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2015/10/19

関東ケーブルカー探訪(後編)

 当ブログとしては異例の足掛け4ヶ月に渡る長期企画、関東平野周辺のケーブルカーを制覇する探訪記の完結編。
 残り2つの高尾山と大山のケーブルカーに加えて、おまけとして、宮ヶ瀬ダムに併設されたインクラインにも乗りに行く。

(上)高尾山ケーブルカーの麓駅・清滝駅
(下)往復きっぷ 清滝 → 高尾山
(高尾山登山鉄道 1.0km) (上)高尾山駅
(下)高尾山駅からの眺望
八王子・高尾山口駅

 関東で一番メジャーな山と言えば、高尾山。なんでも遠足で行くこともあるぐらい登りやすい山だとか。
 その高尾山の入口となるのが、京王高尾線の終点・高尾山口駅。
 駅を降りて、5分ほど歩くと、高尾山ケーブルこと高尾登山電鉄の清滝駅に到着する。
 都心から一番近い山ということで、15分に一度のケーブルカーは毎列車ほぼ満車で出発する。
 高尾山ケーブルの特徴といえば、その斜度。60パーミルという斜度は鉄道事業者としては最大。角度にして約30度の斜度をケーブルに引き上げられながら登っていく。
 普通ケーブルカーはできるだけ斜度が均一になるように敷設され、その斜度に応じて車体を平行四辺形に傾けて作られているので、どれだけレールが傾いていても、車体が傾くことはない。
 だが、高尾山ケーブルは違う。途中で斜度が急激にきつくなるので、車体が思いっきり傾くのだ。
 立っていると何かに掴まらないと車体後方に転げ落ちそうになるほど傾く。これは、ちょっと他では出来ない体験だ。
 傾きがきつくなるのは最後の方なので、傾いた車体で足を踏ん張って、「これ以上はムリ!」とギブアップ寸前のところで、頂上に到達する。

八王子・高尾山駅

 頂上の高尾山駅につくと、下界を見下ろすことのできる展望場所がある。
 関東平野を見下ろすことができるのは、筑波山や御岳山と同じだが、高尾山は立地から都心がすごく近くに見える。数限りないビル群がくっきりと見渡せば、東京の街のデガさを改めて感じることができる。

山道というか、坂道を30分ほど登る 高尾山頂上
八王子・高尾山

 せっかくなので、高尾山の頂上を目指して、登山道を歩き始める。
 登山道と言っても、登るのは120メートルほど。10人ぐらいラインダンスができるほどの広々とした登山道というか、スロープが整備されていて、途中の高尾山薬王院で参拝しつつ、ボーッと歩いていればいつの間にか頂上に到達する。

八王子・高尾山頂

 で、30分ほどで山頂。見回せばヒールで登ってきた人もいるぐらいで、むしろ、本格的な登山ルックの人が浮いてしまうぐらい気楽な山である。
 山上からの眺めを堪能しようと、開けた場所に立つのだが、何だがケーブルカーの駅と代わり映えがしない。まぁ、100メートルそこそそそこしか登ってないんだから当然といえば、当然。むしろ視界が開けている分、ケーブルカーの駅の方が、眺めがいいぐらいである。
 まあ、でも、山頂のほうが途中より眺めが悪いって、「山あるある」だよね。

八王子・エコーリフト山上駅

 で、山頂からの眺めを一通り堪能したところで、下山。
 ケーブルカーの駅まで戻ってきたのだが、帰りはケーブルカーと平行して敷設されている「エコー・リフト」で下山する。リフトとケーブルカーの料金は同じで、乗り降りする場所もほぼ同じ。往復きっぷを買えば、上り、下りそれぞれ好きな方を選ぶことができる。
 「エコー・リフト」というのは、スキー場にあるあの普通のリフト。特に変わった点を上げるとすれば、長さがそこそこあるということぐらい。
 ただ、箱のなかのケーブルカーと違い、360度好きなところを見渡すことができるので、眺めという点ではケーブルカーよりこちらの方がおすすめですかね。

(左上)あいかわ公園への道のり
(右上)宮ヶ瀬ダムへの道のり
(左下)石小屋ダム
(右下)宮ヶ瀬ダムが見えてきた 宮ヶ瀬ダムの堤体
左側にインクラインの軌道がある (左)ダムを登る車両
(右)車両から下を眺めると、確かに恐ろしい斜度になっている
愛川・あいかわ公園

 さて、先ほど高尾登山電鉄は「鉄道事業者」としては、最大の斜度を登っている。と、書いたのだが、じゃあ鉄道事業者以外ではもっとすごい角度を登るのがあるのかと聞かれれば、実はあるのだ。
 神奈川県は愛川町にある宮ヶ瀬ダムに付随する観光用のインクラインが最大斜度35度というとんでもない角度を登っているのだ。インクラインとはなんぞやというと、実は単にケーブルカーのこと。鉄道ではなく建設用だと、ケーブルカーのことをインクラインと呼ぶことが多いのだ。当ブログでも、過去に関電黒部ルートのインクラインが登場している
 そもそも、ケーブルカーもインクラインも和製英語なので、英語で言えばどちらもfunicularだ。

 乗るためには当然宮ヶ瀬ダムに向かわなければならないのだが、ダムだけにとんでもない山奥にあり、公共交通機関で行こうとするとけっこう大変。小田急の本厚木駅から、神奈川中高交通の「センター経由半原」行きのバスで1時間ゆられ、最寄りの「愛川大橋」で下車してからさらに30分以上歩いて、ようやく宮ヶ瀬ダムに辿り着く。
 ダムの周辺は、神奈川県立あいかわ公園という大きな公園になっている。

愛川・宮ヶ瀬ダム

 あいかわ公園から宮ヶ瀬ダムに向かうと、途中宮ヶ瀬ダムの福ダムである石小屋ダムがある。このダムの堤体の上も歩くことができるので、まずはそこから宮ヶ瀬ダムを見る。
 宮ヶ瀬ダムは、堤高156メートルの関東屈指の巨大ダム。まあ、デカイことこの上ない。
 石小屋ダムから宮ヶ瀬ダムに近づいてくるとますますその巨大さに圧倒される。大きさで言えば黒部ダムのほうが大きいのだが、ほぼ真下から見上げることができるのと、アーチを描かない重力式コンクリートダムの重圧感で、こちらの方が巨大に見える。
 そのダムの向かって左側にお目当てのインクラインが敷設されている。

 インクラインの運賃は、片道200円、往復300円。なんだかとってもお値打ちに思えるが、ダムの堤体のなかにエレベーターがあって、そっちはなぜか無料。まあ、ダムの中のエレベーターより眺めがいいのは間違いないので、眺望料と思えば安いもの。
 150メートル上空に登っていくインクラインだが、下からでは角度の関係で最上部まで見上げることができないが、はるか彼方までレールが伸びていることだけは確認できる。
 乗ってみると、なんだかえらくあっさり最上部に到達してしまう。上昇角度がほぼ一定なので、高尾山ケーブルのように車体が傾いていく感覚がないのだ。それに、ここまでの急角度になってしまうと、「そんなに斜度がえらいんなら、垂直に上るうちのマンションのエレベーターのほうが、よっぽどえらいんじゃないか?」という逆説的な疑問も湧いてしまい、なんだかありがたさが半減してしまうのだ。

(上)宮ヶ瀬ダムの遊覧船
(下)宮ヶ瀬湖
愛川・宮ヶ瀬湖

 若干拍子抜けしたことは間違いないが、それでも巨大ダムの天端(堤体の一番上のことらしい)からの眺めは格別。実に爽快。
 ダムの堤体の向こうには、当然ダム湖が広がっている。宮ヶ瀬湖と名づけられた湖の貯水量は芦ノ湖に匹敵するらしく、これまた巨大。
 その巨大な宮ヶ瀬湖には、湖の周りの公園を結ぶ遊覧船が運航されている。
 せっかくなので、対岸の宮ヶ瀬湖畔公園まで、船で渡ってからバスで帰ることにする。

清川・宮ヶ瀬湖畔公園

 遊覧船でたった5分で対岸の清川村にある宮ヶ瀬湖畔公園に到着する。
 この公園は大きなモミの木で有名で、冬になるとクリスマスツリーとして電飾が飾られるのだそうだが残暑の厳しい9月にクリスマスツリーはなく、大きな吊り橋と階段に囲まれた静かな湖畔の公園となっている。
 遊覧船が到着したタイミングで1時間に1本のバスが出発してしまったので、湖を眺め、入り口近くに並ぶ商店で買った五平餅を食べながら次のバスを待つことにする。
 宮ヶ瀬湖畔公園からでるバスも本厚木行きで、やはり1時間の行程である。巨大ダムとは実に遠きものである。

(上)ケーブルカーの駅に続く”こま参道”
(下)その名も”大山ケーブル駅” 大山ケーブル → 阿夫利神社
(大山観光電鉄 大山鋼索線 0.8km) (上)デビューしたての新造車両 大きな窓が魅力
(下)阿夫利神社駅 (上)大山阿夫利神社
(下)阿夫利神社から下界を望む
伊勢原・伊勢原駅

 運が良いのか悪いのかリニューアル期間にぶつかってしまって、ずーっと乗りに行けなかった大山ケーブルがついに再開。新造された車両に期待しながら、大山ケーブル行きのバスが出る小田急の伊勢原駅に到着。
 この日は祭があるとやらで、通常北口から発車するバスのバス停が南口に移動し、迂回ルート運行となっていた。そのせいなのか、いつもの通りなのか、バスは市街地の渋滞に巻き込まれながら、40分かけてケーブルカー乗り場に到着。
 と、思ったのだが、バス停からケーブルカーの駅までは徒歩15分。途中は、362段の階段という難儀さ。大山ケーブル、中々の難敵。

伊勢原・大山ケーブル駅

 バス停から駅はでは”こま参道”という商店街が軒を連ね、観光客を誘惑している。誘惑に負けるのは帰りにしようと、せっせ階段を登り続けて、ようやくその名も”大山ケーブル駅”という名前の駅に到着する。
 改札を抜けて待っていたのは、真新しい緑の新造車両。正面の大きな窓が特徴的である。
 このケーブルカーに乗るときは、必ず車両の一番後ろに座ったほうがよい。窓枠が無いかのような大きな窓から見下ろすパノラマ展望は、とても素晴らしい。ケーブルカーが引き上げられると、みるみる高度が上がり、相模原が眼下に広がっていく。さすがパノラマカーで鳴らす小田急のグループ企業である。
 ケーブルカーの距離は、800メートルと短いので、中間の駅に停車するにも関わらず、6分程度で終点・阿夫利神社駅に到着する。

伊勢原・阿夫利神社

 阿夫利神社駅から歩いて数分で大山阿夫利神社に到着する。紅葉の名所でシーズンはライトアップもされるそうなのだが、今はまだ、葉はあまり色づいてはいない。
 大山阿夫利神社は大山の神様で、山頂には奥社もあるそうなのだが、ここ下社から奥社までは歩いて90分、しかもかなりシビアな登山道らしいので、迷うことなく断念。下社でお祈りをして、下山の途に就く。

中間の大山寺駅から見た線路
左が山頂側、右が麓側 大山寺
伊勢原・大山寺

 大山ケーブルカーは、路線の中間地点、2つの車両のすれ違いポイントに、大山寺駅という駅が設けられている。
 その名の通り、大山寺という寺があり、国宝の鉄造不動明王二童子像祀られている。鉄製の仏像は珍しく貴重とのこと。毎月8日、18日、28日にご開帳されるのだが、本日はちょうどご開帳の日ということで、有り難く拝観させていただいた。
 実は、鉄製ということは後で知ったので、見ているときは「なんだかざっくりした、繊細さにかけるデザインだなぁ」という感想しかなく、あまり印象に残っていない。できれば、なにゆえ、この不動明王さんが国宝なのか、わかりやすい説明を貼っておいていただきたかった。

伊勢原・こま参道

 再び、大山ケーブルカー駅に戻ってきて、”こま参道”の階段を下っていく。
 行きでも気になっていたのだが、途中に醤油のいい香りが漂っているせんべい屋さんがある。東京・巣鴨の雷神堂の大山店なのだが、1枚250円の大きなせんべいを注文すると、その場で焼いてのりを巻いてくれる。
 あまりのいい匂いに写真を取るのを忘れてがっついてしまったのだが、実に美味しい。
 関東一円にたくさん店鋪がるらしいので、お近くの方はぜひ1枚食べてみてほしい。

 そんなわけで、関東平野周辺の5つのケーブルカー(と、おまけのインクライン)を足かけ3か月をかけて制覇してきた。
 関西には、比較的街の近くにあるケーブルカー(男山ケーブルや生駒ケーブル)と山奥にあるケーブルカー(高野山ケーブルや妙見ケーブル)があったのだが、関東のケーブルカーはどれも山奥。
 その分乗ってみると「秘境に来た」感が味わえるのだが、制覇するのはとってもしんどい。
 これで全国の23のケーブルカー18のケーブルカーを制覇したことになり、終わりがかなり見えてきた。2、3年のうちに片づけたいですな。

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