2016-11-15

時速500km 超電導リニア体験乗車

 ついに乗ってきましたリニア!
 そう国鉄が心血を注いで開発した日本が誇る超電導リニア・マグレブに乗ることができました。
 山梨にリニアの実験線が出来たのが1996年。その後1998年から一般の試乗会を行っており、おいらも幾度となく応募したのだが全て落選。実験線の延伸工事に伴い、2007年から試乗会は行われず、やっと再開したのが2014年。再開後も欠かさず応募を行い、今回やっと当選。長い道のりだった。
 おいらが小さかった頃、21世紀は科学が発達したバラ色の世界と映画や漫画で描かれていた。だが、21世紀が始まって早15年、見渡してみれば、漫画の世界とは異なり、宇宙旅行やロボットなんてものはまだまだ遠い未来となっている(その代わり、当時誰もが予想できなかったインターネットという異次元の技術を手に入れたが...)。
 で、そんな中、唯一、現実化が目前に迫ってきているのが、浮上して高速に走る超電導リニア鉄道だ。おいらにとっては、21世紀の夢の最後の砦であり、唯一の希望がリニアなのだ。
 そんな、長年の夢が叶って乗ることができたリニアの乗車記です。

どぎどきリニア館で、引退したリニアの試験車両を見学 (上)実験線を走るリニアの現在位置がモニターに表示される
(下)3階からリニアの線路を見る
都留・山梨県立リニア見学センター

 中央本線大月駅からバス・タクシーで10分というなんとも辺鄙なところにあるリニアの実験センター。
 リニアに乗り込みたいというはやる気持ちを押さえて、まずは、リニアの走行を外から見学。
 リニアの実験センターの隣には山梨県が県立リニア見学センター(どきどきリニア館)という施設を建設している。建物はリニアの線路のすぐ真横に建てられているので、高速で走行するリニアの姿を眺めることができる。
 ちょうど、おいらが乗車する1回前の試乗会が行われている時間で、まもなくリニアが通過するというアナウンスが流れていた。
 1階の見学スペースは、リニアの線路とほぼ同じ高さ。大きな窓のすぐ向こうにコイルが並べられた見たことのない軌道が敷かれている。
 館内のモニターに、リニアの現在位置が表示されていて、東京方向から徐々に近づいてきているようすがわかる。
 しばらくすると、ゴゴゴと何かが近づいてくる音がすると、思った瞬間、もう目の前を通過。
 速い。ひたすら速い。時速500キロは伊達じゃない。
 よくわからない内に通過してしまったが、次は10分後に、名古屋方面から戻ってくるリニアが目の前を通過するそうである。
 今度は、上から様子を眺めようと、2階の屋外見学テラスに移動する。
 外からならもっと見やすいかと思ったのだが、テラスの向こう側に網が貼られていて、微妙に見づらい...。
 まあ、場所を陣取ってしまったのでしょうがない。
 見学センターから見て名古屋側はすぐにトンネルとなっているので、じっとトンネルから飛び出すリニアの帰りを待つ。
 そして、やはり地鳴りが聞こえてきたら、すぐに通過。2両編成で、全長が短いせいもあるのだが、とにかくあっという間。窓なんて形も見えない。
 うーむ、今からこいつに乗るかと思うと、ますますテンションが上ってくる。

山梨県立リニア見学センターから500km/hで通過するリニアを見学

(上)JR東海 リニア実験センター
(下)搭乗券の発券機と入場ゲート
山梨リニア実験線の搭乗券 搭乗ゲートを潜っていよいよ乗車 (左)想像以上にペラペラな座席
(右)L0系の車内の様子
都留・東海旅客鉄道 リニア実験センター

 さて、いよいよリニア試乗会会場へ移動。
 会場となっている場所は、あくまでのJR東海の実験センターなので、外観は、なんとも事務的で地味。
 最近じゃ、すっかりどこでも見かけるようになった荷物検査を経てセンターの中へ。しかし、21世紀がこんな物騒な世の中になるとは思っていなかった。
 玄関には発券機が設置してあって、ちゃんと「リニア搭乗券」を発券してくれる。搭乗券には出発時間や座席などが書かれているのだが、「搭乗口」とか「搭乗手続き」など飛行機っぽい文言が散りばめられている。どうやら、リニアは「乗車」ではなく、「搭乗」するものらしい。空を飛ぶ乗り物は「搭乗」なのだろうか??
 発券された搭乗券でゲートをくぐり、待合所へ向かう。ここでしばらくガイダンスを受けた後、順番に隊列を組んでリニアに乗り込んでいく。
 通路を抜けるとプラットフォームがあるのかと思っていたらそうではなく、それこそ飛行機の搭乗口のような人が数人すれ違える程度の狭いゲートをくぐってそのままリニアに乗車してしまう。
 リニアの外観を間近に見ることが出来るチャンスかと期待していただけにやや残念。あるいは、本当にリニアが開通した時もこんな感じのゲートを潜って、乗車、いや、搭乗するのだろうか??

 そして、いよいよ車内へ。
 まず、第一印象は、「狭い!」。新幹線はおろか、在来線の車両よりも狭いイメージ。窓が極端に小さいせいもあって、小型航空機の機内のようにも思える。
 で、座席に座って驚いたのが、座席が驚くほどちゃち。一昔前の軽トラックやハイエースの後部座席のような、ペラッペラの椅子で、座面もとても短い。一人あたりの座席の横幅は、在来線の特急分ぐらいはありそうだが、縦の幅はかなり狭い印象。飛行機並とまでは言わないが、かなりそれに近いと思われる。ちなみに、シートベルトは付いていない。
 まあ、東京から名古屋までは40分、大阪までだって1時間。そうのんびりとくつろぐ時間があるわけではないので、こんなもんで十分なのかもしれない。

(上)車内のモニター
(右)一瞬だけ見ることの出来る外の景色 他はほぼトンネル
都留・東海旅客鉄道 リニア実験センター

 ところで、山梨のリニアの実験線は42.8kmの直線コース。営業運転開始時はそのまま営業線となるようにほぼ直線状に軌道が敷かれている。
 ここをどのように走行するのかというと、まずは、前方である東京に向かって、東海道新幹線の最高速度である285km/hで走行する。その後、名古屋方向に本気を出して500km/h逆走、さらに東京方向に500km/hで前進し、最後にもう一度 320km/hで逆走して元の位置に戻ってくる。
 一往復ちょっとで、距離はだいたい100km。乗車時間は20分ほどである。

 いよいよ発車が近づいてきた。なんとも事務的な自動音声アナウンスにつづいて、リニアは発進する。
 超電導リニアは、最初はタイヤ走行で、一定速度に達した後、浮上走行に移行する。よってスタート時はタイヤ走行であり、鉄輪の電車とはあきらかに違う力強いすヘリだしを見せる。とはいえ、同じくタイヤ走行のゆりかもめや、浮上走行のリニモと似た感じでもあり、目新しさがあったわけではない。ただ、そこからの加速は異次元。数十秒で150km/hに達する。
 ここで「まもなく、車両がタイヤでの走行から浮上走行に移ります」とのアナウンスが流れ、いよいよリニアの離陸!
 あれ? よくわからん。浮いたような気もするし、そうでもない気もする。実際、あまり違いはわからないらしく、車内のモニターで、親切にもタイヤ走行から浮上走行に移るCGが上映される。
 そして、すぐに320km/hに達し、減速をし始める。減速する時も、やはり一定速度でタイヤ走行に移行する。この時は、着陸のショックがそれなりにあり、タイヤ走行に戻ったことが確実に体感できる。この着陸の感触は、飛行機の着陸によく似ていて、確かにリニアは飛んでいたんだと実感する瞬間である。

 さて、リニアは実験線の東京寄りに一旦停車し、今度こそは本気を出して、500km/hで走行する。やはり淡白なアナウンスの後、名古屋方向に向かって逆走を開始する。
 タイヤ走行から浮上走行に移り、車内モニターに表示される現在速度がグングン上昇していく。そして、いよいよ最高速度500km/hに到達。ここまで、わずか2分である。
 驚くのは最高速度に達してからの安定感。時速は一貫して499-501kmの間をキープし続ける。加減速もなく、またカーブも殆ど無いので、乗り心地は実に快適である。極端に窓が小さく、またトンネルばかりで外が見えないせいもあるが、逆走しているにも関わらず、前に進んでいるのか後ろに進んでいるのか全くわからなくなる。これは、今までに味わったことのない不思議な感覚である。
 ちなみに、営業運転時も名古屋から品川の間ほぼ全てトンネルか地下なので、乗客はこんな感覚を味わうことになるはずだ。
 そして、5分ほどで、実験線の名古屋寄りの終点に到着。このあたりは、実験線で数少ない外の景色を眺めることのできる場所である。僅かな隙間から晴天の下の南アルプスの山々を眺めることができた。
 そして、東京方面に再出発。今度は前方に向かって走り出すのだが、やはり後方への走行と区別がつかない。
 で、いよいよ最後の走行。逆走して、実験センターに戻ることになる。

 実験センターに到着し、約20分間の体験乗車は無事に終了。
 わずか20分間ではあったが、考えてみると、営業運転時は、この間に名古屋を出発したリニアは、品川までの中間点南アルプスまで到達していることになる。改めて、超電導リニアは、とんでもない超特急である。

時速500km/h到達の瞬間とその後の速度の安定感

乗車したL0系との対面
都留・東海旅客鉄道 リニア実験センター

 リニア実験線センターに帰還し搭乗口を出ると、今度は入ってきた場所とは別の通路に誘導される。
 ガラス越しではあるが、ここでいよいよリニアの車両L0系と対面する。
 第一印象は、やはり「小さい」。新幹線と比べるとひと回り小さく見える。建設コストと速達性と引き換えに、居住空間と輸送量を減らした合理的な結論がこの大きさなのだろう。
 そして、もう一つ気になるのが、先頭に窓の無いこと。自動運転のリニアには、運転席の窓は不要らしい。そのせいのなのか、乗り物というよりは産業機器といった外観に見える。
 なんというか、未来的なかっこよさは感じられないのだが、これこそが、いよいよ実用段階に近づいてきた証なのかも知れない。

 営業運転での再開を誓って、実験センターを後にするが、出口近くに展望広場なる場所を示す矢印があった。矢印の向こうは、それなりに高さの階段。頑張って登って到達した場所は、山の斜面に作られた小さな広場。眼下に、トンネルを出て、橋梁で高速道路を跨ぐ一直線のリニアの軌道が見える。
 あと、10年後にはこの線路を1日何本ものリニアが行き交い、名古屋-東京間を移動する大半の人たちがこの橋を超えていくはずである。

 かつて新幹線のことを”夢の超特急”なんて言っていたみたいだけど、おいらにとっての夢の超特急は、このリニア。
 完成したら、品川名古屋間をわずか40分で結ぶことになる。40分といったら、近郊列車の乗車時間。日帰りと言わず、「ちょっと外出」レベルで名古屋から品川に行けてしまう。
 計画通りなら完成は2027年の予定なので、今から11年後。工事も徐々に始まってきたので、予定通りの完成も現実味も帯びてきた。
 ぜひとも、事故なく完成にこぎつけてほしいですな。

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