2015-10-18

関東ケーブルカー探訪(前編)

 以前、スルッとKANSAI 3day チケット ケーブルカー十番勝負で、関西地域のケーブルカーを10本乗りつぶした。当然、関東方面も乗りつぶしておかねばと思っていたのだが、関東のケーブルカー群は関西のそれと違って、えらく都心から離れたところに疎らに点在している。まあ、それだけ関東平野がデカイってことだろうね。
 で、一気に潰すのは無理ということで、この夏の間に少しずつ潰すことにした。
 関東のケーブルカーは、東から筑波観光鉄道高尾登山電鉄大山観光電鉄御岳登山鉄道箱根登山鉄道の箱根ケーブルカーの5つがある。この内、箱根ケーブルカーは、箱根登山鉄道バスツアーの時に乗ったので省略。
 代わりというわけでもないが、静岡の伊豆箱根鉄道の十国峠ケーブルカーにも乗ることにした。

(左)つくば駅からバスで筑波山へ
(右)女体山の麓に到着 (上)筑波山ロープウェイ
(下)筑波山女体山からの眺望 (左上)女体山パーラー!
(左下)ロープウェイからケーブルカーの道のりは山道
(右)男体山に到着
つくば・つくば駅前

 まず手始めに乗車するのは、関東の東の屋根・筑波山を登る筑波山ケーブルカー
 筑波山は峰が二つあり、西側が男体山、東側が女体山。で、それぞれの峰に向かって、ケーブルカーとロープウェイが架設されている。
 それぞれの山頂の駅は徒歩15分ほどの距離なので、今回は、ロープウェイで女体山に登り、男体山へ移動して、ケーブルカーで下山するというコースを通ることにした。なぜならば、ロープウェイの山上駅の方がケーブルカーの山上駅よりも高い位置にあるからだ。逆コースだと、歩くのがタイヘン。

つくば・つつじヶ丘駅

 筑波山までは、つくばエクスプレスのつくば駅前から筑波山シャトルバスで移動する。つくば駅から女体山の中腹つつじヶ丘までは50分。バスで標高500メートルまで登ると、ロープウェイ乗り場に到着する。
 ロープウェイで登ってケーブルカーで降りるので、二つの乗り物を連絡する”連絡片道乗車券”を購入しようとするのだが、「連絡券を買っても、片道券を2枚買っても同じ値段なので、ぜひ片道券を買ってください」と、強硬に拒否される。窓口のおっさんの強権的な姿勢に屈する形で、やむなくロープウェイの片道切符を購入し、ロープウェイに乗車する。
 ロープウェイは、登山スタイルの乗客で満員。6分ほどの時間で山頂の女体山駅に到着する。

つくば・女体山駅

 なんとも甘美な響きのする”女体山”の山頂。ロープウェイを降りたら、関東平野を見下ろす絶景が広がっている。
 女体山駅には”女体山パーラー”という、魅惑的な食堂があったのだが、おいらの目的はケーブルカーへの乗車、ここは煩悩を断ち切って前へ進むことにした。
 ロープェウイからケーブルカーへの移動は徒歩15分。徒歩15分ならと完全になめきって、デッキシューズで来たのだが、そこは山の上、道はアップダウンのある登山道となっている。最低でもジョギングシューズは必須。
 なんどか足を取られそうになりながらも、20分近くを要して、なんとかケーブルカーの山頂駅に到着した。

筑波山頂 → 宮脇
(筑波観光鉄道 筑波山鋼索鉄道線 1.6km) (左上)筑波山頂駅
(右上)筑波山ケーブルカーの切符
(左下)宮脇駅
(右下)筑波神社の鳥居
つくば・筑波山頂駅

 筑波山頂駅から男体山の山頂まで15分ほどなのだが、そんなものに挑む気力はなく、さっさとケーブルカーで下山する。なんたって、暑いしさぁ。
 ところが、ケーブルカーの駅前には長蛇の列。待っている人の数としては1回の運行でさばける程度なのだが、駅に待合室がないので、炎天下の中外で並ぶことになる。地獄...。
 で、10分ほど待って乗車したケーブルカーだが、乗車したのは真っ赤なもみじ号。うん、まあ、普通のケーブルカー。正直なところ、人が多すぎて景色もよく見えなかったし、特に書くべき感想はないです。

つくば・宮脇駅

 なんとか、麓の宮脇駅に到着したのだが、行程はこれで終わりではない。
 ここから、再びバスでつくば駅に戻るわけだが、宮脇駅からバス停までがやたらと遠い。宮脇駅のすぐわきに筑波山神社があり、その境内を抜け、さらに参道を延々と歩いてようやくバス停に到着。その間、15分ほど。
 いかんせん暑いので、もうヘロヘロ。帰りのバスは、当然爆睡ですわ。

(上)JR御岳駅
(下)バスで御岳山へ 滝本駅とケーブルカーの路線を見上げる 滝本 → 御岳山 (御岳登山鉄道 1.1km)
青梅・御嶽駅

 翌週は、一転、関東平野の西、御岳登山鉄道乗車のため、青梅線の御嶽駅に向かう。
 御嶽駅の時点で、すっかり山の中で、青海線から直通する中央線の通勤用のアルミ電車がホームに止まっている景色に違和感を覚える。
 御嶽駅から御岳登山鉄道の滝本駅までは、やはりバスで10分弱移動する。

青梅・滝本駅

 バス停を降りて、坂を少し上ると、ケーブルカーの駅が見えるのだが、頭上高く頂上に向かって射出されるように敷かれた線路は、まるで、ガンダムのマスドライバーのよう。むちゃくちゃかっこいい!
 ケーブルカーで登った山上からリフトでさらに登れるらしいので、ケーブルカーとリフトの連絡往復切符を買う。
 ケーブルカーの車体は、最近塗りなおされたのかピカピカで、マスドライバーから射出されるにふさわしい姿である。(書いていて、自分でも何がふさわしいのかよく分かっていないが...)
 バス到着直後にギリギリ出発に間に合わなかったので、次の発車まで改札口の目の前で待機し、改札開始とともにケーブルカーに乗り込み、先頭の座席を確保する。と、思っていたのだが、先頭車両近くに蜂がブンブン飛んでおり、そいつが車内を飛び回り、ちょっとした騒ぎになる。
 しばらくして、蜂は無事車外へと飛び立ち、訪れた平穏の中、ケーブルカーは無事出発する。
 1キロほどの道のりで、400メートルほど標高を上げて、6分ほどで山頂の御岳山駅に到着する。

(左上)リフト乗り場
(右上)乗る度に傷物になるケーブル・リフト往復きっぷ
(下)リフト頂上からの眺め
青海・御岳平駅

 ケーブルカーの御岳山駅の数十メートルほど隣に、陰に隠れるかのようにひっそりとリフト乗り場がある。
 ケーブルカーからリフトに乗り継いで、さらに上を目指そうとリフト乗り場に向かうのだが、おいら以外、誰一人としてリフト乗り場に向かうものはいない。
 乗り場についてみると、リフトは動いていない。休止中かと思いきや、おいらの姿をみた係員がリフトを動かし始める。
 係員に促されるままに、リフトに乗り込んでようやく、誰もこのリフトに乗らない理由が判明した。
 このリフト、恐ろしく運行距離が短いのだ、乗った瞬間、もうゴールが見えている。階段でも、5分もあれば登れる距離である。おまけに、やたらと地面までの距離が近く、速度も遅い。
 まあ、この辺は、説明するより、下の動画を見てほしい。

青海・大展望台駅

 あっという間に、リフトは終点に到達。
 「たったこんだけかよ!」とは思ったのだが、リフトから降りて振り返ってみると、景色が全然変わっている。さすが「大展望台」を名乗るだけはある。
 ただ、大パノラマを一通り堪能するともうやることはないので、また、リフトで降りることになる。
 ところで、さっき買ったケーブルカーとリフトの往復切符だが、乗り物に乗るたびに改札挟でカチカチ穴をあけられ、どんどん傷物にされていく...。でも、改札で鋏を入れるっていいよね。ICカードでピッじゃ味気ないもんなぁ。

恐ろしく短く、遅く、低いリフト

(上)御嶽駅
(左下)御嶽山参道の険しい道のり
(右下)ゴールの武蔵御嶽神社が遠い (左上)鳥居を潜ってゴール下と思いきや、ここからが長い
(右上)やっと本殿に着いたと思えば、工事中
(下)本殿から下界を見下ろす
青海・御岳山駅

 気を取り直して、御岳山駅に戻って、駅前の案内図を見る。徒歩25分で武蔵御嶽神社なるものがあるそうな。
 まあ、頑張って歩いてみようかと思うのだが、しばらく歩くと目の前に山があり、その上に神社らしき建物が見える。あそこまで行くのかと、滅入りかけたが、頑張って足を踏み出す。

 15分ほど歩くと、鳥居が現れる。予想はしていたのだが、そこから先がまだ長い...。

青海・武蔵御嶽神社

 30分ほどで、ようやく本殿に到着。
 と、思いきや、本殿工事中。で、振り返ってみたら....。木が多くてあまり、景色もよくない。景色でいえば、リフトの展望台の方がはるかによいです。
 まあ、来てしまったものはしょうがないので、二礼二拍手一礼後、元の道を戻って下山する...。

(上)熱海駅
(下)箱根へ向かう伊豆箱根バス 十国登り口 → 十国峠 (伊豆箱根鉄道 十国鋼索線 0.3km) 十国峠からの眺め
熱海・熱海駅

 関東を飛び越えて、JR東日本と東海の境界駅熱海に到着。
 目指す箱根十国峠ケーブルカーは、関東のケーブルカーの中でもアクセスの悪さは有数で、ここから伊豆箱根バスで40分ほど揺られた先の箱根の山の中にある。

函南・箱根十国峠レストハウス

 で、到着した場所は、ドライブインの箱根十国峠レストハウス。ケーブルカーといっても、このドライブインの遊戯施設のような扱いで、ドライブインの裏山にこじんまりとレールが敷設してある。
 全長はわずか317メートル、標高差も100メートルほどしかない。はっきり言って、ケーブルカーとしての魅力はほとんどないといってもいい。
 だが、登った先から見える景色の良さで言えば、間違いなく全国のケーブルカーでナンバー1。文字通り360度、なにも遮るものがない大パノラマが広がっている。
 まずケーブルカーを降りて振り返れば、富士山が見える。そこから右回りに、箱根の山々、湯河原の街並み、伊豆半島、沼津の街並み、はるか地平線の向こうまで続く駿河湾と見下ろすことができる。
 そもそも、この十国峠という名前、この山から伊豆、相模、駿河、遠江、甲斐、信濃、武蔵、安房、上総、下総の十か国が見下ろせることから名づけられたという。もちろん、十国は言い過ぎで、よほど条件が良くなければ見ることはできないが、伊豆、相模、駿河、甲斐、武蔵までは晴れてさえいれば、十分視界に入ってくる。
 箱根からも熱海からも中途半端な位置にあるドライブインだが、この景色を見るために足を延ばす価値は十分にある。

 まあ、すばらしいところだったのだが、いかんせん辺鄙な場所にあるレストハウスなので、景色を眺めたらもう見るべきところはない。
 熱海からここへ訪れたバスは、箱根まで運行されているので、帰りに箱根まで足を延ばすとする。

(上)復元された箱根関所の門
(下)遠見番所から芦ノ湖を見る 小田急ロマンスカー
箱根・箱根関所跡

 さて、まあ、いろいろと見どころがある箱根なのだが、今回は、訪れたことのなかった箱根の関所跡を見学することにする。
 箱根関所跡は、2007年に関所の建物群が復元され、江戸時代の関所が丸ごと蘇った施設になっている。近くに箱根関所資料館も併設されており、そもそも関所では何が行われていたのかということを学ぶことができる。
 「思ったよりも小さい」というのが、関所の門を潜った最初の感想。権力の威信を示す城郭とは違って、関所というのはあくまでも実務施設だったのだろう。
 江戸方、京都方にそれぞれ門があり、資料館によれば、江戸から出る方は厳重にチェックされたが、入る方は比較的容易に入れたのだそうな。
 関所の脇の崖の上に遠見番所も再現されており、そこから眺める芦ノ湖と富士の姿も見どころ。

 ちなみに、東海道のもう一つの大きな関所である浜名湖湖畔の新居関(今切関)には、関所の建物が今でも現存している。ちょっと遠いが、見比べてみるのも面白い。

箱根・箱根湯本駅

 そんなわけで、関所から今度は箱根登山バスで、箱根湯本駅に向かい、赤いロマンスカーにのって帰るとします。
 新しいロマンスカーもいいけど、やっぱりロマンスカーというと、これだよね。

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