 40. 早稲田 19:58発 荒川車庫前行 → 鬼子母神前 20:02着
(都電 荒川線 2.0km) この時間の池袋(友人撮影)
鬼子母神の祭の行列が池袋駅前を通過していたらしい 41. 雑司が谷 20:10発 川越市行 → 池袋 20:12着
(メトロ 副都心線 1.8km)
足立区・北千住駅
地下2階の千代田線から地上3階の日比谷線まで4分間の乗換え。時間的には余裕はあるが、標高差が半端ないので結構しんどい。
日比谷線のホームでわざわざ会いに来てくれた千葉の友人とハイタッチをして、さっそうと日比谷線の電車に乗り換えるつもりだったのだが、電車が来ない。直通する東武線内で遅延が発生しているようだ。
次の日比谷線から都電までの乗り換え時間は8分間。両駅間の距離は歩いて4、5分。遅延が3分以内なら間に合うし、4分強なら走れば間に合う。
そして、やってきた電車は3分ちょっとの遅れ。走れば、なんとか間に合いそうな時間だ。
台東区・三ノ輪駅
結局、三ノ輪へは3分の遅れで到着。都電の三ノ輪橋までダッシュ、と思ったのだが。ホームを降りた瞬間パニックに陥る。
実は、このチャレンジの前日、主要な乗り換えポイントのルートを確認するため、一日中下見を行っていた。三ノ輪から三ノ輪橋まで、そこそこの距離を移動するこの乗り換えも当然下見の対象で、「列車後方の階段から改札へ向かう。駅の案内看板は、都電の乗り換えは前方の階段となっているが、エレベーターを使うと後方出口のほうが近い」と覚えていた。
だが、電車の後方の入口が都電の乗り換え口と案内されており、記憶と違っている。
かなり後になって気がついたのだが、このとき、おいらは三ノ輪駅の都電乗り換えルートと雑司ヶ谷駅の都電乗り換えルートを取り違えていたようである。なんで、そんな勘違いをしたのかはさっぱりわからないが、乗換えを焦っていた事もあって、この時点で頭が真っ白になってしまった。
ともかく「出口の案内とは逆の方の出口」というのは間違いないはずと思い、慌てて、列車の前方の出口を目指す。
だが、改札を出るとそこは見たことのない風景。下見をしたときと違う出口を使っているのだから当然である。ここで冷静になればよかったのだが、わけがわからないまま、エレベータで地上に出てしまう。地上にでたところで、そこに待っているのも当然、「見たことのない風景」。
慌てて、駅出口の周辺地図を確認するが、都電の乗り場を見つけられない。まるっきり逆の出口を出て、逆方向を向いているのだから見つかるわけがない。
「おいらは何かを間違っている」というのは分かるのだが、何をどう間違っているのかがさっぱりわからない。
とりあえず、スマホを取り出して、地図を呼び出し案内に従って歩き出すが、依然として事態を全く把握できないでいる。
何が起きているのか理解したのは、都電の乗り場近くの商店街を見つけたときで、三ノ輪橋に着いてから8分後のことだ。
時すでに遅しで、とっくに電車は発車してしまっていた。
台東区・三ノ輪橋停留所
さて、予定通りの電車に乗れなかったのだが、立ち止まっていても仕方ないので、後続の電車に乗って都電の終点・早稲田へ向かう。
当初のこの後の行程は、以下の通りだった。
- 早稲田→(都電)→鬼子母神前
- 鬼子母神前→(ダッシュ)→池袋
- 池袋→(山手線)→日暮里
都電から池袋の山手線に乗るのであれば、雑司が谷から池袋まで東京メトロの副都心線に乗るという手もある。だが、この時間だと雑司が谷、池袋の乗り換え時間がそれぞれ3分間しか確保できない。雑司が谷の乗り換え経路にはエレベーター、あるいは踏切があり時間が読めないし、池袋の乗り換えは3分では厳しい。それよりは、都電の池袋最寄駅から走ったほうが手堅いだろうという判断だった。
その後は、山手線で日暮里、日暮・里舎人ライナーを往復してから、常磐線で北千住、あとは日比谷線、副都心線、有楽町線、京葉線、中央線と乗り継ぐ予定となっている。
現在の1本遅れの電車のまま、漫然と乗り継いでいくと、最後の中央線の終電を逃すことになる。どこかで、一工夫しないといけないと、都電の中で時刻表を調べる。
その頃、池袋にいる友人から連絡が届いた。
「池袋東口の道路は、鬼子母神のお祭をやっていて、人でごった返している」
予定通り、雑司が谷から池袋までをダッシュしていたら、お祭りの行列に行く手を阻まれていた可能性もある。ここは、ダッシュをやめてラッキーと前向きに考え、善後策を練ることにする。
新宿区・早稲田停留所
都電の終点・早稲田に到着。折り返して池袋を目指すわけだが、今の時間はなら、走るよりも、鬼子母神前で副都心線に乗り換えた方が、池袋に早く到着できる。
で、都電の中で考えていた池袋以降の慈善策だが、解決策が一つだけあった。日暮里で山手線から日暮里・舎人ライナーに乗り換える際、1分で乗り換えることができたら、当初の予定に復帰することができるというプランだ。
日暮里の山手線と日暮里・舎人ライナーの間は、高さの差(かなり大き目の2フロア分)こそあれど、距離は短い。1分あれば乗り換えは可能だ。
しかしながら、時刻表上1分の乗り換え時間があるとしても、実際に1分の時間が確保でるとは限らない。極端な話、山手線が50秒に到着して、日暮里・舎人ライナーが翌00秒に出発するとすると、時刻表上は1分の時間があっても実際は10秒しかないことになる。
限りなく1分に近い乗り換え時間を確保できる時刻に、常磐線が日暮里に到着することを祈るのみである。
豊島区・鬼子母神前停留所
「恐れ入谷の鬼子母神」で名高い鬼子母神の近くの停留所で、都電に別れを告げる。確かに近くで祭をやっているらしく、屋台が停留所近くにも並んでいた。
鬼子母神前停留所の真下が、東京メトロ副都心線の雑司ケ谷駅である。
真下といえば近そうだが、ホームはかなりの深さに作られていて、乗り換えにはそこそこの時間を要する。
(JR 山手線 6.5km) 43. 日暮里 20:30発 見沼代親水公園行 → 見沼代親水公園 20:50着
(日暮里・舎人ライナー 9.7km)
44. 見沼代親水公園 20:54発 日暮里行 → 日暮里 21:15着
(日暮里・舎人ライナー 9.7km) 45. 日暮里 21:21発 高萩行 → 北千住 21:29着
(JR 常磐線 5.2km)
豊島区・池袋駅
雑司が谷から隣の駅・池袋へ。池袋での山手線への乗り換えは、5分間。副都心線ホームから丸の内線ホームへ、そこから地上のJRホームへという最短ルートを通って、なんとかギリギリ山手線到着前にホームにたどり着く。
本日4回目の山手線乗車となるが、結局、一日中混雑が続いる。なんで、人がこんなにいるんだろうね?
これで、山手線も京浜東北線と合わせて、くるりと一回りすることができる。
荒川区・日暮里駅
三ノ輪橋での失態を取り戻す最初で最後のチャンス。日暮里駅には、秒単位で定時きっかりに到着した。
扉が開いたら、ともかく目の前の階段を登る。改札を抜けて、またしても階段を登り、日暮里・舎人ライナーのホームへ到着。まだ、発車のベルは鳴っていないので、電車の写真を撮ってから乗車。
予想外に余裕を持って、1分間の乗り換えに成功した。この後、北千住で3分間(常磐線→日比谷線)、中目黒で2分間(日比谷線→副都心線直通の東急東横線)の乗換えをこなせば、ゴールへの道筋が見えてくる。なんにしろ、日暮里の1分乗り換えに比べれば、そう難易度が高いわけではない。なんとかゴールできそうな芽がでてきた。
足立区・見沼代親水公園駅
無人運転の新交通システム・日暮里・舎人ライナーに乗って、終点・見沼代親水公園を目指す。終点に着いた時点で、東京フリーきっぷの対象3社の内、東京都交通局の制覇が完了したことになる。
見沼代親水公園は、東京23区の最果ての地で、乗り換える鉄道はないので、素直に乗ってきた電車で折り返すことになる。
他に乗車する客もほとんどいないので、一番先頭の特等席に座って、前方の東京スカイツリーを眺めながら日暮里に戻る、
荒川区・日暮里駅
戻ってきた日暮里で、常磐線に乗り換えて北千住を目指す。今回の乗り換えは、久々に余裕のある6分乗り換え。トイレにもゆっくり立ち寄ることができる。
北千住から先、金町までの常磐線は制覇済みなので、これで常磐線も終了。JRの残りは、京葉線と中央線のみ。
(メトロ 日比谷線 20.3km) 東急東横線 中目黒-渋谷間のきっぷ 47. 中目黒 22:17発 和光市行 → 和光市 22:58着
(東急 東横線/メトロ 副都心線 22.4km) 和光市 23:04発 急行 池袋行 → 池袋 23:17着
(東武 東上線 12.5km) 48. 池袋 23:20発 新木場行 → 新木場 23:52着
(メトロ 有楽町線 16.8km)
足立区・北千住駅
北千住の乗り換えは3分間だが、常磐線は千代田線よりも日比谷線に近いため、3時間前の北千住乗り換えよりはかなり楽。前回とは違い、ホームにたどり着いたときには、日比谷線がおいらの到着を待ちわびていた。
さすがに東京とは言え、この時間になると座席にも空きが目立つようになり、各ロングシートに多くて数人座っているような状況である。
目黒区・中目黒駅
なぜか、定時よりも1分以上早く、終点・中目黒に到着。これにて日比谷線も終了。東京メトロの残りは、副都心線と有楽町線のみとなる。
副都心線へは、隣のホームから発車する東急東横線に乗車すれば、そのまま直通してくれる。
ただし、東急線は東京フリーきっぷの範囲外のため、別料金が必要。かといって、この駅からSuicaで入場してしまうと、降りるときに精算が必要になり時間をロスすることになるので、なるべく切符を購入してしまいたいところ。
乗り換え時間の間に、東京フリーきっぷで出場し、(東急と東京メトロの境界駅である)渋谷駅までの切符を購入する、という難題をさらりと成し遂げ、無事に東横線への乗り換えに成功。
これで、この電車を含めてあと5本(+東京フリーきっぷ範囲外1本)でゴール。スタートから18時間にして、はじめてゴールができそうな予感がしてきた。
和光市・和光市駅
久々に東京都外の埼玉県・和光市に脱出。東京フリーきっぷの範囲に東京都外は2カ所あるが、東京23区外の東京都内はなぜか1ヶ所もない。
ここで、有楽町線に直通する電車を捕まえたら東京メトロが終了するのだが、タイミング的に都合の良い電車がないので、一旦、東武東上線で池袋に移動し、池袋から有楽町線を捕まえることにする。
東武東上線は隣のホームなのだが、またしても、東京フリーきっぷで改札を出場し、Suicaで入場し直すという反復横跳びのような荒行を強いられることになる。
豊島区・池袋駅
池袋駅直前で東上線が失速し、微妙に1分ほど遅れて終点池袋駅に到着する。予定していた乗り換え時間は3分だったので、いくら有楽町線が近いと入っても、かなり焦る。脇目も振らずに階段を降り、東京メトロ有楽町線の改札へ向かう。
これで、池袋の乗り換えは本日4回目。しかし、全部合わせても滞在時間はわずかに十数分。池袋を駆け抜ける男として、歴史に名を残した予感がする。
さて、これでゴールまであと4本。いよいよ、声高らかにカウントダウンできるところに辿り着いた。
(JR 京葉線 3.2km) 50. 葛西臨海公園 0:00発 東京行 → 東京 0:14着
(JR 京葉線 10.6km) 中央線が15分ほど遅れている 51. 東京 0:19発 高尾行 → 西荻窪 0:56着
(JR 中央線 20.6km)
江東区・新木場駅
有楽町線の終点・新木場駅に到着。これで、東京メトロ全9線を制覇。残りは、JR京葉線、中央線のみ。残り3本、時間にして1時間半でゴールテープを切ることができる。
新木場から京葉線に乗り換えるのだが、京葉線の都区内区間の終端は、1駅千葉側の葛西臨海公園駅。たった1駅間だが、終電が近くなったこの時間、電車の本数も少なくなり時間がかかるようになってくる。
江戸川区・葛西臨海公園駅
新木場から一駅、葛西臨海公園に到着。残り2本。折り返して、京葉線の起点・東京駅へ戻る。
東京へ戻る電車は、到着と同時刻に発車する電車か、その次の15分後に発車する電車となる。同時刻の電車は乗れない可能性が高いと踏んでいたのだが、運よく捕まえることができた。結果として、予定より15分早い電車に乗れたことになる。この旅の最後に来て、時間の余裕が生まれた。
千代田区・東京駅
本来は、東京駅の地下ダンジョン奥深くの京葉線ホームから、天空の中央線ホームまで7分間で移動するという最後の荒行が待っていたのだが、1本早い京葉線を捕まえたおかげで、余裕の行軍となった。
駅中の店もとっくに閉まっていて、新幹線も終了している。いつもの喧騒がうそのように静まり返った東京駅のコンコースを、中央線のホームに向かって淡々と歩いていく。
長いエスカレーターを上がって、他よりも高い位置にある中央線の高架ホームに向かっていると、なにやら「電車が遅れている」との放送が聞こえる。
しかしながら、次に乗る電車が本日最後の乗車。運転打ち切りにさえならなければ、どれだけ遅れても問題なし。「いくらでも待ちますがな」という心境である。
で、ホームに上がって、行き先案内表示を見ると、そこには、驚愕の事実が記されていた。
なんと、2本前の電車がまだ出発していないのだ。何のことはない、結果論的には、4時間前に日暮里で1分乗り換えなどにチャレンジしなくても、終電に間に合ったのである。
未だ出発しそうにない電車に乗り込み、発車を待つ。この電車が出発し、無事、中央線の都区内境界駅・西荻窪に到着したら、東京フリーきっぷ完全制覇の達成となる。
結局、電車が出発したのは、0時33分。本来の終電の時刻、0時35分と変わらない時間となった。
これで、JRのおっさんが急にストライキでも始めない限りは、40分後に無事にゴールとになるはずである。
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