ヨーロッパとアジアを結ぶ国際列車が行きかっていた戦前の鉄道黄金期に思いを馳せながら、ヨーロッパの駅舎を巡る旅。
ワルシャワからベルリンに向かう途中、ポーランドの古都・ポズナンに立ち寄る。
- #1 ワルシャワ
- 特別編 1939年 欧亜大陸鉄道の旅
1939年時点の鉄道の時刻表を元に作成した仮想旅行記 - 欧亜大陸鉄道
1939年時点の鉄道の時刻表を元に作成した仮想乗換案内サイト - ルートマップ(Google Maps)
ワルシャワ Centralna 駅から出発
文化科学宮殿の上の方が見えない (左) コンコースの出発案内板 乗車する列車は 3番ホームから出発
(右上) Centralna 駅コンコースのコンビニ 日本と比べると品数はかなり少ない
(右下) コンコースのCOSTA COFEE ヨーロッパどこでもスタバ以上の存在感がある (左) プラットフォーム
(右上) 各ホームに二つの数字があるが、ホームと番線を表している
(右下) 指示された位置に列車が止まらず、みんな慌てて走り出すの図 EICの座席指定券
座席の番号が56なのはわかるが、車両が272号車とはこれいかに?
ワルシャワ・Centralna 駅
本日はワルシャワからベルリンまで鉄道で移動するのだが、その途中、ポーランドの古都・ポズナンに立ち寄ることにする。
朝、昨日見学したワルシャワの Centralna (中央)駅を8時27分に発車するベルリン行の Express InterCity(EIC) に乗り込む予定である。
本日の天気は小雨が降る曇り空、昨日は見えていた文化科学宮殿の展望台が靄がかかって見えなくなってしまっている。
今回の旅では Eurail Pass と言う外国人向けのヨーロッパの鉄道の乗り放題チケットを利用している。乗り放題と言いつつも、一部の特急列車は別途予約が必須となっていて、その際に追加料金が必要になったり、 Eurail Pass で乗車可能な席数が限られていたりする。
今回乗車する列車はワルシャワ国内なら座席指定必須、ドイツまで行く際はさらに追加料金が必要というややこしい列車だった。
従って、ポズナンまでの列車は座席指定、ポズナンで観光後、ベルリンまで行く列車はあらかじめ追加料金を払って乗車券を購入していた。
はずだったのだが...。
この切符がやっかいで、通常ヨーロッパの鉄道切符はオンライン化されており、QRコードを見せるだけでよいのだが、この切符に限り"紙"の切符が必要となるらしい。
そこで、紙の切符を事前にワルシャワのホテルに送っていたのだが、ホテルでは「そんなの受け取ってない」と言われてしまう。
仕方なく切符を買いなおすのだが、Eurai Passの追加料金という形では買えず、通常料金で買うことに。Eurail Passが無駄に...。まあ、仕方がない。
Centralna 駅に到着後、まず目的の列車の出発ホームを確かめる。が、こんな簡単なことでまず躓いてしまう。
駅の出発案内表示には"3"という数字がかかれていてホームの番号だと思ったのだが、いざホームに行こうとすると、それぞれのホームに二つ数字がつけられている。しばし悩み、隣のホームなどを覗いてみて、なんとか謎が解けた。Centralna 駅には島式ホームが並んでいるのだが、各ホームとその両端の線路に別々の番号が付いているのである。二つの数字は、X番ホームのY番線という意味らしい。
謎が解けてなんとか3番ホームに降りたのだが、ここでまた一つ疑問が沸く。自分の乗る車両はホームのどの辺に停車するのか? という謎である。
日本の列車だとX号車と書かれていれば、どっちが先頭かはともかく先頭から何両目かは分かるのだが、こっちはそう簡単ではない。乗る車両の番号は"272"と書かれている。もちろん全長272両以上の長大列車ということではなく、車両の番号は先頭から1となるわけではないということである。これでは先頭の方なのかどうかすらさっぱりわからない。
だが、この謎は、たまたま同じ列車に乗り合わせることになった外人と話をしているうちに解明した。ホームのモニターに列車の配列とホームの停車位置が書かれていたのだ。どうやら俺が乗る列車は先頭から2両目で、ホームの1セクションという場所に止まるらしい。偶然、その外人も同じ車両だったので、二人で1セクションで列車の到着を待つことになった。
列車を待つこと十数分、定刻通りに列車はやってきた。
だが、列車は1セクションの遥か手前で停車した。1セクションのホームの目の前は線路であり、車両はいない。
なんらかの都合なのか、はたまた停車位置が超適当なのかは定かではないが、ホーム上のほとんどの乗客は、荷物を抱えてあわててホームの後方へ2両分ほど猛ダッシュすることになった。うむ、ヨーロッパの列車の乗車はなかなかハードルが高い。
ワルシャワ・Centralna 駅
乗るまではバタバタしたが、乗ってしまえば列車は快適。
機関車が客車を引くスタイルの列車なので、日本の列車と違いモーター音が全くせず、振動もほとんどない。車内アナウンスがないこともあり、気が付いたら列車は Centralna 駅を出発していた。
日本では客車はほぼ全滅しており、俺自身、今は亡きトワイライトエクスプレスや観光列車ぐらいしか乗ったことがないのだが、出発時に連結器同士が引っ張り合うガチャガチャという音と振動があったように思えた。しかしながらヨーロッパでは連結器の違いもあるらしく、本当に全く無振動で静かに動き出す。こんな列車に乗ってしまうと、日本の列車がうるさく感じるようになってしまう気がする。一方、車内は日本と違って大声でみんな話すので、うるさいっちゃあ、うるさいのだが、それは別の話ですな。
今回、奮発して1等車用の Eurail Pass を使用している。中央の通路を挟んで1列-2列の並びなので、座席はかなり広々としている。新幹線のグリーン車以上の占有スペースはありそうである。
唯一残念なのが、こちらの車両は基本、シートが転換しないため、後ろ向きの座席に座らせられた場合、それをあがなう術がないということ。俺、後ろ向きに乗るとたまに酔うのだが、ヨーロッパ人は酔わないのだろうか??
なお、座席の向きは車両の中央に向かい合って並べられたお見合い方式かボックスシートとなる。ボックスシートを妙な団体で囲まれた場合おそらく地獄が待つことになると思われる。
今回の車両は集団お見合い形式、幸いにも前向きの座席が割り当てられた。しかも、中央のお見合い部分の2列シートが指定されたにも関わらず、前にも横にも誰も座らなかったので、実質4席を占有することができた。ありがとう、PKP(ポーランド国鉄)!
出発してしばらくすると車掌が検札にやってきた。Eurail Pass はスマホアプリで購入しており、スマホ上のQRコードが切符となっている。スマホの画面を見せると、車掌が端末でQRコードをスキャンし検札完了。便利なものである。
さらにそのあとは、飲み物が詰め込まれたワゴンを押したキャビンアテンダントがやってきた。車内販売かと思いきや、1等車の乗客はウェルカムドリンクとしてドリンクが1本無償で配られるらしい。単語力に乏しい俺はとっさに「うぉーたーぷりーず」と言ってしまったのだが、タダならもっと高そうな飲み物をもらっておけばよかった。
列車には食堂車が併結されていて、軽食を頼むことができる。のだが、何が頼めるのかよくわからず、プレッツェル的なお菓子を買って自席にもどった。プレッツェル的な奴は見た目通りシンプルな塩味で、トマトプリッツ食いてぇと思わざるを得ない味であった。
途中の車窓はずーっとこんな感じ
Główny
右側に巨大なショッピングモール AVENIDA が併設されている。 コインロッカーと、なんだかかっこいい鍵
ポズナン・Główny 駅
3時間ほどの列車の旅を終え、ポズナン Główny (メイン)駅に到着。ワルシャワからポズナンまでの距離は300キロ弱なので、高速新線じゃないことを考えるとかなり早い。
途中、あまり街を通ることはなく、気のせいが景色がほとんど変わらなかったなぁ。
さて、ポズナンは中世のポーランド王国の最初の首都である。現在でもポーランド西部の大都市として栄えている。
1938年の時刻表を見てみても太字でPOZNANの文字が書かれていて、重要な駅であったことがわかる。この路線図だが、よく見てみるとポズナンがポーランドの西端の都市として描かれている。一方、現在のポズナンは、ドイツ国境から150キロ以上離れており、西端とは言えない位置にある。
この原因は、現在のポーランドと戦前のポーランドの国境線の違いにある。第二次大戦後、ドイツは国土を縮小され、ポーランドの国土が150キロほど西進した。一方で、東側は戦後ベラルーシーに大幅に割譲されることになり、200キロほど国土が縮小している。ざっくり言えば、戦前と戦後でポーランドは国土全体が西へ150-200キロほど移動しているのだ。
島国に住む我々には想像しにくいが、ヨーロッパでは長い歴史の中で常に国境線は引き直されているのだ。
そんな激動の時代を潜り抜け、ポズナン Główny 駅は19世紀から変わらず現在の位置にあるのだが、駅舎は21世紀になってから完全に建て替えられており、かつての面影は全く残っていない。
現在の駅舎は、隣接する巨大なショッピングセンターと一体化しており、とんでもなく巨大な外観をしている。
ポズナンでの滞在時間は4時間ほどの予定。この間に旧市街を見学して、15時26分の列車に乗ってベルリンに向かう。
この時、駅のコインロッカーに荷物を預けたのだが、コインロッカーのカギが日本では見たことないタイプのなんだか禍々しいデザインだった。コインロッカーに魔物を封印できそうな雰囲気だが、封印したのは俺の着替えが詰め込まれたスーツケースである。
ポズナン旧市街
ポズナン・旧市街
ポズナン旧市街へは市電を2本乗り継げば、20, 30分でたどり着けるはずだったのだが、なんだか降りる場所を間違え、そこからのリカバリーに手間取り、ずいぶん遠回りをして1時間ほどかかってたどり着いた。
ポズナンの旧市街は、ヨーロッパらしく石畳の広場を囲むように様々な歴史的な建物が立ち並んでいる。
はずだったのだが...、広場はむっちゃ工事をしており、工事の策越しに建物をのぞき込む形となってしまった。
ポズナンの旧市街地もワルシャワ同様に第二次大戦時にほぼ破壊されてしまったため、戦後再建されたらしい。旧市街のシンボルとなっているのが旧市庁舎で、現在は博物館として公開されているはずなのだが、広場の工事と合わせて工事を行っているらしく、立ち入ることができなかった。
う~ん、まさか大規模工事中とはリサーチ不足。外国のタイムリーな情報を得るのはなかなか難しいですな。
仕方がないので、広場近くのカフェでコーヒーを飲みながらティラミスをいただき、Główny 駅に戻ることにした。
人身事故?
その後、20分、120分、150分、180分と... フードコートで食べたケバブ ベルリンの店らしい ヨーロッパのトイレは基本有料
入口にゲートがあり、購入したチケット(右)をかざして入場する
ポズナン・Główny 駅
行きは苦労したのだが、帰りは路面電車を乗り継いで、あっさり Główny 駅に戻ってきた。
コインロッカーに預けた荷物を取り出して、コンコースの出発表示板で出発ホームを確認しようとする。「5番ホームだな」とホームに降りるのだが、ホーム側の電光表示板に乗るはずのベルリン行きの列車がいつまでたっても表示されない。
出発時間が過ぎ、いよいよおかしいとコンコースの出発表示板を再確認すると"10 mins delay"(10分遅れ)と表示されていた。
ふむふむ、遅れているのかと待っていると、遅れ表示が20分になり、ついに120分遅れになった。
こりゃどういうことだと情報収集したいのだが、アナウンスのポーランド語はわからんし、窓口は長蛇の列。ネットでいろいろ情報をあさると、どうやらポズナンのすぐ手前で、乗る予定だった列車が人身事故を起こし、足止めを食らっているということが分かった。
これは腹を据えなくてはならんと、駅に隣接しているショッピングモールでケバブを食いながら時間をつぶすことにした。
ところで、ヨーロッパの公共トイレはショッピングモールの中と言えども有料である。料金は2zł、約60円。チケットを購入し、入り口でバーコードをかざすと中に入れるようになる。大体どこでもこの仕組みで料金も同じくらいである。このあと何度もここのトイレに行くわけだが、そのたびにチケットを買うことになる。つくづくクレジットカードのタッチ決済で片付く時代でよかったと思う。トイレに入る度に小銭をがちゃがちゃと用意したらキリがない。
ちなみに有料トイレはどこも掃除が行き届いており、きれいである。
ポズナン・Główny 駅
ケバブを食べ終わり、時間つぶしにショッピングモールをうろうろしたところで、ぼちぼち予定の時刻となるので、駅に戻ってきた。しかし、出発表示板には無念の "180 mins delay"の文字。
うーん。21世紀にもなって毎回毎回駅の電光表示で状況を確認するのもいかがなものかと、いろいろ調べたらPKP(ポーランド国鉄)のホームページに運行状況の表示を見つけた。それによると、最新の出発予定時刻は19時2分出発予定と書いてあった。
当初の出発予定時刻は15時26分なので、結局210分は遅れるということらしい。
コンコースは寒いので、再びショッピングモールで時間を潰すことにする。
が、この判断がどうも間違っていたらしい。
ポズナン・Główny 駅
18時半を過ぎたので、三度 Główny 駅に向かった。
改めて出発表示板を見てみると、なんと、そこに乗車予定の列車の表示が無くなっていた。
最後に出発表示板を見たときは180分遅れだったので、その時間は過ぎている。ホームページの運行状況を信じて19時前に戻ってきたのだが、もしかして出発してしまったのだろうか? あるいは運航中止になったのだろうか??
確認しようにも言葉の壁があり、しかも窓口は長蛇の列で並ぶ気は起きない。
一つ言えるのは、やはり出発表示板の見える範囲にいるべきだった。仮に運行中で列車が消えたのならば、その時点でアナウンスがあったはずで、アナウンスは聞き取れないにしても、周りの乗客に状況を英語で聞くことはできたはずだ。
といっても後の祭りなので、仕方なく次のベルリン行きの列車の切符を買いなおすことにする。
ホテルで紙の切符を受け取れず、さらに列車に乗りそこなって(?)、ついに3枚目の切符を購入する。結局、この区間では Eurai Pass は役に立たず、トータル通常の3倍お金を払うことになってしまった。
ベルリンへ
(左下) 2等車はコンパートメント
(右) コンパートメント外の通路はすげー狭い ベルリン Ostbahnhof はほぼ閉店状態
ポズナン・Główny 駅
後続の列車も15分ほど遅れてポズナンに到着した。例によって乗車する車両が見つからず、さんざんホームをうろうろした挙句、なんとか出発前に自分の車両を見つけることができた。
ポズナンまで乗ってきた列車と基本的には同じ編成だが、切符を買いなおした関係でベルリンまでは2等車で移動することになった。(1等のEurail Passを持っているのになぁ...)
2等は6人掛けのコンパートメントとなっており、5人の若者に取り囲まれる形で座席に座ることになった。ただ、各々、黙々とスマホを見ていたりするので、それなりに気兼ねなく座っていたのだが、ドイツとの国境近くの駅で、6人中4人が降り、コンパートメントに俺と学生らしき女性の2人が取り残されてしまった。
しばらく無言だったのだが気まずくなり、なんとなく話を始める。オーストラリアから来た学生でベルリンで研究をするとかなんとか...。
ベルリン・Ostbahnhof 駅
ポズナンの出発も遅れたのだが、さらに前の列車が詰まっているらしく、ところどころ停車を繰り返しながら、定刻より40分遅れてベルリン Ostbahnhof (東)駅に到着した。
Ostbahnhof で降りる直前、同室の例の女性に荷物棚に載せた荷物を降ろしてほしいと頼まれた。荷棚にはバカでかいスーツケースが3つ乗っている。俺の荷物は足元にあるので、もしかするとそういうことなのかと、「この3つ全部?」と聞いたら、しれっとYESと言われた。
いや降ろすけどさ、むちゃくちゃ重いんだよ、3つとも。彼女はこの先どうやってこの巨大なスーツケースを3つ運ぶのかとても不思議だったのだが、Hauptbahnhof (中央)駅まで行くという彼女を置いて、手前の Ostbahnhof 駅で俺は列車を降りた。
本当ならば日が沈む前に Ostbahnhof に着くはずだったのだが、時刻は22時を回ってしまった。もはや駅構内の店も大半閉まっており、行きかう人もほとんどいない。
いや、大変な一日であった。
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