2023-06-23

台北捷運全線一日制覇 (前編)

台北捷運 全線一日制覇 2023/6/3

 この春にLCCのPeachから弾丸運賃というのが発売された。0泊で往復すると運賃が割安になるという謎システムである。
 この運賃に名古屋-台北便が設定されたので、週末に往復しようとさっそくチケットを入手した。金曜日の深夜便で翌土曜日未明に台北に到着し、その日の深夜便で名古屋に帰ってくるという0泊3日の日程である。
 現地の滞在時間は25時間10分。この日程で何をするかと考えると、答えは一つで、まだやってなかった台北の地下鉄の全線制覇しかない!(いや、他にもあるはずだ...)

 台北の地下鉄は台北MRTや台北メトロと呼ばれているが、漢字では台北捷運(日本語読みで「しょううん」と言ったりする)と書く。6路線、全長146.2キロメートル。調べてみると、半日ちょいで回ることができる。
 一日あればもうちょい欲張って、台北市の周りを囲んでいる新北市の軽軌(ライトレール)の2路線(17.22キロ)も組み込めそう。さらに台北捷運が運営しているロープウェイ・猫空纜車(ゴンドラ)と台北と台北桃園国際空港を結ぶ空港鉄道・桃園MRTを加えて218.48キロを回ることにした。
 今回は、海外なのでルートが分かりにくいかと思うので、ルート紹介の動画も作ったので、まずはルート紹介から。

台北捷運全線一日制覇コース

環状線からスタート

猫空ロープウェー1日カード #1 環狀線 新北産業園区 - 板橋 (大坪林 行)
常滑・中部国際空港

 名古屋・中部国際空港を出発するは夜23時15分、金曜日仕事を終えてから空港に向かう。中部国際空港はコロナ後の航空便の回復が遅く、深夜便はピーチの台北便の一便のみ。空港内はゾンビがウロウロしていないことが不自然に思えるほどがらーんとしていた。
 一方、台北は台北で到着する時刻が1時25分と中途半端で、やはりあまり人がいない。
 かつては桃園空港から台北市内に向かうバスが24時間体制で運航されていたのだが、空港鉄道の開通以来運行本数が減り、深夜便の運航は取りやめとなった。かといって鉄道が動いているわけではないので、空港から脱出する手段はタクシーに限られる。
 タクシーで台北市内に向かってもよいのだが、どのみち台北捷運の始発までは動けないので、朝まで空港で待機することにした。

新北・新北産業園区駅

 空港内のカプセルホテルで仮眠した後、早朝の始発便で、空港から桃園捷運に乗り、台北捷運環状線の新北産業園区駅に移動。ここから、いよいよ台北捷運一日制覇を開始する。
 まずは、新北産業園区駅の窓口で今回の旅行で使用する切符を手に入れる。今回の旅行は台北捷運、新北軽軌、桃園捷運、猫空纜車の乗車が目的だが、合間にショートカットのためにバスも利用する。これらの路線のうち、台北捷運、猫空纜車、バスをカバーする一日乗車券猫空ロープウェー1日カードが販売されているので、スマホの画像を見せながら、身振り手振りで購入した。料金は350台北ドル。猫空纜車が往復240台湾ドルなので、地下鉄5回ぐらい乗れば元が取れる計算となる。
 きっぷがすぐに買えるかどうかが不安要因の一つつだったのだが、すぐに対応してくれた話の早い新北産業園区駅の駅員さんに謝謝!
 なお、環状線はこの春から運行主体が台北捷運から新北捷運に移行したらしのだが、駅の路線図とかには普通に台北捷運の路線として載っているし、料金体系も統一されているので、今回の旅では環状線は台北捷運の一路線として扱うことにする。

 2020年に開業したばかりの環状線は、台北捷運で一番新しい路線。全線が高架路線で無人で走行している。車両は真新しく、桃園捷運と繋がっているせいかスーツケース置き場もある。
 といっても環状線に乗るのはまずは2駅間のみで、板橋駅で板南線に乗り換えるために下車する。1本目の列車はわずか数分で終了。

板南線

#2 板南線 板橋 - 頂埔 (頂埔 行) #3 板南線 頂埔 - 南港展覧館 (南港展覧館 行)
新北・板橋駅

 板橋は台北市のお隣の新北市にある街。台湾の国鉄である台鉄や台湾新幹線・台湾高鉄が乗り入れる板橋駅がある。
 これから乗る板南線の板橋駅は台鉄の駅のすぐ横にあるのだが、環状線の板橋駅は少し離れた場所にあり、改札外の乗り換えが必要となる。
 高架の環状線のホームから地上に降り、公園に面した道を歩くこと5分で板南線の駅に到着する。まだ早朝なのだが、さすがは台湾、30度ぐらいはありそうな熱さで、じんわりと汗をかいてしまった。
 板南線は「板」橋と「南」港駅を結ぶ路線。ややこしいが「南港」の方が北(正確には北東というべきか)に位置している。最初に開業したのは1999年だがその後徐々に延伸し、現在の路線になったのは2011年である。全線がほぼ台鉄、高鉄に並走しているので、途中3駅が両線との乗換駅となっている。
 板橋と南港を結ぶと書いたが、両端ともさらに何駅か路線が伸びているので、まずは板橋駅から南に延びている部分を片づける。

 板南線の板橋駅は普通の地下駅なので、エスカレーターを乗り継いで地下のホームに向かう。
 台北捷運は、全駅ホームドア設置済み。今どきの駅はどこもそうだが、車両が良く見えないのが難点だよね。
 板南線の南の終点は頂埔駅。頂埔駅行きと行先を確認して列車に乗り込む。

新北・頂埔駅

 板橋駅から15分ほどで終点・頂埔駅に到着。頂埔駅に着いたら、すぐに折り返しの列車が出発するので急いで列車に飛び乗のり、反対側の終点・南港展覧館駅を目指す。

文湖線

#4 文湖線 南港展覧館 - 動物園 (動物園 行)
台北・南港展覧館駅

 頂埔駅から約1時間で終点・南港展覧館駅に到着。約30キロの板南線を制覇完了。まずは一路線片づけることができた。
 南港展覧館は国際展示場らしいのだが、当然そんなものには目をくれず、次の路線を目指す。板南線の次に乗車するのは文湖線。文湖線もまた南港展覧館駅が終点となっているので、無駄なく乗り潰すことができる。
 両線は改札内で乗り換え可能だが、板南線は地下で、文湖線は高架なので、延々とエスカレータを登って乗り換えることになる。
 文湖線は台北捷運で最初に開通した路線。他の路線と違いゴムタイヤの車両で、自動運転となっている。各車両は小さく、貫通路がないため、車両間を移動することはできない。その代わりというわけではないが、車両の端まで座席があり、先頭車両に乗ると前面展望を謳歌することができる。
 当然、最前列のかぶりつき座席を確保し、出発を待つ。

 ゴムタイヤということで、乗り心地はポートライナーなどの日本の新交通システムとよく似ている。静かと言えば静かなのだが、意外と小刻みに揺れる。
 ほぼ全線高架なので、眺めがとてもよく、前面展望の醍醐味を存分に味わうことができる。
 郊外にある南港展覧館から市街地に向かって走行するため、徐々に建物が高くなり、数も増えてくる。途中、台北松山空港の真下を通るため、松山空港駅の前後のみが地下路線となる。その後、再び高架路線となると、しばらく空港の誘導路と並走するルートとなる。
 タイミングよく飛行機が横を走っていたので、見事なランデブーとなった。チャイナエアライン、ナイスタイミング!

台北捷運 文湖線 前面展望

猫空纜車

(左上) ゴンドラが連なるロープウェイ
(右上) 猫空纜車の路線図と標高 途中駅が二つある
(下) 猫空から台北市街地を見下ろす #5 貓空纜車 動物園站 - 貓空站 (貓空站 行)
#6 貓空纜車 貓空站 - 動物園站 (動物園站 行) ロープウェイの駅の前のバス停でバスを待つ
台北・動物園駅

 1時間弱で30キロ弱の文湖線の終点・動物園駅に到着。2本目の文湖線を制覇。
 動物園は文字通り台北市立動物園の正門の目の前。動物園駅というと春に行ったベルリンの動物園駅を思い出したのだが、風景や列車は変われど、親子が手を取り合って動物園を目指す姿は変わらない。
 だが、俺の目指す目的地は動物園ではなく、その反対側に乗り場のある猫空纜車(ゴンドラ)、ロープウェイである。ロープウェイというと山にある大きな2台のゴンドラが交互に行きかう交錯式をイメージするが、こちらのロープウェイは箱根ロープウェイやスキー場で見かける多数の小型ゴンドラが行きかうタイプ。
 長さはなんと4キロ越えで、途中に駅が二つもある。
 30分ほどの時間をかけて4キロ進む間にぐんぐんと270メートルほどの標高を登っていく。

 文湖線と猫空纜車の駅は徒歩5分ほどの距離があり、歩いて移動する。板橋駅で歩いた時よりも気温が上がっているようである。
 猫空纜車沿線には観光スポットがいくつかあるため、乗車するのために少々列に並ぶ必要がある。列は通常のゴンドラと床がクリスタルのゴンドラとの二つに分かれている。クリスタルの方が人気のようなので、サクサク乗れる通常のゴンドラ列に並ぶことにする。
 並び始めてから10分ほどで、最前列に到達した。ゴンドラは6人乗りなので、おひとり様の俺は当然に相席となる。
 組み合わせは俺、ソロのおっさん×2、外国人観光客一家3名という組み合わせとなった。ゴンドラの片方におっさん3人が詰め込まれたのだが、クラスの陰キャ3人衆のポジションでなんとなく居心地が悪い。
 まあ、30分の我慢だと思ったのだが、ゴンドラにはクーラーがなくじんわり暑く、そのせいなのか時間が進まない。
 動物園駅を出発したゴンドラは一気に高度を稼いでいき、文湖線の線路がみるみる小さくなる。
 10分ほどで最初の駅、動物園南駅に到着。駅に到着するとゴンドラの速度が落ち、扉が勝手に開く。駅で乗り降りする人はあまり多くないが、乗る人は隙間を見つけて詰め込まれるというシステムのようである。
 動物園南からはいくつかの山を登ったり降りたりしながら進んでいく。振り返ると台北市街も見えるようになり、台北101ビルも見えてくる。
 さらに進むとロープウェイは右に90度向きを変える。ゴンドラは駅と同じく一度ロープから離れて速度を落として移動した後、別のロープにつかまることで角度を変えるようである。つまり猫空纜車は、2本のロープウェイを乗り換えることなく乗り継ぐことができるという優れものの仕組みになっているようだ。
 次の駅は、指南宮駅。指南宮とは道教の寺院らしい。ここで、ソロのおっさん×2が下車したので、ゴンドラの密度が33%薄まり、ゴンドラ内の気温も体感2度ほど下がった。
 指南宮駅から終点の猫空までは5分ほど。最後のもう一押しで高度を上げて猫空駅に到着した。

台北・猫空駅

 猫空は台北の街が一望できる展望ポイント。周辺には茶藝館が点在しており、お茶を飲みながら景色を楽しむことができる。
 が、先を急ぐ俺はすぐにロープウェイで下っていくことにする。
 西洋人の団体様数十人がゴンドラ入り口に向かって歩いてくるのが見えたので、その団体に巻き込まれないよう早足で下りのゴンドラに向かった。この時間、下りを利用する客はあまり多くなく、帰りはゴンドラ貸し切りとなった。
 あらためて景色を見てみると、いい眺めですわ。

台北・動物園駅

 下りもまた30分ほどの時間をかけ、動物園駅に戻ってきた。台北捷運制覇に戻るわけだが、さっき乗ってきた文湖線には乗らず、バスでショートカットすることにする。
 猫空纜車の動物園駅の目の前からバスに乗ると、北側の山を一つ越え、淡水信義線の終点・象山駅に行くことができる。バスの多くはないが、捕まえてしまえば10分で象山駅にワープできる。
 10分ほど待った後、バスがやってきたので乗車する。朝買った一日乗車券はバスでも有効なので、端末にタッチするだけで乗車できる。
 4停留所先で下車するのだが、その間の山間部は高速のような道路を走り、むっちゃ飛ばす。座席が空いていなかったので、握り手にコアラのようにしがみついてなんとかやり過ごし、象山駅をちょっと通り過ぎたあたりのバス停で下車。おそらく、捷運を乗り継ぐより数十分時間を稼げたのではないかと思う。

猫空ロープウェイ

淡水信義線

#7 淡水信義線 象山 - 北投 (淡水 行) #8 淡水信義線 北投 - 新北投 (新北投 行)
#9 淡水信義線 新北投 - 北投 (北投 行) #10 淡水信義線 北投 - 紅樹林 (淡水 行)
台北・象山駅

 スリリングなバスを降り、徒歩数分で淡水信義線の終点・象山駅の入り口に到着。地下のホームへ向かう。
 淡水信義線は、台北都心部から北の海へ伸びる淡水線と東の郊外に延びる信義線が一体運用された路線。象山駅は信義線の東の端にあたる。信義線部分は台北市街地の東西を地下で結んでおり、いかにもといった地下鉄路線。
 象山駅から出発し、途中で北に進路を変え、台北駅を超えたあたりから線路は地上に顔を出す。この辺りから淡水線と呼ばれる部分で、戦前から1980年代まで営業していた台鉄の淡水線の跡地を利用して建設された路線である。地上区間は高架線だけでなく地上レベルの線路もあるので、どことなく普通鉄道の名残を感じる。
 さて、淡水信義線は終点・淡水まで30キロ、1時間弱である。終点まで一気に乗り通して片付けたいところだが、途中で2回降りなくてはならない。ひとつは北投駅から伸びる支線に乗るため、もうひとつは紅樹林駅から淡海軽坑に乗るためである。

台北・北投駅

象山駅から40分。北投駅に到着した。ここから一駅間のみ新北投駅へ支線が伸びている。新北投には台北有数の温泉街があり、そこへ向かう観光客を10分間隔のピストン輸送で運んでいる。
 一度高架のホームを降り、新北投行きの専用のホームへ移動する。新北投はそれなりの観光地らしく、台北の家族ずれだけでなく、日本や観光の観光客もホームで多数待っていた。しばらくすると、ゆっくりと列車が入線してくる。列車の側面には温泉の絵が描かれ、車内には風呂桶を模した観光案内用のモニターが設置されている。どうやら新北投支線専用の列車が運行されているようである。
 新北投に着くと、列車はすぐに折り返し北投行きの列車として出発する。乗り遅れると10分待たされるので、すぐに降りた列車に乗車する。新北投の支線は複線の線路が敷かれているのだが、どうやら片方の線路のみを使い1編成で運用しているようである。行きと同じ側の線路を使い北投駅へ戻っていった。

淡海軽軌

#11 淡海軽軌 紅樹林 - 崁頂 (崁頂 行) #12 淡海軽軌 崁頂 - 濱海沙崙 (紅樹林 行) 濱海沙崙周辺の新しいマンション
ライトレールは蓄電池で走行するので、一部架線の無い場所がある #13 淡海軽軌 濱海沙崙 - 淡水漁人碼頭站 (淡水漁人碼頭站 行) 夕陽のメッカ淡水漁人碼頭 フィッシャーマンズワーフ
淡水河上流の台北市街地の方向 (2023年1月1日 撮影)
新北・紅樹林駅

 続いては北投駅から5駅先の紅樹林駅に向かった。北投駅を過ぎたあたりから、淡水信義線は淡水河という大きな川沿いを走るようになる。淡水河といっても海に近く入り江といってもよい場所。河口は観光地になっているので、車内の雰囲気も都市交通から観光路線に変わってきた。
 紅樹林駅から伸びるのは淡海軽軌というライトレール。本日はこいつもついでに制覇する。
 淡海軽軌を運営しているのは台北のお隣の新北市。台北捷運とは料金体系も違い、改札も別。今回使用している一日乗車券は使用できない。
 地上駅の紅樹林駅の改札の外に淡海軽軌のホームに続く階段が伸びている。淡海軽軌は路面電車だが紅樹林駅の近くは立派な高架の専用線が作られている。
 ホームに改札は無く、代わりに簡易IC読み取り装置が置かれ、これにタッチすることで料金を支払うことができる。使用できるカードは台湾の交通系カードだけでなく、VISAのタッチ決済も可能。クレジットカード一枚で乗車できるので外国人にはとても優しい。日本でも早く普及させてほしい。
 淡海軽軌は2018年に開通したばかりで、まだホームも車両も新しい。路面電車としては大型の4両編成の車両で、丸っこい姿がかわいい。なんといってもホームドアがないので車両が良く見えてよい。
 駅の近くは高架の向こうに海が見えるのだが、すぐに街中を走るようになり海が見えなくなる、そして途中で高架から地上に降り、いよいよ道路の横の軌道を走るライトレールとなる。

新北・・崁頂駅

 淡海軽軌は、途中の浜海沙崙駅で二股に分かれる。目の前の交差点の中、線路が右側と前方に伸びている。
 まずは右側の崁頂駅方面に進む。で、車内から目の前の交差点を見てみると、それまであった電車のトロリ線が無くなっている。が、そんなことはお構いなしに電車は出発した。蓄電池が搭載されているらしい。エモいね。
 分岐しているといっても、その先は二駅で終点。数分で崁頂駅に到着した。もちろん、折り返しの電車で浜海沙崙駅にすぐに戻る。
 浜海沙崙駅から崁頂駅にかけてのエリアは、広大な土地が整地されたまま、放置されている。ところどころ、大きなマンションが建ち始めているので、何年か経つとタワマン街が出来上がりそうである。マンションの外壁に描かれているマンションの宣伝らしき絵を見てみると、なんかすげー高そうな部屋っぽい。街からは少し離れるが、海も近いので金持ちが好きそうな土地っちゃ、土地だよね。

新北・浜海沙崙駅

 浜海沙崙駅で下車し、分岐のもう片方、淡水漁人碼頭駅方面の電車を捕まえる。
 淡水漁人碼頭駅方面も3駅でで終点なので、10分ほどで終点の淡水漁人碼頭駅に到着する。新北軽軌の淡海軽軌を制覇。新北軽軌は、淡海軽軌の他に安坑軽軌というもう一つの路線がある。この路線は離れた場所にあるので、後程乗車する予定。
 淡水漁人碼頭は、フィッシャーマンズワーフとも呼ばれる海浜リゾート。夕陽の名所ということで、週末の夕方は台北のリア充たちが集まってくるらしい。
 そんなリア充たちが夕陽と共に海に沈むことを祈願し、俺は台北捷運制覇の旅を続ける。

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