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2015/07/25

新・近鉄全線501.2km 1日制覇(#5 信貴山疾走編)

 始発から終電までの1日で、日本最大の路線長を誇る私鉄・近鉄の全線に乗ってしまおうという挑戦。
 スタートから10時間が過ぎ、大和八木以東に加えて、南大阪線・吉野線とその支線を乗りつぶした。

 近鉄全線1日制覇は、都合3回目の挑戦になるのだが、2年前、まだ内部線があった頃に挑んだルートは、途中で乗用車とJRを使用するルートで、1か月前失敗したときのルートは、途中で南海、JR、大阪市営地下鉄(と奈良交通と近鉄のバス)に乗車するルートだった。
 で、前回の失敗を踏まえての今回のルートは、近鉄のみを使用するというルートとなった。
 そうであれば、なぜ、最初からこのルートを選ばなかったのかという疑問が湧くかもしれないが、これには理由がある。このルートには無理があるのだ。
 これまで散々言ってきたが、近鉄全線制覇のボトルネックは2本のケーブルカー。前回は、生駒ケーブルをダッシュで下ることで時間を稼いだのだが、今回も信貴山をダッシュで下ることで時間を稼ぐことになっている。それなら、前回と同じと思うかもしれないが、難易度が全然違う。前回は、1.3キロの距離(標高差313メートル)を24分で下らなくてはならなかったのだが、今回は2.8キロの距離(標高差244メートル)をわずか21分で下らないといけないのだ。時間は短くなっているのに、距離は倍増である。
 おいらの足では平地でも厳しい距離を、東京都庁舎に匹敵する標高差をも克服して走り切らなくてはならない。
 そんな今回のチャレンジの山場に差し掛かる。

近鉄バスで信貴山門へ移動
柏原・柏原市街

 柏原駅から堅下駅へと歩いていくと、目の前に信貴山が見える。信貴山ダッシュを行うためには、まずは目の前に見えている信貴山に登らないといけない。
 堅下駅から4駅大阪寄りの河内山本駅が信貴山の西側の玄関口で、ここで信貴山の麓へと延びる信貴線に乗り換える。
 信貴線はわずか3駅間しかなく、たった5分で信貴線の制覇が終わる。終点信貴山口のホームを直角に左に曲がると今度は、ケーブルカーの西信貴鋼索線の乗り場となる。

八尾・信貴山口駅

 信貴山への大阪側からの参拝口として敷設された西信貴ケーブル。まあ、ついにこのブログ4回目の登場となったので、多くは語るまい。
 ケーブルカーの乗車時間は7分間、途中で右にカーブし、トンネルを抜けながらゆっくりと終点・高安山までケーブルが引き上げられる。
 かつては、ケーブルカーの終点・高安山からさらに鉄道が続き、信貴山へ乗客を運んでいたのだが、現在はその部分は近鉄が運営する有料道路・信貴生駒スカイラインの一部になっていて、近鉄バスが信貴山までの路線を運行している。
 西信貴ケーブルと高安山-信貴山門間のバスは基本的に接続していて、ケーブルカーが到着する度にその数分後に出発するダイヤになっている。
 今回、近鉄だけを利用して全工程を制覇すると言ったが、この区間だけは例外でバスで移動する。と言っても、バスの運営会社も近鉄だし、さらにそのバスが走る道路も近鉄が運営しているとなれば「近鉄だけ」という言葉もあながち嘘ではない。

 で、その近鉄バスの乗車時間は7分間。終点・信貴山門に到着したら、すぐさま信貴山ダッシュを開始しなくてはならない。
 バスの乗客はおいらしかいないのだが、一番先頭の出口に近い席に陣取り、こっそりと脚のストレッチをして準備をする。

(左上)バスを降りたらすかさずダッシュ
(右上)大門ダムの上から麓まで降りる
(左下)ダムの反対側に信貴山こと朝護孫子寺
(右下)近鉄東信貴鋼索線駅舎跡 (左上)駅舎跡の脇からケーブルカー路線跡に入る
(右上・左下)ひたすら真っすぐな急勾配が続く
(右下)最後だけなぜか上り坂 (左上)散策路終了
(右上)ここからは、道路に転用されたケーブル路線跡
(下)信貴山下駅に到着
平群・信貴山門バス停

 バスが着いたと同時にSuicaで運賃を支払い下車をする。はるか244メートル下にある下界の生駒線・信貴山下駅をめざして信貴山ダッシュ開始である。
 リュックサックを背負い直し、信貴山を東側から下山する道路を走りだす。大した通行量があるわけではないが、歩道のない片側1車線の道路なので車に遠慮しながら道路のギリギリを走っていく。当然だが、歩行者はおいらぐらいしか見当たらない。
 しばらくすると、大門ダムの上に掛かる信貴大橋を渡る。右手が下山する方向で、麓の街が見えそうなものなのだが、ここにきて雲ってきたので、何も見えない。考えてみたら、ダムの上空に掛かる橋ってだけで相当な標高で、ここから麓まで下るかと思うとクラクラしてくる。
 で、橋の反対側を見ると、信貴山こと朝護孫子寺がある、らしいが、よくわからん。そういや、行ったこともあるよね。

三郷・信貴山バス停

 ところで、信貴山門バス停から信貴山下駅までの距離は、普通に道なりに距離を測ると3.2キロある。これを24分はかなり厳しい。そこで、裏技を発動させる。裏ワザとは、全工程の半ば3分の1程の行程を山の中の遊歩道を通ることで、距離を400メートルほど削るという技である。
 信貴山下駅へ下る道の途中にある信貴山バス停の裏手の山道がそれで、普通の道路がくねくね曲がりながら山を降りるのに対し、この遊歩道はほぼ直線で山を下っている。なんでまた、この道が真っ直ぐなのかというのには理由があって、この道はかつての近鉄・東信貴鋼索線、すなわちケーブルカーの線路跡を遊歩道に整備しなおしたものだからなのだ。ケーブルで引き上げられるケーブルカーは、原則としてカーブはないか、あってもごくわずか、故にその跡地を利用した道は必然的にまっすぐになる。
 そもそも、遊歩道のスタート地点に建っている信貴山バス停の待合室も、東信貴鋼索線の山頂の駅舎を再利用した建物で、建物の中には近鉄沿線案内図なんかも残っている。
 が、まあ、そんなものを見学している暇はないので、待合室の裏手の遊歩道入口からなんだか薄暗い山道に入る。

 この遊歩道、千本桜並木と呼ばれているらしいので、きっと桜が植えられているのだろうが、よくわからない。
 ケーブルカーの路盤らしく、ともかく、不気味なほど真っ直ぐに山を下っている。足元は元の路盤がそのまま残っていると思われる部分や、階段、坂道と変化するのだが、行く手にはいつまでも直線状に道が伸び続けている。
 「山の中の遊歩道」という響きから想像するより幅の広い道になっていて、確かにかつてはここをケーブルカーが行き来したんだろうと想像できる。恐らく、たまに人も歩いているのであろうか、それなりに手入れされているように見えるのだが、この時間、全く人の気配は感じられない。
 ケーブルに釣られたケーブルカーならまだしも、二足歩行の人類にはかなりバランスが取りづらい急坂を、なんとか踏ん張って駆け下りていく。転んでは元も子もないが、慎重に下山する時間的余裕は全くない。
 7分後、どうやら遊歩道の終わりらしき景色が目の前に現れた。遊歩道の最後の部分はなぜか上り坂になっている。ケーブルカーのルートなら上りになることは無いと思うので、かつての路盤は少し違うルートだったのか、橋でもかかっていたと思うが、今となってはよく分からない。
 階段を駆け上がると、目の前にアスファルトの道路が広がっていて、なんとか一般道に復帰することが出来た。振り返ると、遊歩道の入り口は看板が一つあるだけで殆ど目立たない道になっている。なんだか村の忌まわしい過去の歴史を封印するかの扱いである。ケーブルカーが廃止されたことを恨んでいるのであろうか?

 一般道に戻ってきたところで、全工程の3分の2が終了。この時点で、残り時間は10分を切っている。が、なんとか間に合いそうな目処は立ってきた。
 一般道に戻り、多少は勾配が緩くなったものの、やはり真っ直ぐ麓に降りる道が続いている。この道もまた、東信貴ケーブルの跡を道路に転用したものなのだそうだ。東信貴ケーブルの起点は、信貴山ダッシュのゴールと同じ信貴山下駅。つまり、この下り坂を下りきったところにゴールの信貴山下があるということになる。
 数分走ると、麓の町が見えるようになり、その手前にゴールの信貴山下駅の駅舎が見えるようになった。が、駅舎の大きさはまだ小さい。走れば間に合うが、歩いては間に合いそうにないという残り時間だ。
 最後の坂道をひたすら下って行くと、駅に近づくに連れ、駅に向かって歩く人の数が増えてきた。もしかしたら、おいらが乗ろうとしている電車に乗る人々かもしれない。

三郷・信貴山下駅

 リミット3分前になんとかゴール。結果的には、余裕をもってゴール出来たが、まあ、ヘトヘト、汗だくですわ。
 ペーパーシートで顔を拭きながら次の生駒行の電車を待つ。
 17時10分定刻通りにやってきた普通電車に乗り込む。高安山でケーブルカーを降りてから、僅か30分あまりで、再び近鉄電車に乗ることができた。


(左)生駒駅から生駒山を見上げる
(右)生駒ケーブルには、結構大きな踏切がある
生駒・生駒駅

 生駒線の起点・生駒駅に到着。中途半端に終点の一駅手前の信貴山下から乗車したので、生駒線の制覇は一旦保留。
 さっき西信貴ケーブルに乗ったばかりだが、今度は生駒ケーブルの征服に取り掛かる。
 生駒ケーブルもケーブルカー上部の運行が40分間隔で、全線制覇のネックとなる。だから、前回は生駒ダッシュで、生駒山を駆け下りたのである。
 だが、今回は違う。生駒ケーブルの上部路線のダイヤは終電に限り前の電車の20分後に出発するという形になっている。このため、終電直前のこの時間にケーブルカーに乗り込めば、行きも帰りもケーブルカーに乗って移動するだけとなる。ケーブルカーとはいえ、普通の盲腸線の往復と何ら変わりない行程なのだ。楽勝!
 ところで、生駒ケーブルカーの下部だが、上部のケーブルカーが5時台に終電を迎えるのに対して、朝6時台から23時台まで長時間運行している。これは生駒ケーブルが生駒山の中腹に住む人々のための生活の足としても運行されているからである。生活の足ということは、周辺に住宅があるわけで、路線の中ほどには自動車が通行できるほどの大きな踏切が設置されている。一度、通ってみたいものである。

生駒・鳥居前駅

 未だ信貴山ダッシュのダメージを引きずったまま、膝をガクガクさせながら、生駒駅から道を挟んで隣の鳥居前に移動する。
 とは言え、ケーブルカーのミケ号に乗っちまえばこっちのもの。勝手に山の中腹まで運んでくれる。
 宝山寺駅で、ケーブルカー・スイーツ号に乗り換える。生駒ケーブルの終点、生駒山上駅の目の前は生駒山上遊園地の入口があるのだが、とっくに17時に閉園してしまっているので、当然、乗客はおいらしかいない。
 貸し切りのケーブルカーで生駒山上駅に着いたところで、生駒鋼索線も終了。

(左上)遊園地は閉園済み
(右上)駅の片付け始めている
(右)生駒駅へ下っていく
生駒・生駒山上駅

 一度駅を出て、遊園地の入り口の方を覗いてみるが、閉園後1時間近くが経っているので閑散の極み。(いや、昼間賑わっていたのかどうかは定かではないが...)
 13分後に発車する次の電車が終電生駒ケーブル上部の終電。そんなわけで、駅員もまた駅を閉める準備をしている。駅の入口にその駅員が乗って帰るのであろ自動車が乗り付けられ、もはや開店休業状態。
 一度降りたケーブルカーにもう一度戻り電車に乗り込むと、遊園地のスタッフらしき人物数人と鉄道マニアらしき乗客が数人乗り込んできた。行きと比べれば、それなりの活況である。
 下山時もまた、やはり途中の宝山寺でケーブルカーを乗り継ぐ。行きはネコ型に飾られたミケ号だったが、帰りは犬型のブル号だ。固有名詞ではなく、猫種やら犬種の名前が付けられたところにある種の悲哀を感じなくはないが、そんな細かいことは気にせず、ニコニコしているブル号に乗り込んで、終点鳥居前駅へ向かう。

生駒・生駒駅

 ダッシュをすることなく、悠々と生駒鋼索線の征服を終えて、生駒駅に戻ってきた。
 早朝賢島を出発してから13時間が過ぎ、27本の近鉄電車を乗り継いできた。残りは、難波線、奈良線、けいはんな線、京都線、天理線、橿原線(大和西大寺-橿原神宮前)、生駒線(信貴山下-王寺)、田原本線、大阪線(大和八木-堅下と河内山本-大阪上本町)。結構あるようだが、残りのスケジュールはかなり余裕があり、乗り換えに失敗する可能性はかなり低い。
 失敗する可能性があるとすれば、「寝過ごし」しかない。ここいらでレッドブルを飲んで、気合を入れなおして先を進もう。
 残りは12本、ゴールまで6時間を切っている!

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