2020-10-17

青森両半島先端紀行(前編)

青森両半島 先端紀行 2020/9/19-22

 このブログでも度々登場する青森県だが、振り返るときちんとフューチャーしたことがないような気がしてきた。
 考えてみれば、青森には現存十二天守の一つ弘前城、北部に突き出た二つの半島の先端、その半島を結ぶフェリーなど、このブログ的には一度行っておかねばならぬところがたくさんある。
 そんなわけで、久しぶりに北に向かって旅をしてみることにした。

弘南鉄道全線制覇

青森空港から弘前方面に向かう空港バス
なかなか年季が入っている 浪岡から路線バスに乗り換えて黒石駅へ 黒石駅から弘前まで弘南鉄道弘南線に乗車
(下)だだっ広い田畑が広がる車窓
黒石・黒石駅

 小牧空港こと県営名古屋飛行場からフジドリームエアラインで80分、青森空港に到着。今回の飛行機のチケットは、小牧空港のある豊山町へのふるさと納税でゲットしたもので、実質2000円で夫婦二人の航空券を手に入れた。ありがとう豊山町!
 青森に着いて最初の目的地は弘前城なのだが、青森空港と弘前の間にちょうど、弘南鉄道の弘南線の路線がある。これに乗らない手はないと思ったものの青森空港から弘南鉄道の終点・黒石駅への足がない。
 なんとか方法はあるだろうと調べてみると、弘前へ向かう空港バスの途中にある浪岡というバス停でバスを降り、15分後にやってくる路線バスに乗り換えれば黒石駅に行くことができるらしい。

 路線バスの時間に合わせるため、1時間ほど空港のタリーズで時間をつぶし、バス停に移動。
 定刻の10分ほど前に弘南バスの車両が到着した。雪に埋もれるせいなのか、単なる経営上の都合なのか、やたら側面に錆が浮き出ているバスに乗り込み浪岡に向かう。10分強で時間ぴったしに浪岡バス停に到着。そこで待つこと15分で、これまたほぼ定刻通りに黒石行きの弘南バスが表れた。弘南バス、グッジョブ。

 乗り換えた黒石行きのバスに揺られること20分。途中黒石市の古い町並みを抜け、弘南鉄道の黒石駅にたどり着いた。
 せっかくなので黒石駅の駅舎を堪能したかったのだが、バスから鉄道への乗り換え時間はわずか5分。さっさと切符を買って車両に乗り込むことにする。
 弘南鉄道は弘南線と大鰐線の2線あるが、黒石と弘前を結んでいるのは弘南線である。
 車内はロングシートのせいかあまりローカル線感のない車両なのだが、古さはなかなかのもので、台車の音が実にやかましい。まあ、これもローカル線の風情ですな。
 弘南線の名物は沿線に植えられた「田んぼアート」。色の違う苗を植え、田んぼをキャンパスに見立てて大きな絵を描いている。その名もずばり「田んぼアート」という駅もあり、そこからのアートを眺めることができるらしい。
 だがしかし、今年はコロナの影響で田んぼアートは中止。ぼちぼち稲刈りの時期ということもあり、まばらな田んぼが見えるだけであった。
 それでも地平まで続く稲穂は大変美しく、遠くに見える岩木山とのコラボレーションでいつまでも見飽きることない車窓となっていた。

弘前・弘前駅

 30分で弘前駅に到着。JRの駅の片隅に線路1本滑り込ませるという、よくあるタイプのローカル線の始発駅である。
 さて、弘南鉄道にはもう1路線、大鰐線がある。大鰐線に乗り換えたいところだが、大鰐線の弘前側のターミナルは、ここ弘前駅から少々離れた場所にある。そこで終点側の大鰐駅までJRで移動して、大鰐線から弘前に戻る形で制覇することにする。

大鰐駅の駅舎と謎のワニ君像 (左上)弘南鉄道大鰐線で大鰐から弘前へ戻る
(右上)撮影していたら怒られて因縁の顔ハメ板
(下)駅舎には見えない大鰐線の中央弘前駅
大鰐・大鰐駅

 弘前駅から3駅10分。JRの大鰐温泉駅に到着。弘南鉄道大鰐線の大鰐駅は、駅の名前こそ違えど同一構内である。
 大鰐温泉の名の通り、JR側の出入り口の前には足湯があり、その横に巨大なピンクのワニの像が観光客を迎えている。
 このワニ、なかなかかわいいので名前は何なのだろうと調べたら、長年名無しとなっていて先月名称募集をしたらしい(ワニマスコットの愛称募集/大鰐町(陸奥新報))。ぜひとも、「オオワニくん」テキトーな名前がつかないことを切に願いたい。

 さて、JRの大鰐温泉駅の駅舎の横に、古びた小さな弘南鉄道の駅舎がある。
 線路は反対側なのに駅舎があるんだと思って入ってみると、中は無人で券売機もなく出口はJRのホームに繋がっていた。そこから駅構内の跨線橋を渡って大鰐線のホームに渡ることができるらしい。構造的にはJRの改札を通らずJRのホームに入れるということで、なんとも大らかである。
 跨線橋の階段を降り、弘南鉄道の駅舎にたどり着いたがこちらも無人。券売機も停止していて降車時に支払う方式のようだ。

大鰐・大鰐駅

 さて、50分ほど大鰐駅で時間を潰したところで、電車は出発する。
 比較的単調だった弘南線に比べ、大鰐線の景色は変化に富んでいる。山間を縫うように走り出したのち、広大な田園が広がる津軽平野に飛び出ると、真っすぐな線路の上をのんびりと北上することに案る。さらに弘前市内に入ってくると、今度は住宅地のすぐ背後を縫うように走行し、最後は唐突に終点・中央弘前駅に到着する。

弘前・中央弘前

 「弘前中央」ではなく、「中央弘前」というちょっと変わった倒置法的な駅名が大鰐線の終点。
 ホームにおあつらえ向けの顔ハメパネルがあったので、嬉々として顔をハメていたら、運転手さんに早く駅から出ろと追い出される。
 なんかむちゃくちゃ感じが悪い。
 なんだよ。だったら顔ハメなんかホームに置いとくなよ。乗車時しか使っちゃいけないのかよ???
 言い方もアレだったので、思わず「なんだよ、二度と乗らねーぞ」と啖呵を切りたくなったのだが、よく考えると普通に二度と乗らないような気がしてきたので、大人しく引き下がることにする。
 にしても感じ悪かったなぁ...。

 なんだか釈然としない思えを抱えながら改札を出て振り返ると、なかなか趣のある駅舎がたたずんでいた。
 ぶっちゃけ駅舎には見えない建物。昭和の頃、まだスーパーマーケットが今ほど普及してなかった時代、よく個人商店が集まって「XXセンター」みたいな店を開いていたのだが、そんな雰囲気がする。言われなければ駅舎に見えないし、感じの悪い運転手が要るようにも見えない(しつこい)。

弘前の街を散策

日本聖公会弘前昇天教会 青森銀行記念館 青森銀行記念館の内部
後ろ姿が映っている係の方がいい明治感を演出している
弘前・中央弘前

 中央弘前の駅からとぼとぼ歩いてみると、すぐ近くに古そうな教会が建っていた。
 日本聖公会弘前昇天教会という教会で、建てられたのは何とちょうど100年前。空襲を受けなかった弘前には、このようなたくさんの古い建物が残っているそうだ。
 逆に言えば空襲がなかったら日本中にこんな建物が残っていたはずで、あの戦争はなぜ始めてしまったのか、終わらせられることができなかったのかと考えさせられる。

弘前・青森銀行記念館

 数々の古い建物が残っている中弘前の中で、ひと際目立っているのだが弘前城のある弘前公園のすぐ近くにある青森銀行記念館。明治37年に建てられた木造洋風建築の銀行の建物である。
 外観はもちろん、内装にも緻密な装飾がちりばめられた威厳のある立派な建物である。特徴的なのは、内部の銀行員の執務エリアがお客さんのいるエリアより高く、お客さんを見下ろすように業務を行っていたという作りである。中央弘前にいたあの乗務員のような偉そうな態度の職員がさぞかし幅を利かして札束をはたいていたことだろう(しつこい)。

現存天守 弘前城

場内に入る門からしてかっこいい(左上)
曳家に備えて内部が鉄骨で補強されている(右上)
石垣を再構築中(下) 弘前城天守と岩木山
弘前・弘前城

 弘前と言えば、忘れはならないのは弘前城。僕もこれを目当てにわざわざ弘前までやってきたのだ。
 現存十二天守の一つで、桜の時期の美しさは特に有名である。
 現在、天守直下にある石垣の解体工事を行われているため、天守閣は曳家によって本丸の中央に移動されている。
 さすがに弘前となるとそう簡単に見に行くことはできないので、天守が元の位置に戻ってから見に行こうかとも考えたのだが、移動された天守を見る機会なんてそうそうないので、むしろ今がチャンスと思いやってきた。
 天守が移動しているせいなのか、元からなのかはわからないが、城跡の公園の外からは天守の姿は見ることはできず、公園の中を相当歩いても天守閣はなかなか姿を表さなかった。三の丸、二の丸と歩いて行って、天守閣がその姿を覗かせたのは本丸に入る直前。なかなか奥ゆかしい城である。
 本来は本丸があった場所は本丸の端っこで石垣のすぐ上。確かに石垣は解体されており、現在は元通り積みなおす作業がはじまるところらしい。天守は元合った位置から本丸の中央方向に、80メートルほど引き下げられている。
 本丸に上ると三層の天守がその姿を現したが、なかなかの大きさで現存天守の中ではかなり立派な部類。城が再建されたのが1811年と比較的新しく、そのせいか他の天守と比べてモダンな外観に見える。
 移動前の天守があった場所の近くに展望台が作られており、背後の岩木山と天守のツーショットを撮ることができる。この位置から弘前城の姿をとらえることができるのは今だけであると思うと、チェキに撮ってサインをもらいたくなる。

 さて、中に入ってみよう。
 現存天守と言うことで中はがらんとしているのだが、目につくのが鉄骨の補強。
 どうやら曳家に際して補強されているようだ。これ、こう言っちゃなんだが、なんか変身しそうでかっこいい。いいぞ弘前城、やっちまえ! と、無駄にテンションが上がってくる。
 貴重な曳家姿の天守を見学できたので、願わくば、桜の季節にでも本来の位置に鎮座した姿を拝みたいものである。

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