知多半島から渥美半島や伊勢湾・三河湾の島々を経由して、志摩半島へ向かう船の旅。
船に置き去りを食らうというトラブルを乗り越え、なんとか渥美半島の先端伊良湖岬に到着。
ここからがこの旅のメインイベント・幻の航路(?)・神島観光汽船に乗り、神島へ出港する。
幻の(?)神島航路!
田原・伊良湖岬
出航時刻15分ほど前になると船長さんらしき人から「神島行きに乗船されますか?」と声をかけられる。いよいよ乗船開始である。
桟橋を進み、船に乗りこむ。船室は意外と広く、50人ぐらいは乗り込めそうな雰囲気。船内の壁には釣り上げられた魚の写真が多数貼ってあったので、釣り船としても活用されているらしい。
そんな魚の写真の合間に一枚の紙が貼られていた。そこには「神島観光汽船 船長のブログ 開始しました」と書かれている。
神島観光汽船、会社の公式サイトはないものの船長の公式ブログはあるらしい。ブログをみてみると、どうみても個人ブログだが、一応神島観光汽船の時刻表や運賃も記載されている。
うん、ブログより先に公式サイトじゃね? と、思わなくはない。
田原・伊良湖岬
定時をもって出航。ちなみに乗客はおいらの他に1名のみ。まあ需要もそんなにないかもしれないけど、もうちょっと周知活動をしないと...、いかんせん存在が知られてなさ過ぎだと思うんだよね。
伊良湖岬での強風とそれに煽られた波を見て船の揺れを懸念していたが、案の定そこそこ揺れる。
こんなこともあろうかと、船に弱いおいらのために、おいらの嫁さんがお手製・エチケット袋を用意してくれている。とはいえ乗船時間は15分。さすがに船酔いする間もなく神島がどんどん近づいてくる。
伊良湖岬から見たときも「神島って山だなぁ」と思っていたのだが、近づいてくるにしたがってその高さが増してくる。神島の最高標高は170メートル。横幅は1キロほどしかない島なので結構尖って見える。
神島観光汽船の船内 まあまあ揺れました
三島由紀夫に愛された神島
神島・神島漁港
なんとか船酔いすることもなく、無事、定刻通りに神島に到着。
上陸してみると、やはり島というよりは山という印象。港近くの観光案内板によれば、島一周は徒歩で2時間ほどとのこと。
神島の滞在予定時間は2時間半なので、2時間はなかなか納まりのよい時間。
時計回りで神島一周を始めてみる。
神島・八代神社
出発する前から薄々はわかっていたのだが、歩き出してすぐ目の前に現れたのが、どこまでも続く上り階段。この先に"潮騒"にも登場する八代神社があるはずなのだが、まったく先が見えない。
途中、八代神社入り口の鳥居を潜ったのだが、その先もやはり果てしなく続く階段。神島一周さんは、初っ端から難敵をぶつけてきてくださる。
階段をなんとか上りきった先に小さな神社が現れた。
神殿もその前に建てられた賽銭箱が置かれた建物も意外と新しそうで綺麗に維持されている。地元の方々に大切にされていることが伺える。
神島・神島灯台
神社で残りの道中の無事をお祈りし、神島一周を再開する。
神社を出てから島を周回する遊歩道までの道がわかりづらかったのだが、なんとか道を見つけることができた。
まだまだ続く上り坂を歩き続けると、急に視界が晴れ、目の前に海が広がってきた。海の向こうには伊良湖岬があり、さっき立ち寄った灯台や港を眺めることができる。
というか、海が見えるということは、そこは崖ということで、「海側は、がけになっていますので通行には注意してください」なんていう恐ろしい看板が数十メートル置きに設置されている。
のんきによそ見をしながら歩くわけにはいかないが、伊勢湾の景色をちらちらと眺めながら、延々と続く坂を上り続けると、今度は崖に上に建てられた灯台が見えてきた。
神島灯台は、明治末期に戦艦・朝日が伊勢湾入口の伊良湖水道で座礁したことから設置された日本で2番目の電気式の灯台なのだそうな。
この灯台もやはり"潮騒"に登場し、主人公の二人が仲を深める重要な場面となっている。
神島・監的哨跡
灯台を後にすると、道は再び森の中に入って行き、またしても上り階段に行く手を阻まれる。灯台辺りが頂上で、あとは下るものだと勝手に期待していたのだが甘かった。5分ほど歩いた先の島の東端あたりでようやく頂上にたどり着く。まだ3月だというのに、すっかり汗だくである。
ここから先はお待ち兼ねの下り階段で、あとは港に戻るまで基本的には下り基調となる。
階段を下りていくと、再び海に向かって開けた場所にたどり着く。そこにはコンクリートむき出しの古い建物が残されている。
かつて監的哨(かんてきしょう)と呼ばれたこの建物は、旧陸軍が伊良湖岬から放った大砲の試射弾の弾着地点を観測した施設なのだそうな。
中に入ることもできて、2階建ての建物の屋上に上がると確かに伊良湖岬とその先の太平洋を広く見渡すことができるようになっている。
この監的哨、"潮騒"の中で主人公とヒロインが、あーだこーだあって、いい感じになる場所としても有名。"潮騒"は何度か映画化されているのだが、前半のハイライトシーンとして必ずこの場所が登場する。
雨に降られてしまったので、しょうがないから服を脱いで乾かすという中二病患者垂涎のシチュエーションの中で、ヒロインが監的哨の中で焚かれた焚き火を指して、「その火を飛び越して来い」というシーンがある。
実際の監的哨の中にも火を焚くらしき場所があり、そこを飛び越えれば「潮騒ごっこ」ができる。(もちろん、実際に焚き火をしてはダメ)
とりあえず、おいらも一人で「その火を飛び越して来い」と「潮騒ごっこ」をやってみた。
その経験をこの場を借りて語らせて頂けるならば、
「おっさん一人でぴょんぴょん飛び跳ねても、なんも楽しくはない」
ということを、強く主張しておきたい。
監的哨の近くのベンチでしばし休憩をとり、島一周の旅を再開。
階段を降りていくと、行く手にカルスト地形が見えてくる。小さな砂浜があり、その周りを白い切り立った岩が囲んでおり、美しい地形となっている。カルスト地形の間には、ニワの浜という小さな砂浜があり、海女さんがここで作業をするらしい。
ここからさらに15分ほど歩き、小さな山を一つ越えると元の港へ戻っていくことができる。
鳥羽へ
(鳥羽市営定期船)
菅島の漁港から夕日を眺める (上)菅島 17:20 発 → 佐田浜(鳥羽マリンターミナル) 17:33 着
(鳥羽市営定期船)
(下)佐田浜の鳥羽マリンターミナル
神島・神島漁港
漁港に戻って神島一周は完結。次に乗る鳥羽市営連絡船の出航を待つ。鳥羽市営連絡船も神島観光汽船と同じ桟橋から出発するらしい。
やがて神島観光汽船と比べるとずいぶんと大きな船が現れたので、それに乗り込み次の島を目指す。
菅島・菅島漁港
乗った船は鳥羽行きの船なので、そのまま鳥羽まで乗っていってもよかったのだが、まだ日没まで多少時間があるので、船が立ち寄る菅島で下船してみることにした。
菅島は鳥羽の沖合3キロに浮かぶ島。海岸線長13キロと今回渡ってきた島の中では飛びぬけて大きい。すぐ向かい側にさらに大きな答志島があり、答志島と志摩半島に挟まれるような形で位置している。菅島には観光資源は余りなく、知名度も高くない。おいらも正直、島の名前を聞いたことがなかった。
そんな菅島に上陸してみたものの次の船で鳥羽に向かわなくてはならないので、滞在時間は1時間ほどしかない。港に掲げられた観光案内板を見てみたが、この時間内で往復できそうな場所はなさそうなだった。
そんなわけで、とりあえず港の周りをうろうろしてみることにする。
漁業の島ということで、港内には多数の漁船が浮かび、岸壁では海苔が干されていた。日没間近という時刻のせいか、原付にのった若者が5人ほどと、干した海苔を片付けている女性ぐらいしか人を見かけなかった。
漁港の沖には防波堤のための人工島と思われる沖ノ島があり、橋で菅島と繋がっている。アーチ状の橋の上から夕陽がきれいに見えた。
夕陽を見ているうちに、さきほどよりもさらに大きな双胴船が入港してきた。どうやらこの船がおいらが乗る鳥羽行きの船らしい。
鳥羽・佐田浜
菅島から鳥羽まではわずか10分余り。
リアス式海岸を眺めているうちに、あっという間に鳥羽・佐田浜乗り場に着いてしまう。
鳥羽の市営船のターミナル・佐田浜のりばは鳥羽駅から徒歩5分ほどと。なかなか便利な場所にある。
ただ鳥羽の駅前はなかなか寂れてきていて、かつてパールビルというおみやげ物屋さんが入っていたビルがあったのだが、これが廃墟になってしまっている。昔、子供の頃、鳥羽の駅前のビルの中にあったお化け屋敷に怖くて入れずに泣き叫んだ記憶があるのだが、それはこのビルだったのだろうか?
もひとつおまけに、津エアポートライン
鳥羽・鳥羽駅
無事鳥羽に着いて伊勢湾周遊という所期の目的の達したのが、おまけにもう一つ、伊勢湾を横断する船に乗船しておく。
伊勢湾の真ん中には中部国際空港・セントレアがあり、その対岸の津から空港へのアクセス船が出航しているのだ。
かつては三重県から四日市、松阪と合わせて3航路、中部国際空港へ船が出ていたのだが、鉄道、バスとの争いに負けたのか、今ではこの一航路しか残っていない。
鳥羽からは当ブログおなじみの近鉄特急で津に向かい、そこからパスで”津なぎさまち旅客ターミナル”へ向かう。
バスで10分程でターミナルに到着。ここから空港まではわずか45分、電車やバスに比べても半分ぐらいの時間なのでかなり競争力はあるはずなのだが、経営は厳しいという噂を度々耳にする。
鳥羽・津なぎさまち旅客ターミナル
静かな待合室で乗船を待った後、登場開始のアナウンスがあり船内に移動する。時間帯が遅いせいもあるかもしれないが、この日も乗客はわずかに5名ほど、そもそも三重方面から空港に向かう絶対数が少ないのだろうか?
伊勢湾の奥に入ったせいなのか波はすっかり穏やかになっていて、船は快適そのもの。双胴船が海上を滑らかに疾走していく。
ちょっとウトウトしかけているうちに、伊勢湾の対岸、常滑沖に造成された中部国際空港島に到着した。
快適な船旅だっただけに、なぜ利用客数が増えないのかとても不思議である。
無事、知多半島へ帰還
常滑・中部国際空港
中部国際空港の船着場は、島の東端、空港ターミナルから見て電車やバスが発着するアクセスターミナルの向こう側、ホテルエリアの脇にある。
ターミナルからやや離れているが、それでも徒歩5分の距離である。
船着場は閑散としていたが、アクセスターミナルに着いたら、まだまだ飛行機の発着の続く時間ということで、かなり賑わっている。
伊勢湾の船の旅はこれで完結ということで、名鉄に乗って名古屋に帰るとする。
知多半島の東側・河和港からスタートした船旅は、ぐるりと伊勢湾を一周りして知多半島の西側・中部国際空港にて終了。
いつものことながら、船に乗ることがメインとなって島の観光を余りしていないことが心残りではあるものの、それはまた別の機会ということにする。
天気もよく、船酔いもしなかったので、海やら陸やらを気持ちよく眺めることができた。
何よりも「神島観光汽船」が実在していることもわかったのが一番の収穫。
神島へ行こうと思っている皆様、神島へは伊良湖岬からも船が出てますよ!
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